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理論・方法

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2021年12月の記事一覧

文献目録

坂詰(2008)は、過去の発掘調査報告書が現代の報告書と同じように扱われるため、考古学にとって文献目録は重要であると指摘している。
坂詰(2008)は、文献目録として古くは、中谷治宇ニ郎の『日本石器時代文献目録』(1930)に始まり、後藤守一『日本石器時代綜合文献目録』(1958)、斎藤忠『日本古墳文化資料綜覧』(1952・1953・1956)続編(1985・88)など歴代の考古学者もその方面の必

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実験

experiment

研究者の設定する人為的状況や、自然に生ずる状況を用いて、統制され、意図的なかたちで変数を分析していく調査方法(ギデンズ1999)。

アンソニー・ギデンズ1999『社会学』而立書房

理論考古学

安斎は「理論考古学とは、これまでの思考の枠組みに縛られない、まったく"新しい考古学"創造の可能性を探るための、考古学における〈理論と実践の関係〉についての理論的考察である"。」という。
理論考古学の画期となったのは、1960〜70年代のアメリカ考古学の生態学的方法をとるルイス・ビンフォードとその一党と、イギリス考古学の情報論的方法をとるデイヴィッド・クラークと若手研究者による「ニューアーケオロジー

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日本旧石器時代学会第17回 2日目ディスカッション

2019/6/30 〈日本旧石器学会第17回研究発表 〉2日目パネルディスカッションの文字起こし。

中尾先生→理論をなくして実践は盲目

溝口先生→理論と方法 理論的達成、学問の先端の認識の不在
研究史の理論的プラットフォームの不在

安斎先生→考古学ジャーナルの近藤義郎ラインに着目してきた。
クラークのイコノミックベーシス→1つの方向性を持った勉強会が身につくと感じる。私の経験から言うと勉強会

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科学的研究プログラム

イムレ・ラカトシュ「反証と科学的研究プログラムの方法論」より

「知的誠実さは、証明すること(あるいは「その確からしさを示すこと」)によって自分の立場をゆるぎないものにするとか確立しようとすることにあるのではない。知的誠実さとは、むしろ、どういう条件のもとでなら自分の立場を放棄するつもりであるかをはっきりさせることにあるのである。」(p.133)

l.ラカトシュ/A.マスグレーヴ著,1985『批

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論法

帰納法という推論は、その前提が正しいとき、演繹的推論とはちがって、その結論の正しさを完全に保証してくれるわけではない。だが、それは結論の正しさを信じるべき十分な理由を提供してくれるとみなされている。

仮設演繹法は、真理の解明を目指すが、例えば100回同じ実験を繰り返して同じ結果が得られたとしても101回目に同じ結果になる保証はない。ヒュームは、帰納をいくら繰り返しても対象の総数に比べて実験数が圧

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観察の理論負荷性

N.R.ハンソンが提唱した概念。
 我々は素朴には、幾人かで同じ対象を見るとき、皆「同じもの」を知覚しておりそれを別様に解釈しているのだ、と捉えてしまう。しかし、見ることは、実は理論負荷的な試みなのである。われわれがそれを何として見るかは、われわれが依拠する理論や知識によって変わってきてしまう。そしてこれは科学的観察にもいえる。

中山2010『科学哲学』人文書院

アクター・ネットワーク理論

ブリュノ・ラトゥール「アフターネットワーク理論」

アクターネットワーク理論(Actor-network-theory)は、社会科学における理論的、方法論的アプローチのひとつである。社会的、自然的世界のあらゆるもの(アクター)を絶えず変化する作用(エージェンシー)のネットワークの結節点として扱う点に特徴がある。
ラトゥール(Bruno Latour)は、1947年フランス東部ブルゴーニュ地方に生ま

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文化生態学

文化生態学の課題は、人間社会の環境への対応(adjustment)がどのような行動様式を必要とするのか、あるいは可能な行動パターンをどの程度制約するのかをみきわめることである(後藤2006)。

スチュワードの定義
文化生態学は一社会が環境に適応(adaptation)する過程について研究する学問であり、その課題は、文化的適応が進化的な社会的変形(social transformations)を促

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空間分析

キーワード:居住形態、景観考古学、社会集団、領域

空間分析は、考古学的手法のなかで主要な役割を占める分析で、土器編年の時空間的体系化(広域的な編年表作成)や、発掘調査における位置情報の記録、遺跡地名表や、分布図作成もこれにあたる(小林2006)。
先史学におけるセトルメント(日本における「集落論」)の研究において基底の手法となっている(小林2006)。
空間分析は、巨視的な分析と、微視的な分析に

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水中考古

「水中考古」は中国において名付けられた考古学の一分野である。湧水を視点に縄文時代中期の集落論を論じた江坂(1944)の論文が国内では先駆けとなる。その学史については、坂詰(1988)に詳しい。
特徴として、ダイバーが必要となること、長時間滞在できないというデメリットがあるが、地上では分解されてしまう炭化物などの有機物が良好に残存している可能性が高いというメリットがあるという。

・江坂輝彌1944

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実験考古学

静的な過去の遺物や遺跡を素材に、実験的研究によって、動的な過去の人間活動の復元を試みたり、一方で考古資料の被った人的・自然的影響過程を検証しようというのが今日の実験考古学である。
ジョン・イエーレンは今日の実験考古学の方向性を、①考古学的遺物や活動の復元研究、②既存のデータや結果を応用した仮説検証研究、③遺跡形成や破壊過程についての研究、④民族考古学的研究、に整理している。
従前はこのようにしたら

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変形論

概要
石器のライフ・ヒストリーの各段階で石器は剥離によってさまざまに変形される。こうした石器の変形をリダクション(reduction)とよんでいる。個別石器が刃部再生などで変形する過程を扱う研究と、石器消費過程(コア・リダクション)から石材採取戦略・石器デザイン・移動戦略などを探る研究とに大きく二分される。

研究小史
石器の変形過程についていち早くこれを資料で提示したのはジョージ・フリソンである

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進化生態学

キーワード:最適捕食戦略

主にアメリカ人類学(先史学)において、進化(行動)生態学は解釈学的基底として大きな潮流を形成しつつある。

生物の生態や行動を、進化の結果として形成され維持されてきた秩序であると考え、その過程における自然淘汰(とうた)の働き方を考察することで解明しようとする学問。生物が、とりうる挙動(戦略)のなかで、繁殖の成功度をほぼ最大にするものを実際に採用している、と考える適応戦略

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