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第5章<成長する>リーダーの成長をグループで加速させる

1.組織的にリーダーの準備度を向上させるラーニング・ジャーニーにさまざまな能力開発手法を組み入れる

一度に一人ずつ成長を加速していては、大きなリーダーシップのギャップを急速に埋めることができない。他者との学習は、より速く、より集団的な成長を促進するので、各人の学習経路に組み入れるべきである(図5.1参照)。


 

5.1図 個人仕様の学習経路
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リーダーの準備度がグループで同時に飛躍的に向上するように、さまざまな能力開発手法を順に統合すれば、人材開発の加速化システムは大幅に進化するだろう。われわれは、この統合されたデザインを「ラーニング・ジャーニー」と呼んでいる。リーダーの集団は一緒に旅を始め(経営幹部と人事部門の関与と支援を受けて)、経験、洞察、フィードバック、相互支援を共有して、能力をより速く向上させる。 

ラーニング・ジャーニーは立案と設計の際に多小の苦労を伴うが、そこで得られるものは苦労をはるかに上回るはずだ。例えば、以下のようなケースが挙げられる。

・危機にあえいでいた地方銀行では、コーチング、影響力、変革リーダーシップ、EQといった健全な企業文化に欠くことのできないスキルに関連するリーダーの行動が、たった6カ月で大幅(50%以上)に増えた。
 
・東南アジアの大手エネルギー関連会社では、革新的な解決策を作り出したり、より戦略的に考えたり、よりグローバルな考え方で業務を行うなど、大きなビジネスの転換に必要なリーダーの行動が、わずか4カ月で平均70%増えた。
 
・大手の防衛システム請負会社では、全社の重要な職務に就く準備が整った後継者が2年足らずで倍以上に増えた。後継者が存在している主要ポジションはそれまでの30%から70%以上になった。さらに、新たに昇進したリーダーの仕事ぶりも向上した。

2.ラーニング・ジャーニーのサクセスストーリー~持続可能な革新の条件を作る

あるヨーロッパの家電メーカーは、競争で不利な立場に陥っていた。機能的にも地域的にも、サイロに閉じ込められたかのように周囲との連携が取れない状態で、リーダーはイノベーションに取り組むことも、変化する地域市場の需要にすぐに応じることもできなくなっていた。経営陣と人事部門は、3つの主なビジネス・ドライバーを特定した。

・組織の枠を超えて戦略的パートナーシップを構築する。
・イノベーションを推進する。
・競争戦略を実施する。

組織の成長戦略を実行に移すのに最も重要な役割を果たす階層として、上級管理職が特定された。全ディレクターを対象とした6カ月のラーニング・ジャーニーが、組織に持続可能な革新の条件を作る目的で組み立てられた。最初のセッションに先立って全員がアクセラレーション・センターに参加し、社外のフィードバックコーチからフィードバックを受け、ビジネス・ドライバーに関連するコンピテンシーの強化を目標とする能力開発計画の案を作った。 

最初のセッションで、幹部たちは主要な戦略的取り組みをまとめ、他の参加者からの質問やコメントを受けた。公式学習の間は、協力し合って戦略実施への現在の課題を調べ、ツールを使ってそれを解決した。追加の公式学習では、リーダー自身の個人的組織ネットワークを調べ、チーム内で変革を起こすためのより良い条件を作り出す方法を提示した。彼らはすべきことを学んだだけでなく、どのようにそれを行うかも学んだ。 

参加者は四半期ことに学習セッションに集まった。セッションとセッションの間には、小チームで組織内の実在のプロジェクトに焦点を当てたアクション・ラーニングを実施。サイロを崩し、境界を越えたイノベーションを促すことが非常に重要だったため、チームは意図的に、地域的、機能的な多様性を持たせて作られた。以下は、プログラムが成功したことを示す4つのポイントである。

・新たな地域市場の課題への対応時間が短くなった。

・多面(360度)診断の結果、ディレクターの78%がコミュニケーションスキルとネットワーキングスキルの評点を上げた。

・アクション・ラーニングを受けたチームの取り組みによって削減されたコストは、ラーニング・ジャーニーにかかるコストを超えた。

・これらのクロス・ファンクショナル・チームは、プロジェクトが終了した後も長く存続した。

大規模な組織の中で、あるいはリーダーの集団の中で、リーダーシップ行動はすぐに変えられる。だが、ひとつ確かなことがある。リーダーシップの成長による大きな成功は、1回の能力開発経験だけで得られるものではない。適切な順で適切な焦点を当てた意図的なイベント(ステップ)を取り入れる必要がある。

3.ラーニング・ジャーニーと学習経路を組み合わせるとどのように機能するか

・リーダー個人の学習経路は、その人の能力開発ニーズに合わせてカスタマイズされる。経路における行動計画は、一定期間の公式学習や職場での学習によって体系的に構成されている(図5.1参照)。学習経路はひとつあるいは複数の関連するコンピテンシーやその他の能力開発目標を習熟することに重点を置いている。ラーニング・ジャーニーは、個人の学習経路の主要な要素であり、経路の目標達成への刺激となる。 

・ラーニング・ジャーニーは、個人が学習経路に沿って進むよう設計された、グループでの能力開発体験である。時間をかけて複数の公式および非公式学習を行う。通常、事業戦略や組織バリューの変更といった組織の目標とともに、個人の能力開発(コンピテンシー、知識、経験)が目標として設定される。ラーニング・ジャーニーはフィードバック、心理的支援を与え、類似の目標を目指す集団を支援する。また、個人の能力開発を集団として相互作用し合う中で行うので、時間とコストの節約になる。ラーニング・ジャーニーが最も適しているのは、初級・中級管理職、上級管理職、あるいはあらゆる階層のアクセラレーション・プールのメンバーである。 

4.ラーニング・ジャーニーは投資の機会である

多くの人が、10年20年前にあの株を買っておけば良かったと思うことがあるだろう。そして、いつの日か、あのときチャンスをつかんでよかったと一生思うような確かな投資をすることを夢見ている。ラーニング・ジャーニーはこれに似ているが、過去に逃したチャンスではない。今も十分にチャンスがあるのだ。うまく設計されたラーニング・ジャーニーは、リーダーシップの人材開発の加速化の中で、最も大きな利益を生む投資となる。だが、残念なことに多くの組織が、それを活用するチャンスを無駄にしている。 

あなたの組織の学習者グループが、能力開発の加速化という共通のニーズを持っているなら、リーダーシップの成長への投資に大きな見返りを得るチャンスである。ラーニング・ジャーニーは共通のニーズ――重要なビジネス上のニーズから生まれることが多い――をとらえ、10人から1000人あるいはそれ以上のリーダーの集団に共通の課題に焦点を当てさせ、学ばせ、1人では不可能な速度で成長させる。また、焦点が共通することで、全参加者に短期間で広く深い学習を受けさせることができる。

ラーニング・ジャーニーは、学習手段(教室で、あるいはオンラインでのトレーニング、コーチング、メンタリングなど)とその後の支援――ソーシャルメディア(ブログ、ピア・ラーニング・グループ、補助的なオンライン・トレーニングなど)、必要に応じて使えるダイナミックでさまざまな学習経験を提供するツールなど――を組み合わせ、トレーニングで学んだスキルを身につけさせる。 

あなたの組織がまだラーニング・ジャーニーに気がついていないなら、今すぐにでも複数のラーニング・ジャーニーを始めるチャンスである。学習グループは、さまざまな学習目標やビジネス目標に合うように、いろいろな方法で作ることができる(表5.2参照)。学習グループは、共通する複数の成果の実現に向けて集められ、学習のプロセスを共有する。

5.2表 ラーニング・ジャーニーの成果と利点
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5.おすすめ人材アセスメントソリューション

6.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

7.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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