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✓百年の子/古内一絵

▽あらすじ
舞台は令和と昭和の、とある出版社。
明日花(28歳)は自社が出版する
学年誌100年の歴史を調べるうちに、
今は認知症の祖母が、
戦中学年誌の編集に関わっていたことを知る。
学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった。
祖母の軌跡を紐解くうちに明日花は、
子どもの人権を真剣に考える大人たちの想いを縦糸に、
母親と子どもの絆を横糸に、
物語は様々な思いを織り込んで壮大な人間ドラマとなっていく。


▽印象に残った文章

しかし、人格は間違いなく子どもの中に備わっているし、
子ども時代を経ることなしに、大人になることはありえない。
にもかかわらず、大人たちがそのときに拠っている
社会情勢や権力に合わせて子どもを鋳型に
当てはめるように育てれば、
子どもはそもそも備わっている能力や個性を
十分に発揮することができない。

人間の歴史は百万年、子どもの歴史は百年


▽感想
子どもと女性の歴史は百年という
始まりと百年目の昭和と令和を交互に語られていく。

無邪気な子どもが、そうでなくなるのは、
型にはめる教育が抜けないからだというが、
学校では?家では?近所では?
子どもと関わる全ての大人の責任だと思った。

昭和なら、日本は勝つ、神の国、アメリカは嫌なやつ、
そう書かれていた雑誌が世に回り
子どもたちの目にも頭にも入っていたのに、
その雑誌が戦争に負けた途端、
負けから成長しよう、日本は清い国、アメリカは友だち
などと書かれ始めた当時の子どもたちは
どう思ったんだろう・・・。

文学の楽しさを見出していただけなのに、
そんな雑誌を世にばらまくから
戦争への意気込みがたきつけられたと
わが子を失った婦人の怒鳴る姿は
読んでいて心がとても痛かった。

子どものための文学誌、今の子どもたち、
それらが昭和からどのように変わって
どのように成長してきたか。

読みやすい物語とともに、勉強になる本でした。


✓百年の子/古内一絵/小学館

↳単行本

サンプルもありますので、ぜひ

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