第3章<特定する>開発を加速化する人材を効果的かつ正確に決める
このセクションでは、「特定する」という必須要件において、いかに卓越した組織になるかを示す。次のような方法で実践することにより、エネルギーが生まれる。
1.適切な人材に関する効果的な話し合いをする~タレントレビューにおける技と科学を極める
人材開発の加速化戦略とサクセス・プロフィールは、建築家の設計図のようなものだ。作るものが明確ならば、タレントレビューは現場における作業員への説明と変わらない。フットボールの試合前の円陣、あるいはロケットの打ち上げ準備に例えることもできるだろう。経営陣が集まって、主要な戦略を達成するための組織の能力を判断したり、最も重要なリーダーシップのギャップを見直したり、そのギャップを埋めるために投資すべき人材について話し合ったりする。ときには人事担当者と経営幹部が人材に求められるビジネスの必須要件を見直し、人材関連の主要な意思決定において合意し、学習者の能力開発を加速する分野を決める際、当初の計画と優先順位がぶつかり合うこともあるかもしれない。しかし、タレントレビューの話し合いは、成長の加速化のためのあらゆる取り組みに影響を与えるので、経営幹部は正しく慎重に考慮しなければならない。
だが話し合いの内容が複雑なあまり、人材開発の加速化という目的から外れてしまうタレントレビューも少なくない。
「新しいことは何もなかった」――これはある世界的な化学会社のCEOが、年に一度タレントレビューを総括した言葉だ。1カ月もの間、世界中に散らばるリーダーのプレゼンテーションを聞いたが、人材管理に関する新しい洞察はわずかしか得られなかったという。CEOは、緊急を要するリーダーシップのギャップ充足に関して、現実的な案が出てこなかったことに非常に失望した。
これはまさに人事部門が避けたかった反応だった。人事部門は人材の概要と計画を提案する際に、経営幹部が使えるようビジネスに関連した共通のプロトコルを作ることに多大な努力を傾けた。だがその取り組みはうまくいかなかった。プロセスの規律は保たれたにもかかわらず、交わされた会話の内容が一般的すぎたのだ。ビジネス上の課題を洗い出したはよいが、その解決のために、どのようにリーダーを育成するかについては曖昧な話し合いしかされなかった。個々人に関する話し合いは憶測に満ちていた。リーダーシップのスキルや育成の必要性に関する有用なデータは提示されなかった。結局、人材開発の進捗状況を確認する方法もない、お役所仕事のようなタレントレビューにしかならず、個人の準備度にも組織の準備度にも何ひとつ変化をもたらさなかった。
タレントレビューは過去と現在を総括するだけでは十分とは言えない。将来のリーダーを準備する行動を引き起こさなければならない。人材開発の加速化を推進するのは、単なるうわべだけの会話にとどまらず、体系立てた構造やデータ、規律を伴うタレントレビューである。そのようなタレントレビューでは、時間と努力を慎重に配分して、組織レベルの人材の傾向に関する話し合いと、客観的なデータに基づいた個人に関する話し合いをバランスよく両立させる。最も重量なギャップについて共通理解を得た上で、誰の開発をどのように加速化させるかについての話し合いに進むのだ。
あなたの組織にとって理想的な解決法は、あらかじめパッケージ製品のように準備されているわけではない。より速い成長をもたらすリスクテイクを促進するために、人材開発の加速化の指針を組織独自のニーズに統合させるタレントレビュー・プロセスを作らなければならない。うまく両者のバランスが取れれば、レビューの対象者により大きな投資をすることができ、モチベーションと能力のあるリーダーを数多く育成できるだろう。
2.タレントレビューの役目
タレントレビューの目的は、組織によって異なる。だが、経営陣の間で目的の整合性がとれていないと、混乱が生じて、プロセスの目的と有用性に疑問を持たざるを得なくなる。
リーダーシップの準備度に直接的な影響を及ぼすために、タレントレビューでは2つの分析を連係させる必要がある。1つは、事業レベルまたはグループレベルでのリーダーの需要と供給を調べる組織レビューと、もう1つは、個人レベルのポテンシャルや準備度、能力開発に照準を合わせた人材開発加速化のレビューだ。なかでも組織レビューには主に2つの目的がある。
🔶組織、事業、グループレベルのリーダーシップ能力と準備度を評価する。これには個人レベルとビジネスユニットあるいはグループレベル両方での組織内の人材管理の総括が含まれる。組織図や、より幅広い職務に向けた個人の準備度を視覚的にまとめたものが使われることもある。組織内の人材を総括する人員計画と一部で重なる場合もあるだろう。
🔶重要なポジションに対する能力と準備度を評価する。
これには主に、一部のグループ(階層、部署など)や戦略の実施に必要不可欠だと考えられる重要なポジションに関する分析が含まれる。また、重要なポジションの特定(それを定義する基準の設定も含む)、あるいは空いている職務や後任候補に関連する配属や昇進の決定が含まれる場合もある。
上記の2つの目的はタレントレビューの基本だが、ここで止まってしまう(たいていは、ここまでに時間をかけすぎて)組織が多い。人材開発加速化のレビューは、組織レビューの上に成り立っており、下記を目的としている。
🔶最も急成長しそうな個人を特定する。
誰が最もリーダーシップ・ポテンシャルを持っているか、誰の能力開発を加速化するか(アクセラレーション・プールのメンバー)などを決める。リーダーシップ・ポテンシャルの測定(本章の後半で説明する)のレビュー、職務中の仕事ぶりに関するデータ、職歴のデータ、その他の関連情報のレビューが含まれることもある。
🔶主要な職務への配属や昇進に対する準備度を評価する。
現在のビジネス状況とリーダーシップの空きを検討し、有望だと特定された個人が昇進する準備が整っているかどうか判断するのが目的である。個人の準備度診断(第4章参照)、実績データ、能力開発の進捗度を示す指数などの質の高いデータを含まなければならない。
🔶積極的な能力開発を計画する(能力開発を目的とした配置転換、特別な職務、トレーニングなど)。
活動計画は通常、特別な能力開発の取り阻み (職務の拡張、昇進)を含み、必要な支援(メンター、訓練など)を明確にする。それと同時に、ビジネス上のニーズと個人のキャリア上の関心の整合性が確実にとれていることを確認する(第5章参照)。
🔶時間をかけて成長度合いを評価する。
そのうえで、a)メンターやトレーニング、コーチングなどによる追加の、あるいは別の支援が必要かどうか、b)さらなる能力開発活動が必要かどうか、c)能力開発が昇進や重要な職務への準備度に影響したかどうかを判断する。
われわれは、経営幹部の判断に有用なツールもデータもないのに、一回の長いミーティングで6つの目的をすべて話し合おうとする組織を数多く見てきた。また、人材に関する話し合いを省き、リーダーシップのポテンシャルや準備度の考察をテストだけに頼る組織も見てきた。どちらもたいていは失敗する。
適切に設計されたタレントレビューは、ビジネスや業務計画サイクルに組み込まれた効率の良いプロセスを通じて、目的を達成する。年1回の行事ではなく、習慣的に繰り返し行う仕組みを確立しなければならない。そのためには、組織レビューと人材開発の加速化レビュー双方の目的を明確にする必要がある。
タレントレビューは、年1回ではなく、習慣的に繰り返し行う仕組みを確立しなければならない。
3.おすすめ人材アセスメントソリューション
①コンサルティングソリューション
②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム
③オンライントレーニング&ディベロップメント
4.DDIとは
DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。
◆DDI社の4つの専門分野
DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。
5.会社概要
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント