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✓リストランテ アモーレ/井上荒野
▽あらすじ
仔牛のカツレツ、ポルチーニのリゾット
鯛のアクアパッツァ、
ホタルイカと菜の花スパゲッティ、
レモンパイ―――。
偲と杏二の姉弟で切り盛りしている
目黒の小さなリストランテ。
名前は「アモーレ」。
常連客の沙世ちゃんと石橋さんの
理由ありカップルや、
初子ちゃんそして杏二の師匠で
今は療養中の松崎さん…など、
それぞれ事情を抱えたアモーレと
季節の美味しい料理の数々を描く。
▽印象に残った文章
私は重いのだろう。
休みの日にひとりで動物園に来て、
静物画みたいな山羊たちと向かい合っているなんて、
じゅうぶん重い。
だから捨てられるしすっぽかされるのだろう。
でも、あっさり捨てられ、
気軽にすっぽかされるということは
軽いのかもしれない。
▽感想
リストランテ「アモーレ」のシェフ、
ウェイトレス、客、をとりまく小さな輪の中で
起こるあれこれを美味しそうな料理と共に
描かれている。
シェフと客はセックスしてばかりだし
ウェイトレスとは仕事が手につかないくらい
あの人にお熱だし、
女が好きなシェフが好きっていう客もいるし
料理よりも人間関係がごちゃごちゃしていて
これはうまく片付くのか?と思いながら読む。
そんな人たち一人一人の視点で
話が進んでいくので
シェフもウェイトレスも客も
客観視されたり、
じつはこんなことを思っていたりと
意外と奥が深い。
話が戻らず、進みっぱなしなので
視点主が変わっても読みやすかった。
✓リストランテ アモーレ/井上荒野/ハルキ文庫