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理論・方法

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日本旧石器学会第17回研究発表 閉会のことば

〈日本旧石器学会第17回研究発表 〉
日程:2019年6月29日・30日
会場:大正大学巣鴨キャンパス

2日目パネルディスカッションの後、阿子島香氏による閉会の言葉である。

 1980年代の埋蔵文化財の保護体制と資料が充実してきた安斎先生のいう資料の蓄積期にパラダイム転換を強く主張した。80年代〜90年代になり資料が蓄積してくると、今度は旧来考えていた強固な理論考古学の方法論の枠組みの中に入れ

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理論考古学

 ここでは、安斎正人2004『理論考古学入門』柏書房の概要を取り上げる。

理論考古学とは
 安斎正人氏は「理論考古学とは、これまでの思考の枠組みに縛られない、まったく"新しい考古学"創造の可能性を探るための、考古学における〈理論と実践の関係〉についての理論的考察である"。」という。

理論考古学の歩み
 理論考古学の画期となったのは、1960〜70年代のアメリカ考古学の生態学的方法をとるルイス・

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過剰さの算出

 バタイユやボードリヤールのいう「過剰さ」を計量的に捉えるにはどうすれば良いのだろうか。過剰さとは「有用性に対する非有用性の度合い」を指す。
 ここでは、この場合の有用性を「実利的に必要最低限の機能性」とする。「機能性」も非常に難しい概念である。例えば、ナイフで肉を切る機能性は切れ味を追求し過ぎて困ることはない。有用性という語の基準をどこに置くのかは難しい。そのため、ここでは仮に必要最低限の機能性

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濫費の肯定

濫費の肯定

ギズモ(ガジェット)の追求

 ボードリヤールは、現代社会が強力なテクノロジーを追求し、それがますますギズモへの執着を促しているという。例えば、最新のソフトエアを走らせるのにはすぐにパワーが足りなくなるパソコンなどがそれである。

社会的な浪費行動 

 こうしたギズモの追求は個人的なレベルに限らないと言う。現代社会最大の浪費は、最新の軍事テクノロジーにかかる出費であり、というのも軍事的な物の生存

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SF的構想力

 歴史を研究する者はしばしば過去を知ることで未来に起こることを予測することができると考えている。しかし、実際に未来に貢献できるのは過去に起こった出来事と類似した出来事が現在に起こりそうな時だけだ。過去をいくら探求しても過去と現在にない事柄や概念は論理的に検討しようがないし、予測のしようがない。
 そこで、現在の探求から仮説的な未来を設定し、そこで立ちはだかるであろう問いを過去に遡って研究するとした

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文化史的アプローチ

文化史的アプローチとは、歴史民族学、構造人類学などで著名な方法で、例えば、世界規模で異なる民族間にみられる神話などの共通性について、これを人々が移動した結果だとする考え方である。これは20世紀で最もポピュラーな方法であった。
しかし、現在では、アフリカを起源として6万年以前には世界のほどんどの地域への拡散が完了していたため、それとともに民族成立以前に共通した神話が広がっていたと考えられており、現在

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小林行雄の様式論

「様式」の概念は、小林行雄によって弥生土器の時期差・地域差を求めるために考え出された考古資料の分類概念である。

方法
小林は、弥生土器を形式(用途の差異)、型式(その形の変化)と定義し、弥生土器の研究においては、形式による手法の差が激しいことから、形式ごとの型式の変化を形式間における時間的一括性を様式として捉えた。
例えば「壺の形式に属するA型式と、甕の形式に属するB型式が同時に存在していたこと

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文献目録

坂詰(2008)は、過去の発掘調査報告書が現代の報告書と同じように扱われるため、考古学にとって文献目録は重要であると指摘している。
坂詰(2008)は、文献目録として古くは、中谷治宇ニ郎の『日本石器時代文献目録』(1930)に始まり、後藤守一『日本石器時代綜合文献目録』(1958)、斎藤忠『日本古墳文化資料綜覧』(1952・1953・1956)続編(1985・88)など歴代の考古学者もその方面の必

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考古資料の形成過程論

M.B.Schiffer(マイケル・シファー)らは、考古学の資料は、過去の人間行動がそのまま化石化したものではなく、文化的形成過程と自然的形成過程によって常にゆがめられていると指摘した。これまで素朴に受け入れられてきた過去に機能していた状態やその瞬間をとどめているとする考えを「ポンペイ前提」として批判した。

考古資料が形成される過程には、①相関(correlates) 、②文化的形成過程(cul

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実験

experiment

研究者の設定する人為的状況や、自然に生ずる状況を用いて、統制され、意図的なかたちで変数を分析していく調査方法(ギデンズ1999)。

アンソニー・ギデンズ1999『社会学』而立書房

理論考古学

安斎は「理論考古学とは、これまでの思考の枠組みに縛られない、まったく"新しい考古学"創造の可能性を探るための、考古学における〈理論と実践の関係〉についての理論的考察である"。」という。
理論考古学の画期となったのは、1960〜70年代のアメリカ考古学の生態学的方法をとるルイス・ビンフォードとその一党と、イギリス考古学の情報論的方法をとるデイヴィッド・クラークと若手研究者による「ニューアーケオロジー

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日本旧石器時代学会第17回 2日目ディスカッション

2019/6/30 〈日本旧石器学会第17回研究発表 〉2日目パネルディスカッションの文字起こし。

中尾先生→理論をなくして実践は盲目

溝口先生→理論と方法 理論的達成、学問の先端の認識の不在
研究史の理論的プラットフォームの不在

安斎先生→考古学ジャーナルの近藤義郎ラインに着目してきた。
クラークのイコノミックベーシス→1つの方向性を持った勉強会が身につくと感じる。私の経験から言うと勉強会

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科学的研究プログラム

イムレ・ラカトシュ「反証と科学的研究プログラムの方法論」より

「知的誠実さは、証明すること(あるいは「その確からしさを示すこと」)によって自分の立場をゆるぎないものにするとか確立しようとすることにあるのではない。知的誠実さとは、むしろ、どういう条件のもとでなら自分の立場を放棄するつもりであるかをはっきりさせることにあるのである。」(p.133)

l.ラカトシュ/A.マスグレーヴ著,1985『批

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