どうやらブリーチと家の相性が悪い
家が漏水した。初めての全頭ブリーチをかけた8月初旬のことだった。自分では明るい色の髪は夏を楽しんでいる人のそれで新鮮だったし、彼の反応も楽しみでうきうきと帰宅した。なにげなくポストを覗くと、チラシに混ざって黄色の目を引く紙が入っていたのだ。おやおやと思ってその時はまだ気軽に読んでみると、「漏水の可能性」の文字と、60,000円の請求額。頭がクラクラするほどの金額に、一瞬状況が飲み込めなかった。
指定された番号に電話をかけて、メーターを確認することになった。おめかしした頭で庭の草をかき分け、メーターを確認したらクルクルと風車のごとく回っている。そもそも、メーターが高速回転するのは漏水の印なのだそうだ。やや動転しながら元栓を締め、数十分前まで明るく華やかだった私は、焦り顔で手を土で汚したアラサーに成り果てていたのだった。
水道局の人の、住む人が増えたり水を流しっぱなしにしていたりしないかという質問を即座に否定し、それではいよいよ漏水しているだろうということになった。私も漏水だろうと思う。電話口の女性は漏水の量にあらららと少し慌てた様子で、私の不安は余計に大きくなった。
そもそも今の家で私が使うのは、2ヶ月で5,000円にもならない金額なのだ。それがいきなり12倍になるなんて、ちょっと考えられない。そういえば水の流れるサラサラとした音がどこかから聞こえる気がしてくる。注意深く部屋を眺めても、水がシミを作っているなんてこともなくて、家の中の漏水ではなさそうだった。工事屋さんに連絡するようにというのが、窓口の女性の最後の言葉だった。
お盆前の忙しい時期で、電話がそもそも繋がらない。繋がったと思ったら、人が出払っているので翌日以降になるという。翌日、朝の8時過ぎに調査のために来てくれた水道工事のおじさんは「こりゃあ、今日止めないとだめだねえ!」と仲間を呼んでくれて、直してくれた。私が訳あって住んでいるのは、築50年のいわくつき木造住宅なのだ。
すったもんだあって原因を聞くと、どうやら今では禁止されているビニールの水道管が我が家には使われているらしい。それまでも家の古さには悩まされてきたものの、実際に費用ががんがんかかってくる被害は初めてで、思わずため息が漏れたのだ。修理費用は80,000円で、請求費用は実費に戻しますとのこと。これも公共サービスだからだろうか、ありがたい限りである。
ブリーチ1回の金髪は、自分でも好きだと思ったし周りからも好評だった。私のもともとやりたかった金髪はブリーチを2回しないとできない明るいもので、1ヶ月半後に予定を入れた。それが9月の3連休中。彼とのデートの前に美容室にいくことにしていた。
その日の朝、用事のために家を出て戻るとき、メーター付近で水の流れる音を聞き、なんとなく嫌な予感がした。気乗りはしなかったがメーターを開けて覗くと、なんと高速回転しているじゃないか。ありえないが、あの経験上これは絶対に漏水である。急いで前にもらった工事屋さんに電話すると、お休みの日ということで代表が出た。
本当に申し訳ないが庭の一部が激しく水溜りになっているので、見ていただかざるを得ない。そしてもうひとつ申し訳ないのは、私は2度目のブリーチのために30分以内に美容室へ向かわないという状況だ。同居人に対応を任せて、私は家を出ることにした。
また、ブリーチの日である。そして今度は、漏水箇所がどこかもわからず、より大事になったらしいのだ。これを書いている今、まだ直っていない。なんだか、私の髪の脱色と水道管がつながっているような気すらしてくる。そんなことはあり得ないんだけど、家とブリーチの相性がなんだかすこぶる悪いので、これからも不安になる。漏水に関しては、また顛末を書こうと思う。
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