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日本の人事に求められる変革

1.人事こそ変わる

ここまで、日本人リーダーがグローバルポジションを獲るための課題、そして、グローバルで戦うためには、必要なリーダーシップスキルを開発することがいかに重要であるかを述べてきました。

現在、日本企業は「グローバルポジションを獲るリーダー」の輩出が、ビジネスのスピードに追いつくことができず、停滞中です。世界の中で、日本企業の競争力はこのままでは落ちる一方です。


世界で戦える人材が日本企業で育たないのは、日本の人事の在り方そのものに課題があるからです。ビジネス環境や経営戦略が大きく変わっている中で、人事部門の変革はかなり遅れているのではないでしょうか。

『ハーバードビジネスレビュー』という著名な刊行物には、「It’s Time to “Blow Up” HR and Build Something New. (今こそ人事部を吹っ飛ばして新しいものを作れ)」(2015年7/8月号)と、痛烈な人事部批判がなされています。2017年7月号の『ウェッジ(Wedge )』の表紙には、「日本型人事への最後通告」という特集タイトルが大きく掲載されました。「失われた30年を防ぐカギは人事改革」と、周囲の変化にかかわらず過去からの人事制度を運用してきた危機感の弱い人事に対して警鐘を鳴らす内容でした。

これまで続いてきた人事の在り方を人事自らが抜本的に変革することができなければ、日本企業のCHROポジションが日本人のリーダーではなくなってしまうことも、そう遠くない将来あるかもしれません。現に、日系企業のCHROのポジションに、変革推進することができるリーダーを外部から登用する動きが活発化しています。

VUCA時代において、企業価値を生み出し企業の成長をドライブするのは「人」です。そして、CEOは人材に対して眠れないほどの危機感を抱いています。人事部門そのものが変革に取り組むことが、日本企業の成長と直結します。本章では、人事がやるべきことにフォーカスしていきます。

2.新しい道を創り出す

一流の人事は、これまでの成功パターンを壊し、「新しい道を創り出す」ことができる人事だと考えます。三流の人事は、意志を持たず状況に流される人事です。人事に問われていることは、これまでの人材マネジメントや、リーダーシップ開発に変革を起こし、人事として組織に新たな価値を提供していくことです。

これまでのことを「変える」ということは、乗り越えなくてはならない障壁や挑戦も少なくありません。諦めずにやり続けるためには、人事としてのビジョンと、変えることへの強い意志と勇気が必要です。

ある人事責任者にインタビューをしたときに、現在の人事の取り組みは、自社にとっては「Grow or Die」だという覚悟で人事の変革を進めているという話が、強く印象に残りました。現状を何も変えずに、様子を見る、という選択肢は人事にはありません。経営の強いコミットメントと人事のリーダーシップがあれば、人事改革は確実に進めていくことができます。

3.管理部門から戦略部門へのシフト

人事部の課題を、データから考察します。これは、他部門を含めた部門長クラス(シニアリーダー)の能力をアセスメント(診断)したデータを分析した結果です。人事部門のシニアリーダーは「財務感覚」「ビジネス手腕」「起業家感覚」「グローバル感覚」が、他部門のリーダーと比べて、弱点として挙がっています。加えて、「顧客重視」についても、弱点という結果が出ています(図表15)。

図表15 他部門と比較した人事部の特徴 (出典)High-Resolution Leadership(15,000名のアセスメントデータから見た「ビジネス環境とリーダーの姿」レポート)(DDI)

残念なことに、人事部は、主要なビジネス関連のスキルが不足しています。このままでは、人事部がCEOのビジネスパートナーとして「経営に価値を創出できる部門」になるのは、厳しい状況です。

第1章で紹介したように、CEOの優先課題は「人的資源(人材)」であり、リーダーシップが何よりも重要という調査結果が出ています。

一方で、人事がどのようにビジネスに貢献しているかについて、グローバル全体で人事と上級管理職(シニアリーダー)に回答してもらいました。グローバル全体で、人事担当者のわずか18%が、先見型(戦略と人材を関連づけている戦略人事)と回答しています。注目すべき点は、上級管理職の4割以上が、人事の認識以上に、人事はオペレーショナルであると認識しています。人事のビジネスへの貢献については、人事の認識と上級管理職の認識とには、大きな開きがあり、上級管理職は、人事が今以上にビジネスに貢献することを求めています(図表16)。図表はグローバルデータですが、一方、日本の人事の回答は、25%がオペレーション部門と回答し、54%がビジネスとの協働型、そして21%が先見型と回答しています。日本の人事は、旧来の管理部門から戦略人事に転換しなくてはなりません。優先課題は、過去に成功した人材を量産することではなく、企業の競争力を高め世界で勝てる人材を、いかに早く育成するかということです。

図表16 上級管理職から見た人事 (出典)DDI「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2014|2015」

人事は、自社のビジネスの方向性や戦略的優先課題は何か、そして事業戦略を実行するうえで必要なリーダーシップ要件や自社のリーダーの課題について経営陣とディスカッションすることが重要です。

人事の役割は、戦略実行に先駆けて、自社の人材のリーダーシップ分析(リーダーシップダッシュボードの作成)を行い、事業戦略の成功の可能性(確率)をビジネス中心の視点で予測し、得られた洞察を経営陣に提言することです。

ビジネスの成功を予測するときに参考となる人事データの活用は、経営にとって価値あるものです。経営の“ビジネスパートナー”になるためには、「人」の話から入るのではなく、「ビジネス」の話ができること。「ビジネスに勝つ」人材を育成・輩出するには、ビジネスの視点が人事には不可欠です。

4.人事の定石を壊す

「グローバルのタレントマネジメントのトレンド」と「日本の人材マネジメントの特徴」について代表的なものを対比してみると、以下のような違いがあります。

右記も踏まえ、世界で勝てる人材を育成・輩出するために人事が変革すべき複数の項目から優先順位の高いものを挙げると、次のとおりとなります。

・人事制度
・昇進/昇格基準
・リーダーシップ開発の施策全般

過去の経緯を基点にして「できないこと」を考えるのではなく、将来に向かってこれまでの定石を疑い、今までの人事の常識であった考え方そのものを壊し、新しい枠組みをつくっていくことが求められています。

5.おすすめ人材アセスメントソリューション

6.グローバルポジションを獲りにいく

グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。

7.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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