秋のお散歩|東京都写真美術館と白いカフェ🍦星月さんと月星さんが言うことには
東京都写真美術館は〝TOP〟と呼ばれる。
何のトップなのかと思えば、
〝TOKYO PHOTOGRAPHIC ART〟
の中の頭文字なのだった。
なんだか高いところへ連れて行ってもらえそうな気分になってくるではないか。
TOPのある恵比寿の庭
午後の明るい日差しの中、駅から恵比寿ガーデンプレイスまで歩く。
人々はにこやかに、または颯爽と行き交い、煉瓦敷きの広場のステージでは何かのライブが準備されている。
すぐ写真美術館の展示室に向かいたいところではあるが、今回はもうひとつ、北海道から恵比寿へやって来た、とあるカフェを訪れるという大切な目的があった。
そのカフェをちらりと覗くと40分待ちだったので、受付をすませて文房具や食器などのショップを巡ることにする。
写真の上半分を隠せば、まるでヨーロッパの観光地のようだが、背後の高層マンションの存在感も負けてはいない。
こんなアンバランスさも、東京らしさなのかもしれないと思う。
見晴らしのよいベンチに座ってシャトー広場をのんびり眺めていると、カフェからもうすぐお席をご案内できますとのショートメールが届いた。
白からはじまるお散歩
いつも愛読している星月りずむさんのnoteの、こちらの記事が今回のお散歩のはじまりだった。
「白いりんごの花」の記事を読んで、白い花が好きですとお伝えしたことがある。
りずむさんのお庭には、季節を追って咲いても咲いても白い花が現れる樹々や草花が植えられているという。
自分も花だけでなく、家の家具や家電も根気よく白で揃えるほどの白好きである。
そんな白に囲まれたい人にぴったりなカフェ「よつ葉milk place」が記事の中で紹介されていたのだった。
そして、ついに。
このメニューは、札幌店で大人気のパフェをミルクプレイス風にアレンジしているそうだ。
よつ葉ソフトクリーム、生クリーム、ヨーグルト、クリームチーズ、発酵バターアイスなど、よつ葉の乳製品のおいしさが全部つまっている。
最初のひとくちは濃厚なソフトクリーム。
ふたくちめは同じ場所をすくったのに甘くない?
それはトロリとしたプレーンヨーグルトなのだった。
甘さは抑えめでほのかな酸味のある部分もあり、食材の変化もある。
ミルキーなおいしさをずっと爽やかに味わえる、白さがまぶしいパフェだった。
余韻を楽しみつつ、そろそろ展示室へ向かおう。
19世紀の映像装置と100かいだてのいえ
「100かいだてのいえ」という絵本のシリーズがある。
縦長のページを縦にめくっていき、次の階、次の階へと進んでいく、少し変わっていておもしろい人気の絵本だ。
そもそも東京都写真美術館を訪れようと思いたったのは、愛読している月星真夜さんのnoteでこちらの記事を読んだからだった。
記事の中ではいつも、元気でキュートなウサギさんと穏やかで思いやり(特にウサギさんへの)溢れるカメくんのふたりが、いろいろな美術展を訪れたり、はたまた海を越えたり、ハートの石を見つけたりと、アートや冒険の楽しさを伝えてくれる。
てっきり絵本の原画展だと思い、ぜひ観に行きたい、確か恵比寿には行きたかった白いカフェがあるはず!と頭の中でお散歩コースがすぐにできあがった。
ところが記事を読むと、ただの原画展ではなかった。
これまでも高い専門性を活かした展示を企画し、多様な写真や映像表現を紹介してきたTOPで開催される理由のある展覧会で、展示は1820年代の古びた映像装置の数々からはじまる。
岩井俊雄の名前で表現されるメディアアートの原点は、例えば穴のあいた円筒を回転させて覗くと並んだ絵が動いて見える!のような、19世紀の科学者や芸術家たちが探求し続けたさまざまな映像装置にあったのだ。
暗い展示室では、時間になると作品「時間層」の電源が入れられる。
ほかにも指で触れることと連動して音や映像で遊ぶような、多くの作品を楽しんだ。
詳しくはウサギさんとカメくんの記事や写真をご覧いただきたい。
2回目のおやつの時間
はて?
この薄茶のざら紙に印刷されたメニューには見覚えがある。
長いこと行きたいと思い続けて、ようやく先日訪れた吉祥寺の「コマグラカフェ」とほとんど同じものだった。
姉妹店があるのは知っていたが、ここで出会うとは。
(吉祥寺のコマグラカフェの記事はこちら)
そんなわけで、本日2回目のおやつの時間を、ここ「フロムトップ」にて過ごすことにした。
ゆったりと配置された大小のテーブルに、クラシカルな装飾の椅子のデザインは不揃いで、半分ほど席がうまっているのにとても静かな店内だった。
メニューにスコーンのような焼き菓子、と書き添えてあったビスケットは、小麦粉ともちきびの粗めの生地を噛みしめるとあんことは別の素材の甘みが感じられてくる。
宝石を砕いたように散っているのは洗双糖だ。
そこへバターがやって来るのだから完璧なおやつとしか言いようがない。
「食べると少しだけかわいくなれる」という噂の小さな花の色は赤や山吹色で、秋らしくてうれしくなる。
コーヒーのカップはお客さんに合わせて選ぶのだとどこかで読んだことがある。
椿の花のようだが、自分の好きな山茶花ということにしよう。
ずっと若いときに聴いたカーペンターズのメロディを思い出す。
TOP OF THE WORLDをなぜこんなに美しく歌い上げるのか、その頃はわからなかった。
歌詞ではその理由をあなたがそばにいるからと歌っている。
人にはそれぞれ天に近いようなしあわせを感じるために必要なものがある。
たくさんのお金かもしれないし、自由になる時間かもしれないし、大切なひとがいることかもしれない。
すっかり大人になって過ごした、体験したこともないアートと、2回のおいしいおやつで味わったしあわせな時間は、ほとんどTOP of the Worldだったと言えるだろう。
そんな秋の1日だった。