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好きなものに囲まれて暮らす

海外に住んでいると、日本語の本は貴重な存在。あれが読みたい、という希望に関わらず、本好きの友人たちとお互いに手持ちの本を貸し借りして読むことがよくある。そうすることで、自分が知らなかった世界の本に出会えることもある。そして、自分の手元にも是非残しておきたいと思うお気に入りの本に出会って、日本に一時帰国した際に購入した本もある。そんなお気に入りの本の1冊が『しあわせのパン』だった。


2012年に大泉洋さんと原田知世さんが演じた北海道を舞台にした映画になっているということは、本を読んでいる時はまったく知らなかった。ただただ、北海道の大自然のなかで、パンとコーヒーそして旬の野菜を使った料理を出すオーベルジュを営むその世界に憧れを感じた。この本は、映画監督の三島有紀子さんが、映画撮影後に本にした作品ということで、映像が先に作られた小説であることを後から知った。このオーベルジュに、春夏秋冬とそれぞれの季節に何かしら心に問題を抱えたお客さんが訪れ、心温まるストーリーが展開されていく。この本を読んだ後、当時使っていたメモ帳にこんな感想を記していた。

「2014年4月3日 『しあわせのパン』  とてもよかった。北海道ののどかな田舎が舞台になっており、広大な自然の中でパンとコーヒーが美味しいオーベルジュを営むりえさんと水縞さん。とても、不思議なくらい、読み手のこっちをリラックスさせ、あたたかい気持ちにさせてくれた。こういう作品を書きたい。それから、好きなものに囲まれて、好きなことをやることが、なんて素敵なことなんだろうと思った。やっぱりいらないものをドバッと捨てて、好きなものに囲まれる環境を作ろう」

今から8年前、高揚した気持ちでこの感想を書いていたことを思いだす。そして、この時書いた「好きなものに囲まれて暮らす」という言葉が、今でも私の活力の源となっている。

この週末は、イースター休暇で4連休だった。イースター前は久しぶりに仕事が立て込み、仕事と家事をこなすだけでグッタリしていた。ただただこうして仕事しながら人生が終わっていくのかという気持ち。いやいや、そんなネガティブな気持ちになっている時こそ思い出さなければいけない、あの言葉を。

この4連休は恵の晴天が続いた。よし、活動開始だ!

まずは、近くの公園へ散歩に出かける。あのお花はもう咲いているだろうか。行ってみると、ちょうど素晴らしい光景に出会えた。

一面ブルーベルーのお花が咲き誇り、まさに目の前にブルーの世界が広がる。写真に撮るとこの感動がうまく伝わらないことが残念だけれど、少しアップにしてもう1枚。

辺り一帯にブルーベルの花が咲いている姿がおわかりいただけるだろうか。

小径を挟んだ両側にもブルーベル。

ミツバチも嬉しそうに花から花へと移っている。よかった、この景色を今年も見られて。パワーが一気に充電されていく。

ミツバチがお花にしがみついている姿、見えますか?


この時期咲き誇るお花はブルーベルだけではなかった。歩いて買い物に行く途中、この時期ウキウキさせてくれる場所がある。どうなっているかな、ドキドキしながら進んでいく。すると、こちらもちょうど見頃だった。

赤い衝立(?)が邪魔なのだけれど・・・

3本の木が並ぶ一角が、桜の花で輝いていた。近づいてアップで写真を撮っていると、犬の散歩をしているマダムに遭遇。

「美しいわよね」
「ええ、とっても。白、ピンク、白と並んで咲く姿が可愛いですね」

自然と笑顔で会話が生まれる。

その先にある素敵な家が並ぶ住宅街でも、大きな桜の木が満開だった。恵の太陽、恵の桜。幸せを感じるひととき。


さて、この4連休中にほかにもやりたいことは色々ある。朝からテラスに出て、土仕事をはじめよう。数々の植物の苗が並ぶガーデンコーナーから連れてきた3つの小さなポット。バーベナ、フクシア、カリブラコア。これらを少し大きめのポットへ移し、テラスの柵にかける。伸び伸び成長して、お花が開くことが今から楽しみ。

あ、写真がボケてしまった・・・

去年のお花のポットや花壇には、まだ枯れてしまった植物がそのまま残っていた。それらを取り除き、土を篩にかけ、太陽の下で乾かす。それから、お花の種も撒こう。小さなポットに土を入れ、小さな種を載せたら、また土を被せる。ちゃんと芽が出てくれますようにと祈りながら水をかける。

ちょうどガーデンショップから、イースター期間特別セールのお知らせがEメールで届いていた。すばらしいタイミング。気持ちが庭づくりに向かっている今のうちに、今年の花壇を彩る植物を注文しよう。あそこにはこれを植えて、あそこにはこれを、じっくり考えながら選ぶ時間もまた幸福な時間。

土いじりをしていると、あっという間に時間が経つ。楽しい時間だけれど、始める前には少々気合が必要。そして、今回は気合を入れてくれる大変嬉しい助っ人がいた。

テラスへの窓を開けたまま、まずは2階に上がって支度を済ませる。そして、振り返ると黒ネコがいた。

実は、数ヶ月くらい前から、近所の黒ネコさんが私たちにすっかり懐いているのだ。以前からよくテラスに遊びに来て、そっと近づいてナデナデしたりと交流を深めていたのだが、ある日テラスの窓からじっと私たちがいる部屋の中を覗き、そこから離れなくなった。ずっとこちらを見ているので、なんだか可哀想になり、窓を開けると喜んで部屋に入ってくるようになった。とても人懐こく、スリスリしては喉をグルグル鳴らす。膝の上に乗ったり、窓から外見たり、しばし一緒の時間を過ごすと、またちゃんと自分のおうちに帰っていく。

2匹の愛猫を天国に見送って以来、新たにネコを飼おうという気持ちにはまだなれなかった私たち。けれどいつの間にか、ネコの方から私たちに近づいてくれていた。近所のおじさんとおばさんの家に遊びに行くことを楽しみにしている子供のように、ちょこちょこやって来ては、家の中をウロウロし、たまに昼寝までして帰っていく。どれだけこの黒ネコに癒やされていることか。

今回は、庭で作業をしている間、一緒に外に出てテラスをウロウロしたり、ベンチでコロコロしたりと、しっかり応援してくれた。

「あなたが好きなキャットミントも枯れてしまったから、また種を撒こうね」頭を撫でながら話しかけると、ご機嫌に喉を鳴らしてくれた。

テラスの前を流れる小川では、バンやオシドリたちが気持ちよさそうに泳いでいた。鳥たちの元気な姿を見ると、自然と笑顔が作られる。

テラスガーデンで好きな植物に囲まれ、そしてネコと一緒に過ごす時間、「好きなものに囲まれて暮らす」私の理想の生活の一部。夏になったら、ここで読書をしながらのんびり過ごしたいな。

4連休もあっという間に終わりだ。家の中ももっと好きなものに囲まれる環境にしたいけれど、また次回。焦らず少しずつ整えていこう。まずはゆっくり美味しいスコーンを食べて、リラックスのひとときを過ごしてから。


本日もご訪問いただきありがとうございました。

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