見出し画像

第6章<持続する>組織の考え方に挑む

1.常に課題を探し、それを備えること

われわれはいつ、主要な職務に就く個人の準備が完全に整ったと言えるだろう?あるいはいつ、ビジネスユニットのリーダーが新たな取り組みに方向転換する準備が完全に整ったと言えるだろう?そんなことはいつまで経っても言えない。


どんな人間であれ、完全に準備が整うことなどないだろう。しかし、準備を整えることが不可能だと言いたいわけではない。ただ、考え方を変える必要がある。即戦力がある状態というのは、個人が到達する永続的な目的地でもなければ、組織が達成する永続的な状態でもない。われわれが唯一予測できるのは、世界はこれからもリーダーに新たな課題を突きつけ続けること――。

そして、それに対してできるのは、常に、その待ち受けている課題への準備を整え続けることだけだ。終点がないといわれてもすぐには納得できないかもしれないが、もし、経営陣がそれを受け入れなかったら、取り組みはすぐにエネルギーを失うだろう。

即戦力とは終わりのない準備から生まれるものだ。そのことを理解しないと、カリキュラムありきの考え方が広がってしまい、「早く終点にたどり着きたい」という期待ばかりが膨らんでしまうだろう。きめ細やかなタレントレビューが作られ、実施されるかもしれないが、その後の能力開発行動にはつながっていかないだろう。

リーダーたちは学習コースに参加しても、その後、学んだことを職場に適用しないだろう。アセスメントを受けても、能力開発は進まないだろう。エネルギーは一気に高まるが、突然消えるだろう。そして勢いは止まり、新しい取り組みはどれも、苦労して一からまた始めなければならない。

即戦力という考え方は、常に前を見て、環境を探りながら次の課題を予測し、徹底して取り組み、それに備えることを意味する。人材開発の加速化によって準備の整ったリーダーを継続的に少ない労力で増やしていくには、連鎖反応を起こせばよい。

人材開発の加速化の必須要件をガイドにすると、一連の取り組みが主要なビジネス目標により明確に結びつき、そうしたビジネスへのインパクトが蓄積されれば、各プログラムを次のステップに導くためのエネルギーが生まれるだろう。

即戦力という考え方は、常に前を見て、環境を探りながら次の課題を予測し、徹底的にそれに備えることを意味する。

2.オーナーシップを持つ

あなたの組織の中にいる、リーダーとしてポテンシャルがある人材を思い浮かべてみよう。優秀なパフォーマンスで将来性があるが、まだ今より重要なリーダー職務に就く準備はできていない。次に、簡単な問いかけを自分にしてみよう。その人材を、準備の出来ていない状態からできている状態に変える責任を持つのは、一体誰か?

今度は、同じ質問をビジネス全体に広げてみよう。人材開発の加速化の仕事は相応に労力がかかり、そのアカウンタビリティは経営陣、学習者、上司、メンター、その他の人たちで共有されるべきであることがすぐに理解できるはずだ。だがこれだけの人が関わっていると、結果として責任の分散が危険なレベルにまで達してしまい、多くの人材開発の加速化の努力が無になる。

早急に埋めなければならないリーダーシップのギャップがある場合、誰が何に対して責任を取るかは暖昧にしておけないはずだ。オーナーシップとアカウンタビリティがどこにあるのかは明確にしなければならない。そして、もしあなたがCEO、ビジネスリーダー、最高経営陣のいずれかなら、あなたから始めることだ。

あなたや経営陣が人材開発の加速化に当事者として関わることに同意したとき、リーダーを準備のできていない状態からできている状態に変えることや、それをより速く実現することに対して、アカウンタビリティを持つことになる。これは成長(学習だけではなく)へのコミットメントであり、前にも述べたように測定や報酬はその成長の度合いを反映したものでなければならない。

リーダーシップの大きなギャップを埋めるには、思い切った成長目標を、質だけではなく量的にも掲げなければならない。例えば、ヨーロッパ地域で今後2年のうちに18の部長のポジションが空くとしたら、即戦力のある18人の候補者を用意する責任は誰が負うのか?ハイポテンシャルが25人いるとしたら、彼らの準備度が向上していることを、経営幹部はどのように示すのか?成長していると主張するだけでは十分ではない。実際に証拠を見せなければならないのだ。

オーナーとして成長に関わると、経営幹部はタレントマネジメント・システムの力学に変化を与えるだけでなく、ビジネスの成長の判定・測定の具体的な要素としてリーダーシップを付け加え、より大きな枠組みでビジネスを語るようになる。財務的な成長に加えて人材の成長のスコアもつけるようになれば、経営陣はビジネスの成功を競うように、人材の成長も競い合うようになるだろう。

このオーナーシップによって、より挑戦的でリスク指向の能力開発が進められ、それが強いエネルギーを生み出す。リーダーシップに関して大きな成長目標を掲げる経営幹部は、リーダーをキャリアの早い段階で本人の能力以上の重要な職務に就けなければならない。そのため多くの経営幹部は、実際にリーダーに重要な職務に就かせる前に、周囲を見回して、主要なビジネス状況やビジネス課題を経験できる機会を直観的に探すだろう。

これは人事の専門家の力を借りれば確実かつ効果的に実行できる。そしてこうして得た成功体験によって、その後、誰を学習の加速化プログラムに参加させるべきか合理的な判断ができるようになり、学習内容を確実に職場に適用するにはどうしたらよいか、より積極的に考えられるようになる。

リーダーを準備のできていない状態からできている状態に変え、それを測定して報酬を与えることに対してオーナーシップを持つと、その結果から導かれる行動によって、経営幹部は個別具体的なプログラムや取り組みの先まで見通し、それから生まれる成果にも目を向けるようになり、成長ということに絶えず注力し続けるだろう。

3.組織の人材を信じていることを証明する

人材開発の加速化には実験が必要だ。そして実験には、失敗がつきものだし、必要不可欠でもある。世界でも特に革新的で活気のある組織は、失敗を罰したいという衝動を抑え、失敗をバネにすることを習慣化している。小さな失敗を、頻繁に、素早く経験させ、有用になるようにするのだ。ここまでの章で、そうする方法を述べてきたが、ここでもうひとつ詳しく述べる。

失敗を活用するためには、欠かせない条件がある。人を信じること、もっと具体的に言えば、努力と失敗を通して成長していく力を信じることだ。これは、多くの組織や個人にとって、簡単なことではない。競争や監視、緊急性に立ち向かいながら結果を出すことへのプレッシャーは、焦りの原因となる。急速に台頭してきたリーダーが主要な職務で失敗して目立たない職務に追いやられ、次の成長株の人材に注目した経営幹部からはすっかり信頼を失ってしまったというような例は、枚挙に暇がない。

こういった反応はエネルギーを殺してしまう。リーダーを 1人見限るごとに、人材開発の加速化システムからエネルギーを失わせることになる。だが、期待が裏切られて失望したとしても、それを学習として受け止めその学びを、次にリーダーが新たに別の課題に取り組むときの支援に向ければ、エネルギーは放出される。そして、そのような反応を繰り返していくうちに、人材開発の加速化を進める勢いが生まれ、不屈の精神、自信、パフォーマンスは大きく向上する。

失敗に直面するのは学習者だけではない。学習者を支援し、導く上司、メンター、経営幹部も、同様に失敗する(これは、人材開発の加速化システムが機能している場合)。リーダーシップのギャップを至急埋めようとするとき、あなたは大きなリスクを冒して、優秀なパフォーマンスを見せる人材のコンピテンシーとスタミナを試すだろう。経営幹部も学習者の上司も、自分が変化に影響を与えていることを示そうと必死になるだろう。

組織が人材開発の加速化の熟練に苦労し、どういう態度を取るべきか考える際は、このように自問するとよい。部下が大きな機会を与えられて、思わぬ行動を取ってしまったときの心の準備が、私にはできているだろうか?リーダーが重要な職務で失敗を犯した直後に、彼(彼女)を信頼していることを示す準備が私にはできているだろうか?経営幹部のひとりが、人材の育成にあまり良い結果を出せなかったら、私はどんな反応をするだろうか?

そもそも、わたしは部下がより強力で優秀なリーダーに成長できると信じているのだろうか?ここまで本書を読み進めてきたあなたなら、信じているだろう。人材開発の加速化を組織で機能させ、存続させるためには、それを証明しなければならない。

4.自分が人に期待する成長を、自分も遂げる

われわれの顧客やこれまで出会ってきた多くの優れたリーダーは、われわれの先生である。人が最もよく成長するのは、誰かと一緒に成長するときであると教えてくれた。この本で勧めている手法、モデル、取り組み、練習はすべて、あなたとその同僚が一緒に成長するのを支援することを目的としている。

最後に、ひとつメッセージを伝えよう。あなたが人と向かい合って座り、目を見つめて、どのように成長するかを話し始めた瞬間に、人材開発の加速化は始まる。向かい合っている相手は最高経営幹部のひとりかもしれないし、ハイポテンシャル・プールの中の期待の星かもしれない。そして取り組みを正しく実践すれば、どんなに優れた会議もツールもプロセスも成功事例も影が薄くなる。正しく実践するとは、組織の差し迫った課題に立ち向かう中で、本物の信頼関係を作り、学習体験や新しい手法を共有することだ。

人材開発の加速化の6つの必須要件を実施すれば、もう既に取り掛かっている仕事を基盤にした上で、組織に最も重要な恩恵をもたらす分野であなたは卓越する。これができれば、あなたは人材開発の加速化の優秀なリーダーになることができる。成長をただ実現させるだけではなく、あなたが思っていた以上に、速く、一貫性を持って、完璧に、実現させることができるだろう。

あなたが覚悟してやるべきことはただひとつ。成長することだ

5.おすすめ人材アセスメントソリューション

6.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

7.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

いいなと思ったら応援しよう!