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アーヴィングvsリップシュタット裁判資料

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デヴィッド・アーヴィングvsデボラ・E・リップシュタット裁判資料の翻訳集です。
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アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(1):「ユダヤ人問題の最終的解決」とは?

映画『否定と肯定』は、実際にはリップシュタットの原著からもかなり脚色されていますが、映画では裁判の割と大事なところは、コンパクトではありつつもきちんと描いていたりします。しかし、実際の裁判では事細かにホロコーストに関する議論をしていたことはほとんど知られていないのではないでしょうか? これは原著でもあまり触れられていません。 映画でも、イギリスの裁判制度の特殊さが言われていましたが、リップシュタットの主張がアーヴィングへの名誉毀損でないことをリップシュタット側が立証しなけれ

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(2):アウシュヴィッツ-1

アーヴィングとリップシュタットの裁判の本題は、リップシュタットが自著『ホロコーストの真実』で書いたアーヴィングへの評価が名誉毀損になるかどうかでした。しかし、世間的な大方の見方では「ホロコーストがあったかどうかを問う裁判」と思われている向きもあるかと思います。アーヴィングは、ツンデル裁判以降、明確にホロコースト否定論者に転じたわけですが、アーヴィングのホロコースト否定の主張が正しいのであれば、リップシュタットがアーヴィングに名誉毀損したことになります。つまり、この意味では、ホ

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(3):アウシュヴィッツ-2

ヴァンペルトレポートは本当に長いです。リップシュタットのサイトのページに、ヴァンペルトレポートは一ページにまとめられていますが、前回訳したところまでのブラウザの縦スクロースバーを見ると、まだ十分の一も進んでません。多分、ヴァンペルトレポートを本にしたら何百ページもあるんじゃないでしょうか? でも訳すと決めた以上、ヘウムノシリーズとか他の終わってないシリーズのことが頭にチラつきますが💦 、とにかく目標は完訳です。 ▼翻訳開始▼ II アウシュビッツとホロコースト アウシュ

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(5):アウシュヴィッツ-4

トップに掲載した絵は、アウシュヴィッツに関する多くの絵を描いたことで有名なユダヤ系フランス人の画家であるデヴィッド・オレーレが1945年に描いたクレマトリウム3の断面図です。正確にはガス室は脱衣場〜火葬場に対して平面図上では垂直になっていますが、その点と寸法的な点を除き、極めて正確だとされています。 今回は、そのデヴィッド・オレーレの話も出てくるので、オレーレの描いた絵を文中に挿入しようかどうしようか迷ったのですが、それをし始めるとバランス的に他の点でもサービスせざるを得な

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(4):アウシュヴィッツ-3

とにかく長いヴァンペルトリポートですが、他にもまだ専門家による報告書があり、これらを全部頭に入れて裁判をしたっていうのが少々信じ難いほどにも思えてきます。『否定と肯定』の映画だけでは、ここまでの詳細な内容だったとは思えないでしょう。 さてしかし、本当に若干ですけど、ヴァンペルトリポートにも僅かに問題があるのがわかりました。この裁判は2000年以前に行われた事もあり、当然のことながらその後に変化した歴史事実認識もありますので、そこまでは反映されていません。私が見つけたのはマイ

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(6):アウシュヴィッツ-5

今回翻訳しているヴァンペルトレポートは、アウシュヴィッツを中心に、年代と共にどのように内容が判明していっているのかが、その理解の変遷としても把握していける、ある意味優れもののレポートでもあるようです。 私などは、ほんとにここ1〜2年程度のホロコースト理解しかない為、現代の視点からしか俯瞰する事ができず、戦後75年以上かけて判明してきた膨大な内容のごく一部しか知りません。実際には私の知っている何倍もの内容が分かっているのに、私自身はそれらのほとんどを知らないので、例えばある事

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(7):アウシュヴィッツ-6

何度も言わなくてもいいと思いますけど、「超長い」ヴァンペルトレポートの翻訳の続きです。半分以上、現在まで私が知らなかった内容が書かれているのですが、今回もまた多くの知らなかった内容を含む論述になっています。 その冒頭、ヨハン・パウル・クレマー博士の話が出てきます。この日記は知ってましたが、裁判の証言は全く知りませんでした。いや、否定派はこの日記に関し碌でもないことを言っているのです。 クレマーの日記だけではなく、さまざまな資料によると、この当時、チフス、マラリア、赤痢が破

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(8):アウシュヴィッツ-7

最近あるところで、またしてもネット否定派とやり合いしてたのですが、その人はホロコーストの写真も文書も全部捏造だと主張する人でした。ネットの否定派なんて例外なくそうなんですけど、わかってないなぁと思うのは、写真にしろ文書にしろ、それらは「意味」を付与されて初めて一つの証拠物件になるのです。ですから、上の写真も、一見なんの変哲もない親子の写真に過ぎませんが、「これは1944年のアウシュヴィッツ・ビルケナウで撮影されたハンガリー系ユダヤ人の殺戮作戦の時に撮られたものであり、火葬場に

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(9):アウシュヴィッツ-8

トップの写真は何かというと、1961年に製作された『Pasazerka』というポーランドの映画からのスナップです。アウシュビッツ・ビルケナウ収容所を扱った映画で、ある女性看守と女性囚人の収容所内での関係を描いた映画だそうですが、撮影最中に監督が交通事故で亡くなってしまい、その後友人らの手によって撮られていた映像をまとめて編集したものだそうです。心理描写が素晴らしいらしいのですが、私は見てません(Youtubeに全編ありますが、ポーランド語がさっぱりわかりませんので)。 何気

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(10):アウシュヴィッツ-9

ネットを彷徨ってたら、トプ画のような図面写真が転がってました。これ、例のゾンダーコマンドだった画家のデビッド・オレーレの描いた絵だそうです。時期は不明。でも、デビッド・オレーレは図面は見てないと思うので、かなり正確な絵だと思います。プレサックの本から適当に図面を選んだのを参考に以下に示します。 否定派がオレーレのことをどう言っているのかは、あんまり知らないですけど、否定派に言わせれば「死体安置室1の天井には穴などない」ので、捏造画家ということにでもなるのでしょうか? さて

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(11):アウシュヴィッツ-10

2021年11月23日現在、noteエディタはまだヴァージョンアップされていませんが、告知によればかなりたくさん改善されるそうで、公式ヴァージョンアップを待ち侘びております。特に箇条書きリストなどは、それが現状はないので誤魔化すのに結構気を遣ってきました。 さて今回は、ホロコースト否認論の始祖、ポール・ラッシニエに続き、アーサー・R・バッツ、ティース・クリストファーセン、ヴィルヘルム・シュテーグリッヒの三人が登場します(リチャード・ハーウッドも出てきますが、僅かに触れられて

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(12):アウシュヴィッツ-11

フォーリソンは「狂ってる」と確信に近く思ったのは、以下の記事を翻訳した時からです。 今にして思えば、私自身が入れた注釈はちょっと的を外してるし、ふざけすぎな感が否めませんが、フォーリソンがあまりにも否定方向でしか解釈せず、イギリス軍人達がヘスに偽証させるように「統合失調症」にまでしてしまったのだと、『死の軍団』プラスα程度の根拠で主張するその論述には、狂ってるとしか今でも思えません。 フォーリソンほどホロコーストに関して断定的に否定を主張する人はいないのではないかと思いま

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(13):アウシュヴィッツ-12

今回はロイヒターレポートで有名なフレッド・ロイヒターについて、です。否定派側の立場に立てば、「正史派」から目の敵にされてる存在なのかも知れません。陰謀論者はとにかく「科学的」がお好きなようで、科学的にアウシュヴィッツが絶滅収容所でないことを証明した、みたいな感じがピッタリ好みに合うのでしょう。私としては「科学的」より「学術的」の方が上位にあるような気がするのですが、陰謀論者は歴史学を「科学」で押さえ込んでしまいたいようです。 しかし、残念な事に、ロイヒターは科学的な資格など

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(14):アウシュヴィッツ-13

▼翻訳開始▼ 最後に、サンプルの問題に触れる。これまで見てきたように、ロイヒターはそれらをあまり重要視していなかったが、その証拠能力の高さがアーヴィングやフォーリソンをはじめとする多くの人々に感銘を与えたため、少し詳しく考察する必要がある。まず最初に、ロイヒターがアウシュヴィッツのガス室の壁にフェロフェリシアン化物の形でシアン化物が残留していると想定した前提のいくつかを指摘しておく必要がある。第二次ツンデル裁判では、ロイヒターは、アメリカのガス室の壁にシアン化合物が残留して