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君が好きだと言う街が、きっと私も好きだと思う。

私は今、知らない街の鉄道に揺られながら、これを書いている。

知らない街を走る鉄道に乗るのは、心地いい。
…知らなかった街、の方が正しいかもしれない。

1ヶ月と少し前に、彼氏ができた。
年下で、料理上手で、言葉を大事にする、大切な大切な運命の人。
…そう、運命の人だ。
恋人になる前から、「やけに自分と似ているな」と思っていた人。
本当にこの先ずっと一緒に生きていきたいと思うし、きっとそうなるだろうと予感している人。

私はその運命の人に会うべく、最近はずっとこの街に通っている。
足繁く、というのはこういうことだ。
ほとんど住んでいると言っても間違いではないだろう。

近くに住んでいるわけでも、自分の大学があるわけでもない、ちょっと前まではよく知らなかった街。
少しサークルの用事で行ったくらいでは、「知ってる」にはカウントされないだろう、と勝手に思っている。
私はこの1ヶ月で、この街がこの世界の中で一番いい場所に思えてきていた。

「いい場所」というものの基準は、街の綺麗さでも雰囲気でも、そこにあるお店の良さでもないということを、私は最近初めて知った。
そこに誰がいるか、ということが一番重要らしい。

その街には、私の恋人が住んでいる。
私を見つけてくれて、私を好いてくれて、私をこの上なく大事にしてくれる、至上の人。
私はこの街を、好きにならないわけがなかった。
好きな人がいる。
ただそれだけだけれど、それだけで十分だ。

それがどこであるかは、あまり関係ない。
この文章の中で具体的な地名を出さないのは、きっとそれがどこであっても、私は同じことを思うから。

これから先、たぶん私と彼はいろんな場所に行く。
私の好きな場所、彼の好きな場所。
そこに住むことだってあるだろう。
もちろん一緒に。
ずっとこの街にいるということは無いはずだ。

だけど、私は行く先々をぜんぶ好きになってしまうと思う。
そこにはきっと彼がいるから。
私の居るべき場所は、帰るべき場所は、彼の居るところなのだ。

彼が好きだと言う街が、きっと私も好きだと思う。

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