心に残るアフリカの星空
私はもともと不注意な性格で、旅中もトラブルが多いのですが、思い返してみるといつも現地の人たちの優しさに守られていました。
ケニアからウガンダへ陸路で国境を越える時のことです。国境でいったんバスを降り、徒歩で出国・入国スタンプを押してもらいました。国境を越えてから再び同じバスに乗り、首都を目指すはずだったのですが、私は降りる際にバスの特徴を何ひとつ覚えていませんでした。そして、荷物は貴重品以外バスに置いたままでした。曖昧な記憶を頼りに何十台もの中からバスを探しましたが、結局見つかりませんでした。
当時、wi-fiどころかスマートフォンもない時代。
「途方に暮れるとはこのことか」と佇んでいると、1人の男性が声をかけてくれました。事情を話すと、彼は周りにいた人たちに協力を仰いでくれました。
あれじゃないかと指をさす人、道行く人に声をかける人、小さな携帯電話で電話をかける人。たくさんの人たちが私のために色々な手段でバスを探してくれました。
数十分後、「運転手と連絡がとれた」と教えてもらいました。バスは私が乗車していないことに気づかず、すでに出発していたそうです。
すると、それを聞いた女性が「私が子どもを抱っこするから、その席にあなたが座りなさい」と提案してくれました。運転手さんもその提案を快く了承してくれました。
不安なままバスに揺られること4時間。小さな休憩所でケニアから乗ってきたバスに合流できました。
席を譲ってくれた女性や運転手さん、「心配ない、問題ない」と何度も声をかけてくれた乗客の人たち。彼らに「ありがとう」と言い、バスを降りました。安堵の気持ちとともに別れの寂しさが押し寄せてきて、私は涙をこらえることができませんでした。
背後から「空をみて!」という声が聞こえました。
時刻は午前3時。
空には降ってきそうなほどの無数の星が力強く輝いていました。
あの日よりも心が揺さぶられる星空を、私はいまだにみたことがありません。
ガイドブックをなぞるだけの旅なら誰にでもできます。
「なにをみるか」より「誰とみるか」。
現地で出会った人たちとみる忘れられない景色。
これが私の旅の原体験です。
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