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階段をのぼって見つけた妖精の国のお菓子|お散歩カフェ



晴れた秋のはじまりの日には、澄んだ空気を感じながら、いつもよりたくさん歩く。

空の高い方の青色が少しずつ濃くなってきて、そうだ、遅めのおやつの時間にしようと思いたつ。
それなら今日こそ、あのカフェに行こう。



日暮れ前

街灯の明かりが

目立ちはじめる




いくつかの角を曲がり

小道を進んで

ずっと来たかったお店に

ようやくたどり着く



白ペンキの木の塀

ちょっぴり錆びた画鋲




暗がりの

階段を

のぼっていく




郵便受けと案内黒板

踊り場の玄関を過ぎて

また のぼっていく





お店の扉は

こちらの

3階に




ここには

まだ空から

光が届いている


待合いベンチのタイルに

目を惹かれる

いちばん上のが

好き





見上げれば

ほんのり頬を

染めたような雲

もし

手のひらに

乗せたなら

甘酸っぱい

砂糖菓子になると思う





「お待たせしました」


呼ばれて中に入ると

アンティークのような

黒いsingerのミシン

ガラス戸の飾り棚には

大切な手紙


「どうぞこちらへ」

窓に近い席につく




届けられたのは

妖精の国のお菓子




砂糖の結晶たちは

ティタニアの冠の宝石

苦味の強いカラメルは

オベロンのガウンのひだ


ちいさな花々を

ひとつ残らず食べたわたしは

ほんの少しだけ

可愛くなった



そして

窓の向こう

暮れてゆく夕空を

ただ 見つめている時間




どのくらいたったのか

外に出てみると

夕焼けが燃えていた




過ぎた季節の果実の色に

染められたタイル


違う世界への入り口が

開いてしまいそう




帰り道が

わからなくなる前に

うちへ帰ろう










本日のオーダー

カフェオレ
いちじくと三河みりんのガトーショコラ

吉祥寺 コマグラカフェにて



数えてみたらもう20年ほど通っている絵本専門店がある。そのお店は2年前の秋に表参道から吉祥寺にやって来た。
お目当ての本が見つからなくても、下の階にあるオーガニックビュッフェレストランで食事をすれば、心もお腹もいっぱいになる。

この日は気になっていたブックマンションという変わった本屋さんにも行けたので、いくつものちいさなしあわせに満たされた。

コマグラカフェでは待っている時間もうっとりしていたし、しっかり濃厚できめの細かいガトーショコラの中のいちじくは、旬だからと主張し過ぎることなく、ほろ苦甘いチョコレートと溶け合うように馴染んでいた。

帰りの電車では座った自分がいつから眠ったのかおぼえていない。

とてもよい秋の1日だった。





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mu
ここまでお読みいただきありがとうございます。 思いのカケラが届きますように。