エンゲージメントを高め、効果的なチームを形成するための5つの成功領域
1.背景・問題意識
ビジネス環境の変化が激しく、グローバル市場における競争力を強化するために、日本企業の終身雇用制度 は実質的に崩壊しつつあります。同時に、中堅・若年層の企業観・職業観も「帰属」から「所属」に変化して います。この変化により、個人と企業・組織の結びつきは緩やかなものになり、最近の副業解禁、働き方の 多様化などの動きと相まって、人材の流動化が進むことにもつながっています。
さらに、コロナ禍で一気に進んだリモートワークにより、組織内メンバーの結びつきが一層緩やかになって います。
このような状況で、エンゲージメント(個人と組織の成長の方向性が連動していて、相互に貢献しあえる関 係性)を維持・向上する必要性・重要性が強く認識されるようになっています。また、多くのエンゲージメ ント関連の調査で、エンゲージメントが高い組織は、組織の財務パフォーマンスや労働生産性が高い傾向に あることも明らかになっています。
2.アプローチの方法
多くの組織が何らかのエンゲージメント向上施策を実施していますが、成果を出すには道半ば、という声を 多く聞きます。米国ギャラップ社による調査では、調査した国の中で日本は最下位クラスのエンゲージメン トの状態にあるとされています。
エンゲージメントについて考察するとき、我々は「効果的なチームを形成するための 5 つの成功領域」の切 り口を用います。すなわち、「成果」「コミットメント」「コミュニケーション」「プロセス」「信頼」の 5 つで す。この 5 つを満たすチームは、明確で効果的な業務遂行プロセスをもち、お互いを信頼し合い、活発かつ 効果的にコミュニケーションをとり、互いに協力し合いながら、チームとして優れた成果を上げることに意 欲と責任感をもって取り組む状態にあるといえます。
エンゲージメントに関する相談は、冒頭で述べた環境要因を背 景に絶えることがありません。
一方で、マネジャー/リーダーは自組織のエンゲージメントの 状態を分析する術をもっていません。多くは、エンゲージメン トサーベイを用いることで対応しているようです。
サーベイは有効な情報を提供するもので、多くの洞察を得られ るものですが、結果だけ示され何とかせよ、となっているのが 実体です。
マネジャー/リーダーは、自ら自組織の状態を診断し、対処していくことが課題となっています。
3.提案事例
アプローチとして、そもそもの知識、スキルが欠けているケースが多いことや、実際にメンバーを巻き込ん だ取組みの難易度が高いことから、研修をトリガーとして職場実践上のフォローアップを軸としたデザイン になることが多いです。
最小限の構成としては、以下のようになります。
1. 課長に対するトレーニング(1 日・集合研修)
【目的】
自組織について洞察を得るための「5 つの成功領域」スキルおよびチームメンバーを巻き込むための ファシリテーションスキルを強化する
※事前ワークとして IM オンライン「リーダーのためのインタアクション・スキル」で人間のもつ感情的ニー ズと実質・合理的ニーズに対応するスキルを学習
2.職場実践
定例ミーティングの場などを活用して「5 つの成果領域」についてメンバーと話し合う。ありたい姿や現状 について整理する。メンバーの思いや考えをできる限り引き出す。
その内容を踏まえ、問題、課題を特定する(このプロセスにメンバーを参画させると効果的)
話し合いの内容や問題、課題内容を成果物として、ラーニングプラットフォーム上にアップする。
3.フィードバックセッション(半日・オンライン集合)
【目的】
成果物・取組み内容発表に対するフィードバックと Q&A によって、思考の幅を広げ、より効果的な職 場実践につなげる。
4. 職場実践
フィードバックセッション内容を踏まえ、メンバーと問題・課題に対する共通 認識醸成、目指すべきチームの姿をチーム憲章として描く。5 つの成功領域の 強化行動を特定する。
課長自身の課題感に対しては各自マイクロラーニングを活用する。
5.成果発表
■執筆者プロフィール
株式会社マネジメントサービスセンターLearning Design Experience
(LDX) 推進部 LDX 推進グループ長
西川 宜宏
中央大学法学部法律学科卒。大手総合人材サービスでの採用コンサルティング営業、ソフト ウェアハウスにて人事、営業企画を経て、2013 年 10 月に当社入社。国内リーディングカン パニーのコンサルティング営業を経験後、ラーニングデザイン、ラーニングエクスペリエン ス、デジタルトランスフォーメーションを推進する LDX 推進部の立ち上げに参画。
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント