読書の記録(49)『金色の羽でとべ』高田由紀子
手にしたきっかけ
高学年向けのスポーツに関する本を探していて、他校の司書さんが薦めてくれた本。『スイマー』と同じく、佐渡島が舞台。
心に残ったところ
2024パリオリンピックの男子バレー準々決勝、日本VSイタリアの試合を見た。その直後に読んだからか、ものすごくおもしろかった。
私自身、バレーボールは小学校の体育や休み時間にやって、楽しかった思いがある。中学校に入ったら、バレー部に入りたいと思って仮入部に参加した。ネット際で跳ぶ練習をしたときに、まったく届かなくて、あ、私には向いていないかも…と急に弱気になってしまい、入部には至らなかった。自分が極端に小柄なんだということを初めて意識したのがその時だったように思う。そんな体験があるからか、バレーボールに対する憧れがある。身長がせめて平均ぐらいあったら、もしかしたらバレー部に入っていたかもなあと思ったりする。
好きな番組だけ録画して時間があるときに見るスタイルになって、テレビをあまり見なくなった。テレビをつけるときはニュースや天気を確認するときと、夕食時に子どもと見るぐらい。集中して1時間以上見ることは最近ほとんどなくて、スポーツ観戦からも遠ざかっていた。でも、なぜか2024パリオリンピックの男子バレー、日本VSイタリアの試合は、ネットの情報や流れてくるニュースなどから、見るべき!これ見逃すと後悔しそう!と思った。
福澤達哉さんの解説が丁寧で面白くてわかりやすかった。見るべきポイントや見過ごしてしまいそうなところにある面白さがわかって、試合終了まで夢中で見続けた。昨年高専ロボコンの近畿地区大会を見たとき以来の、心を鷲掴みにされる感じがあった。フローリングにじかに座って夢中で見ていたら、試合終了時にはおしりが痛くなってた。
この『金色の羽でとべ』の主人公の空良は、小学1年生のときに佐渡島出身のプロバレーボール選手、北見佑飛選手に憧れてバレーボールを始める。空良はアタッカーを目指していたが、島に転入生がやってきて、その転入生が背が高くライトアタッカーだったことから話が展開していく。
5年生が中心の新チームになり、空良が監督から告げられたポジションはセッター。しかも、キャプテンを任される。自分の気持ちにどう折り合いをつけ、どう成長していくのかが見どころだ。
5年生から6年生になる春休みに、卒業生と行う恒例の「あれ」。風介と丈介の言葉に空良は衝撃を受ける。みんながアタッカーになりたいわけではなく、自分の役割を全力で果たすことに喜びを感じる人もいる、という価値観に衝撃を受ける。この体験がさらに空良を成長させ、セッターとしてもキャプテンとしても新たなステージへと押し上げる。こうした空良の体験を、読者も一緒に体験している気持ちになる。これも、読書の醍醐味の一つだと思う。
みんなが自分のポジションに誇りを持ち、誰が欠けてもチームとして成り立たない、というメンバーの思いもいいなあと思った。ジャンプ力があり、得点を決めるアタッカーもかっこいい。けれど、アタッカーにスパイクを打たせるためには、レシーブで確実に拾う人がいて、状況に応じて打ちやすいトスを上げる人がいる。お互いの仕事ぶりを評価し、尊敬し、称え合っている関係もいいなあと思った。
パリオリンピックで見た、何度でも何度でも拾い上げるリベロの山本智大選手、コートの中を縦横無尽に走り回り自由自在にアタックを打たせるセッターの関田盛大選手。2人の活躍の様子をありありと思い出した。何なら、You Tubeで検索してもう一度見てしまうぐらい。
最後の全国大会の間際のアクシデントはちょっと微妙な感じもした。『タッチ』的な。話を盛り上げる王道の展開だと思うんだけど、話に急ブレーキをかけられるというか、ちょっと気持ちがざわつく感じがした。私が大人だからちょっと冷めて見てしまうのかなあ。子どもだったら、ドキドキ!という感じで最後まで夢中で読めたのかもしれない。
それでも、久しぶりに本を読んでいて何度も泣きそうになった。中学校が違うから、バレーの仲間といったんは離れてしまう。でも、バレーを続けていれば高校でまた会える、というのもメンバーの明るい未来を想像させていいなあと思った。
まとめ
読むタイミングで本の印象って変わる。この本を1年後に読んでいたら、ここまでいい!と思わなかったかもしれない。
他にも司書さんのお薦めのスポーツに関する本を読んだので、夏休み明けの図書の時間にスポーツに関する本のブックトークをしてみたいと思った。