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第3章<特定する>リーダーシップ・ポテンシャルの定義を明確にする

1.リーダーシップ・ポテンシャルの定義

リーダーとして最も速く成長しそうな個人を特定するのが目的なので、現在の仕事ぶりだけを見るのは危険だし間違いにつながる可能性がある。ポテンシャルは仕事ぶりではない。準備度でもない。個人がリーダーとして速く成長する可能性があるかどうかと、その個人が特定のリーダーシップ職務に合っているかどうかは別の話だ(注)。多くの組織では、この重要な区別ができていない(表3.1参照)。

(注)準備度アセスメントは、対象となるポジションや階層のサクセス・プロフィール全体を考慮に入れる必要がある。ポテンシャルの評価は予備的な判断であるため、本格的な準備度アセスメントなしで比較的速くできる。準備度アセスメントは、ある個人を後任者にできるか、あるいは昇進によって主要なポジションに就けるかどうかを検討する際に行うのが相応しい。これについては、次章でもっと詳しく論じる。


3.1 表 パフォーマンス、ポテンシャル、準備度の区別
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経営陣は、タレントレビューでポテンシャルを特定するのは、成長への投資の決定であり、昇進準備度の判断ではないことを理解しなければならない。ポテンシャルを評価する際に考慮すべき要素は、準備度アセスメントの際に考慮するべき要素よりも少なく、また一般的なものである。下の囲み記事に、リーダーシップの成功を予測する要素をいくつか挙げた。これらの要素は、タレントレビュー会議に取り込むことができる。

経営陣は、タレントレビューでポテンシャルを特定するのは、成長への投資の意思決定であり、昇進準備度の判断ではないことを理解しなければならない。

2.ポテンシャルを診断する際は、そのリーダー階層に相応しい方法をとる

パイプライン全体にわたり、リーダーシップ・ポテンシャルをどのように診断するかについては選択肢がある。最も基本的なアプローチをとって、経営幹部にポテンシャルの定義(囲み記事内の要素など)、業績データ、上司によるハイポテンシャル人材の評価などを伝え、どの人材が最もポテンシャルが高いか判断してもらう方法もあるが、われわれの経験から言うと、このアプローチは誤った判断を生む可能性が高く、隠れた人材を見つけ出す可能性は低い。真のリーダーシップスキルよりも知識や経験に比重を置いてしまうのだ。そこで客観的なアセスメントを加えることで、より精度を高め、このような問題を解決することができる。

3.2 図 リーダーシップ階層間の移行可能性の診断方法
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だがもちろん、組織のすべてのリーダーについて本格的な準備度アセスメントを行うのは現実的ではない。中規模から大規模の組織でリーダーシップ・ポテンシャルを持つ個人をキャリアの早い段階で特定したいと考えるなら、ポテンシャルのアセスメントを対象者のレベルと規模に合わせなければならない。図3.2に効果的なアプローチが示されている。

鍵となるのは、ポテンシャルを過大あるいは過小に診断しないことだ。リーダーシップの最下層や一般社員の場合、問題となるのは「リーダーを務めるポテンシャルを持つのは誰か?」である(図3.2の三角形の下段)。通常、この階層は対象者が多いので、経営陣は個人のパフォーマンスの洞察はほとんどできない。このような状況ではポテンシャルの自己アセスメントが役に立つが、注意も必要だ。このアプローチでは、経営陣が個人の将来の可能性を単なるテストで判断しているとの認識を生む危険をはらんでいる。それを防ぐために、ポテンシャルの自己アセスメントは、経営陣の洞察の根拠とするだけでなく、本人にとっての能力開発のツールにもしなければならない。結果がどう使われるか、明確に、透明性を持って伝え、意味のあるフィードバックや能力開発と一体化しなければならない。

リーダーシップの上層になると、ポテンシャルのアセスメントが負うリスクは増える。「経営幹部階層でリーダーを務めるポテンシャルを持つのは誰か?」(図3.2の三角形の中段)を決めるためには、より多くの最高経営幹部の参画と話し合いが必要となる。そこで役立つのが、事前課題として行う行動サーベイ(個人ではなく経営幹部が回答)だ。会議の際は、その結果をもとに話しを進め、ポテンシャル要素に関連した個人のパフォーマンスに会話の焦点を合わせると良いだろう。

組織の最上層で問題になるのは、すでに成功しているリーダーに、「組織全体のリーダーを務める能力があるかどうか?」(図3.2の三角形の上段)である。これは、必ずではないものの、主にCEOを指す。この判断を下すためには最も包括的な準備度アセスメントが必要になる。何があっても妥協してはいけない(第4章で特定のアプローチを取りあげる)。

ポテンシャルの評点を話し合い、最終決定するのに有効なプロセスを使う。ポテンシャルの評価はパフォーマンスの評価と一体化している。経営陣はそれにより、人材開発の加速化への投資をどのように差別化するか判断する。あなたのもとには、タレントレビューに参加した経営陣から、行動サーベイを通じてポテンシャルの評点が集まっているだろう。さらに、自己アセスメントの結果も手元にあるかもしれない。問題は、このアセスメントデータをどう処理して的確な判断に導くかだ。これについてわれわれは、仕事ぶりとポテンシャルを縦軸と横軸に取ったグリッド(9ボックスグリッドが典型的)が、信頼できるアプローチであると考えている。

9ボックスによる話し合いの進め方はさまざまだが、われわれはテクノロジーを使う方法を好んでいる。例えば、図3.3は、パフォーマンスとポテンシャルの評点を視覚的に表現し、それによって判明したことを、会議の場で即座に操作できる9ボックスグリッドで表示している。会議の参加者は、個人とグループのポテンシャルの報告にアクセスして、個々人のパフォーマンスやポテンシャルを深く探り、議論し、測定することが可能だ。そして最終的に、各人がグリッドのどのボックスに最も適しているかの合意に達する。

3.3 図 9 ボックスグリッド上の人材の配置
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パフォーマンスとポテンシャルを組み合わせて判断することで、各ボックスにいる個々人の能力開発の計画が立てやすくなる。差別化には、図3.4の要素が役立つ(ボックス内の人はみな現職で高いパフォーマンスを見せているが、他の候補者との相対比較によって低いパフォーマンスのボックスに入っている場合があることを忘れないでほしい)。

3.4 図 パフォーマンスとポテンシャルの9 ボックスグリッド
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3.おすすめ人材アセスメントソリューション

①コンサルティングソリューション

②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム

③オンライントレーニング&ディベロップメント

4.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

5.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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