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秋のお散歩|東京都写真美術館と白いカフェ🍦星月さんと月星さんが言うことには


東京都写真美術館は〝TOP〟と呼ばれる。
何のトップなのかと思えば、
〝TOKYO  PHOTOGRAPHIC ART〟
の中の頭文字なのだった。
なんだか高いところへ連れて行ってもらえそうな気分になってくるではないか。




TOPのある恵比寿の庭


午後の明るい日差しの中、駅から恵比寿ガーデンプレイスまで歩く。
人々はにこやかに、または颯爽と行き交い、煉瓦敷きの広場のステージでは何かのライブが準備されている。

恵比寿ガーデンプレイスの敷地内にある、
東京都写真美術館
TOP MUSEUMの建てもの。


総合開館20周年のリニューアル・オープンにあわせて、
2016年に制作された新しいシンボルマーク。



シンボルマークは、写真と映像を生み出す「光」によって、「TOP」の文字をうつし出したデザインで構成しました。
「TOP」は、ドアをひらくようにも見え、感動に出会う期待感、奥行きや空間性を表しています。新しい表現の扉をひらき、お客様をお迎えする決意をイメージしています。

TOP MUSEUM公式ホームページより


すぐ写真美術館の展示室に向かいたいところではあるが、今回はもうひとつ、北海道から恵比寿へやって来た、とあるカフェを訪れるという大切な目的があった。

そのカフェをちらりと覗くと40分待ちだったので、受付をすませて文房具や食器などのショップを巡ることにする。

お城のような
〝シャトーレストラン ジョエル・ロブション〟


写真の上半分を隠せば、まるでヨーロッパの観光地のようだが、背後の高層マンションの存在感も負けてはいない。
こんなアンバランスさも、東京らしさなのかもしれないと思う。

見晴らしのよいベンチに座ってシャトー広場をのんびり眺めていると、カフェからもうすぐお席をご案内できますとのショートメールが届いた。




白からはじまるお散歩


いつも愛読している星月りずむさんのnoteの、こちらの記事が今回のお散歩のはじまりだった。


白いりんごの花」の記事を読んで、白い花が好きですとお伝えしたことがある。
りずむさんのお庭には、季節を追って咲いても咲いても白い花が現れる樹々や草花が植えられているという。
自分も花だけでなく、家の家具や家電も根気よく白で揃えるほどの白好きである。

そんな白に囲まれたい人にぴったりなカフェ「よつ葉milk place」が記事の中で紹介されていたのだった。


やわらかな照明で明るい店内。
ディスプレイの白樺の根もとには色づいた葉っぱが。


白い壁、白い天井。
ホワイトウッドのテーブルに白い椅子。
白い天井からは雪だるまの形をした
小さなランプがいくつもぶら下がっている。
それは上半分が透明で下半分が白く、
やさしい明かりで店内を照らしていた。
(以下3点の写真は公式ホームページより)


斜め向かいに座ったお兄さんのオーダー

よつ葉ふんわりけずりバターパンケーキ
てん菜糖蜜添え


奥のテーブルのご婦人方のオーダー

苺と木苺のミルフィーユパフェ


そして、ついに。

本日のオーダー

よつ葉の白いパフェ
ミルクプレイスver.


心に決めていた通り、真っ白なパフェを注文した。
どこをスプーンですくっても、本当にどこまでも白い。
純白の白、乳白色、少し黄色味のある白と、
眺めているうちに白だけの7色の虹が見えてくるようだ。


メニューより、白いパフェの構成図。

このメニューは、札幌店で大人気のパフェをミルクプレイス風にアレンジしているそうだ。
よつ葉ソフトクリーム、生クリーム、ヨーグルト、クリームチーズ、発酵バターアイスなど、よつ葉の乳製品のおいしさが全部つまっている。

最初のひとくちは濃厚なソフトクリーム。
ふたくちめは同じ場所をすくったのに甘くない?
それはトロリとしたプレーンヨーグルトなのだった。
甘さは抑えめでほのかな酸味のある部分もあり、食材の変化もある。
ミルキーなおいしさをずっと爽やかに味わえる、白さがまぶしいパフェだった。

余韻を楽しみつつ、そろそろ展示室へ向かおう。




19世紀の映像装置と100かいだてのいえ


「100かいだてのいえ」という絵本のシリーズがある。
縦長のページを縦にめくっていき、次の階、次の階へと進んでいく、少し変わっていておもしろい人気の絵本だ。

作者のいわいとしおさんは、映像作家の
岩井俊雄さんでもある。お子さんに数を
わかりやすく伝えようと絵本を作ったのが
始まりだったという。
(100かいだてのいえ公式ホームページより)


そもそも東京都写真美術館を訪れようと思いたったのは、愛読している月星真夜さんのnoteでこちらの記事を読んだからだった。


記事の中ではいつも、元気でキュートなウサギさんと穏やかで思いやり(特にウサギさんへの)溢れるカメくんのふたりが、いろいろな美術展を訪れたり、はたまた海を越えたり、ハートの石を見つけたりと、アートや冒険の楽しさを伝えてくれる。

地下展示室入り口にて
タイトルは
「光と動きの100かいだてのいえ」


てっきり絵本の原画展だと思い、ぜひ観に行きたい、確か恵比寿には行きたかった白いカフェがあるはず!と頭の中でお散歩コースがすぐにできあがった。

ところが記事を読むと、ただの原画展ではなかった。
これまでも高い専門性を活かした展示を企画し、多様な写真や映像表現を紹介してきたTOPで開催される理由のある展覧会で、展示は1820年代の古びた映像装置の数々からはじまる。

「映像の夜明け100かいだてのいえ」いわいとしお


岩井俊雄の名前で表現されるメディアアートの原点は、例えば穴のあいた円筒を回転させて覗くと並んだ絵が動いて見える!のような、19世紀の科学者や芸術家たちが探求し続けたさまざまな映像装置にあったのだ。


100かいだてのいえが鏡に映って続いていく。
どこまでもどこまでもどこまでも。


暗い展示室では、時間になると作品「時間層」の電源が入れられる。

蝶のような、花のような、紙吹雪のような
たくさんのひらひらが光と色の中で
ちらちらと動き舞いながら陣を描いて回転する。

色も舞う動きも不規則に変幻する

ついには見惚れて言葉を失う


作品の仕様書なるものも展示されていた。
こんなアート体験をありがとう!と思いつつ
いったいどんな頭の中をしているのだろう⁈
という大きな驚きと謎を抱いた。


ほかにも指で触れることと連動して音や映像で遊ぶような、多くの作品を楽しんだ。
詳しくはウサギさんとカメくんの記事や写真をご覧いただきたい。




2回目のおやつの時間


そろそろ日が暮れる時間
テラスの電飾が誰の目にも見えはじめる頃


ミュージアムカフェには素敵なお店が多い。
ここTOPには「フロムトップ」がある。


はて?
この薄茶のざら紙に印刷されたメニューには見覚えがある。
長いこと行きたいと思い続けて、ようやく先日訪れた吉祥寺の「コマグラカフェ」とほとんど同じものだった。
姉妹店があるのは知っていたが、ここで出会うとは。

(吉祥寺のコマグラカフェの記事はこちら)


そんなわけで、本日2回目のおやつの時間を、ここ「フロムトップ」にて過ごすことにした。
ゆったりと配置された大小のテーブルに、クラシカルな装飾の椅子のデザインは不揃いで、半分ほど席がうまっているのにとても静かな店内だった。


自家製青レモンのシロップ漬けはドリンクメニューに


本日のオーダー

もちきび入りビスケット
あんことバター


メニューにスコーンのような焼き菓子、と書き添えてあったビスケットは、小麦粉ともちきびの粗めの生地を噛みしめるとあんことは別の素材の甘みが感じられてくる。
宝石を砕いたように散っているのは洗双糖だ。
そこへバターがやって来るのだから完璧なおやつとしか言いようがない。
「食べると少しだけかわいくなれる」という噂の小さな花の色は赤や山吹色で、秋らしくてうれしくなる。


KUSA.喫茶のコーヒー美術館ブレンド
東京都写真美術館をイメージした深煎り


コーヒーのカップはお客さんに合わせて選ぶのだとどこかで読んだことがある。
椿の花のようだが、自分の好きな山茶花ということにしよう。


過去の展示の図録が飾られている。
棚のいちばん上に置いてあるのは
Carpentersのレコード
〝TOP OF THE WORLD〟


並んで帰り道を見送ってくれる電飾たち


いい1日だったねとお月さま



ずっと若いときに聴いたカーペンターズのメロディを思い出す。
TOP OF THE WORLDせかいのてっぺんをなぜこんなに美しく歌い上げるのか、その頃はわからなかった。
歌詞ではその理由をあなたがそばにいるからと歌っている。

人にはそれぞれ天に近いようなしあわせを感じるために必要なものがある。
たくさんのお金かもしれないし、自由になる時間かもしれないし、大切なひとがいることかもしれない。

すっかり大人になって過ごした、体験したこともないアートと、2回のおいしいおやつで味わったしあわせな時間は、ほとんどTOP of the Worldだったと言えるだろう。
そんな秋の1日だった。







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mu
ここまでお読みいただきありがとうございます。 思いのカケラが届きますように。