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ラブタームーラの魔法昆虫

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2021年5月の記事一覧

5.雨降りお化け

 ラブタームーラには、「雨降りお化け」が出るという噂があった。
 その名の通り、雨の日になるとヌウッと姿を見せ、フラフラと出歩くのだという。
「まあ、いわゆる都市伝説というやつでしょうね」元之はこともなげにそう言った。
「なんだ、その都市伝説ってのは」浩が聞く。
「ばかね、あんた都市伝説も知らないの?」軽蔑したように美奈子が鼻で笑う。「口裂け女とか人面犬とかいるじゃん。ああいうのを言うの」
「口裂

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4.タンポポ団の誕生

 博物館にある「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた部屋の中に、美奈子、浩、元之、そして館長がいた。
「いいか、みんな。そこら のものをむやみに触れちゃいかんぞ。どれも、なにがしか魔法がかかっている。わしにもわからんものが、たんとあってな。どんな騒動が起きるかもしれんのだ」館長が注意を促す。
 館長がゾウムシモドキをマユに戻す様を見ていた浩は、
「いったい、何がどうなっちまってるってんだよ」と困惑を

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3.魔法昆虫

「はてさて、いったいどの虫が逃げ出したんだろうか」倉又館長はあごに手を当てながら、部屋中をうろうろと歩き回る。
「マユを見てもわからないんですか?」美奈子が聞いてみた。
「これはしたり! そうだった、そうだった。マユには1つずつ、魔法文字が描かれておるんだった!」そう言うと、百虫樹の元へと駆け寄る。「ふむふむ、ほかの4つは調べなければわからないが、1つだけわかる文字がある。ペッカルト・トラリム・サ

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2.昆虫展

 ラブタームーラの博物館ではいま、昆虫展を開催していた。世界中の珍しい昆虫を集め、休日ともなれば大賑わいである。
「ねえ、美奈。わたし達も見に行ってみない?」薫が誘う。
「昆虫かぁ。あんま興味ないんだよね。それに混雑してるっていうじゃない」美奈子は人混みが苦手だった。
「そんなこと言わないでさあ。わたし、お兄ちゃんがいつも虫採りに連れてってくれるもんだから、けっこう好きなんだ。ねね、付き合うつもり

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1.魔法の授業

 鈴木美奈子は期待で胸を膨らませていた。
 この春、小学2年に進級し、待ちに待った魔法の授業が始まるからだ。
「魔法が使えるようになったら、まず飼っている金魚の色を赤から青に変えるんだ」運良く隣の席となった親友の大沢薫に、目をキラキラと輝かせながら言う。
「あのね、美奈。あんま、期待しないほうがいいと思うの。上級生を見てごらんなさないよ。みんな、言ってるわ。あーあ、今日も魔法の授業かぁって」
「な

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