「フォンターネ 山小屋の生活」
P.コニェッティ 「フォンターネ 山小屋の生活」 (新潮クレスト・ブックス)
この手のタイトルには弱いですね。この本のせいです。
ありゃ、スゴい値段になってる・・・過去記事にも書きました。
この手のテーマでまず思い出されるのがH.ソローの「ウォールデン 森の生活」ですよね。多少文章がクドいと感じますが自分も好きな本です。
この本の裏表紙にも”21世紀版森の生活”とあり、ソローのイメージを借りようとしているのかな?なんて思ったりもしますが実際の内容は大分違ったものになります。
ソローのように様々な試みから、考察していく・・・感じではないですね。
山での暮らしをバックボーンに持つ筆者が、大都市(ミラノ)での暮らし・仕事に行き詰まり山に戻ってみる試み・・・といった感じでしょうか。
イタリアと山岳、って個人的につながり辛かったのですが北部は立派に山岳地帯ですもんね。で、北部髄一の大都市がミラノ。ミラノはなにかこう華やかなイメージがありますが気候も含めナカナカ一筋縄ではいかない感じもあります。(個人的に湿気が苦手なもので・・・。)
その街で筆者は、書けなくなってしまった。書き手が書けなくなってしまうのですからこれは余程のことです。
自分も少年期に自然豊かな町で暮らした(東京ですけど)というバックボーンがあり、実際大人になってからさらに自然豊かな場所に移った・・・という人間ですので、ここで筆者が”山に還ってみる”という選択をしたのは決して突飛なことでなく自然なことのように感じます。
還った山で、筆者は特別なことなく、元の山の住民や自然と無理なく付き合いながら、しかし特別な約一年を過ごし街に戻っていく。そしてこの時の体験をベースに「帰れない山」という作品を書き上げています。
自分はまだ読んでいないのですが、美しい、いい作品のようですね。
ここで気づいたのですが、”傷ついたら、自然に還る”という物語はヘミングウェイはじめアメリカには多いけれどヨーロッパの作家さんにはあまり見ない気がします。
自然にその対比をしてしまうせいか、自分の読後の感想は「とにかく美しい」でした。
ソローがどう、ヘミングウェイがどう、というのではなくどこか湿った感じの淡々と日々を描くその表現がとにかく美しい。
ヘミングウェイやジャック・ロンドン、先のプローンネクのように力強い表現とはまた別の優しい感じ。
でも書かれている美しさは、自然の持つ魅力は変わらない。
趣味的に自然に関する描写は数多く読んできているのですが、その中でも印象的な一冊になりました。
そうそう。
”傷ついたら・行き詰ったら自然に還る”のは最近の”騒ぎ”の中で更に見直された方法でもありますね。
実際今自分、大都市で暮らすの辛いだろうな・・・とか思っちゃったりもしますね。ちょっと想像がつかない。
特に何が言いたい、というわけではなく・・・あわせてなんとなく、書き添えておこうと思います。
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