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JCQAコーヒー鑑定士その1「商品設計」

実技試験はないが、テキストを読み込んだだけでは到底立ち向かえない難易度の高い問題、これまでの実践と経験、発想力が問われる商品設計部門。最初にこの試験を受験したのは社会人2年目でしたが、問題用紙を開いて「わかるとこからやろう!」と意気込んで問題確認したら何一つわからず、ペンを持つ手がガタガタ震えたのを今でも覚えています笑 

本資格を取得するまで7回受験しましたが、」「どのような問題がでるのか」、「どういった方が受験すべきなのか」をお話します。

検定の概要と合格率

本資格は全日本コーヒー商工組合連合会が2003年に「正しい知識の普及と技術の向上」「生産と消費の促進・振興」を目的に立ち上げたもので、2021年2月時点で15,485名の合格者がいるようです。なお、1級資格は1,285名、さらにその上位にあたる鑑定士資格は3つの部門からなり、私の所有する商品設計マスターは85名、生豆鑑定マスターは108名、品質管理マスターは50名、3資格を所有しているのは40名となっております。2級試験では基礎的なコーヒーの知識についての筆記試験・実技試験が行われます

インストラクター2級試験の直近合格率・・・93%

インストラクター1級試験の直近合格率・・・31%

鑑定士資格の直近合格率・・・・・・・・・・4.3%

1級と2級に関する記事はこちらをご確認頂ければと存じます。​​

「商品設計」で求められるもの

この商品設計部門で求められるものは1級・2級の知識はもちろんのこと、コーヒー生豆をどう焙煎すれば、どういう特徴があり、ブレンドするとこのような特徴になり、粉砕度合いによっては特徴がかわり、こういった包材を使用することで保存性があり、使用するお客様にあわせて包材の種類を変更する・・・などなど生豆の段階から一般消費者から業務店等の最終ユーザーに向けて販売するにあたり、求められる風味や価格帯を頭の中でイメージして瞬時に具現化し、そのすべてに理由付けができる能力と経験が必要になります。試験ではテキストには載っていない事例に対しての問題解決策や、ブレンド提案を求められるので、その場の発想力と実務経験が必須です!

「どういった方が受験すべき?」

工場内勤務、商品開発担当者、品質管理担当者が受験すべきと思います。商品開発は同時に品質管理ができないといけないことから、商品設計部門では品質管理に近い出題もされます。工場内で製造に携わる方は問いの内容がわかりやすいかと思いますが、実務経験が無い方には非常に難しいです。また、実務経験があるといっても品質管理、焙煎による風味傾向、商品設計にもとめられるものはJCQAが考案した内容に沿って出題されるので、検定協会の教える品質管理や商品設計を理解していないと点数は取れません。私が受験した際はまだまだこういった実務についていなかったのでJCQAの考案するものごとの考え方を「へ~!こりゃすごい!」と吸収できましたが、もともと実務経験があることは「そんなのウチではやってねぇし!」と反発する方もいらっしゃいます。しかしながら過去7回も本試験を受験および講義をうけた私は無知でしたので、いずれの受講内容も新鮮で面白く、試験内容においても実用的でタメになるものばかりでしたので、本当にこの資格を取得してよかったと思います。コーヒーに関係する製品開発や品質管理、工場管理に従事している方にはお勧めしたい資格です。

どんな問題がでるの・・・?

ではどのような問題がでるかの1例を以下に。

問題

どうでしょうか・・・?意味わからなくないですか?笑 初めて受験した際はチンプンカーンなことしか記載できませんでしたが、この問題に対して私はこう答えました(この時に合格したので、恐らく大きくは間違ってません)

配合面に関して

原因:ブラジル4/5の配合率40%ということから、渋みの原因である未成熟果実の混入と、ベトナムロブスタの配合比25%ということからカネフォラ種渋みと後口の悪さが出ているものと思われる。

改善策(価格が大きくかわらない前提):原価は多少あがるが、現行の配合比では風味の改善は難しいため、商品の裏面表記が変わらない程度に配合変更を行う。最もの渋みと後味の悪さの原因と考えられるベトナムロブを25%➡10%に変更し、残る15%をブラジルに変更。さらにブラジルに含まれる未成熟果実の混入問題を避けるために4/5規格から欠点の許容数が4/5規格の1/9になるNo,2に変更する。

この問題は「小売り向け商品」であることから、原価を大きく上げることができない、また裏面表記は配合比の多い順番から記載しなければならないため、現行の記載順(ブラジル、コロンビア、ベトナム(その他))を変更することができない&小売り商品ということで資材を大量に印刷している可能性も考慮し、裏面表記内容を変えない程度で変更するという2つの要因に気をつけながら、回答しました。

粉砕面に関して

原因:フラットカッターで中細挽きという現状、フラットカッター使用時は微粉が発生するため、微粉が後口の悪さに寄与しているものと考えられる。

改善案:粒度の安定性を高める必要があるので、フラットカッターからロールグラインダーに変更することで、粒度の安定性を高める。また歯の組み合わせを縦歯と縦歯にすることで、後口のキレを良くするための粉砕を行う。

フラットカッターは業務用でも使用できるミルですが、大量に粉砕するとなると、ロールグラインダーに比べるとどうしても熱が発生しやすく、微粉の発生があります。この問題を解決するためにより工業的で安定した粉砕のできるロールグラインダーを使用することを選択しました。(グラインダーの変更によるコストアップ等で不正解をくらうことはおそらくないです)

焙煎面に関して

原因:半熱風焙煎機で長時間焙煎では、味わいがマイルドになるため後口のキレやメリハリのある味わいにはならない。

解決策:焙煎機を半熱風式から熱風式に変更し、さらに焙煎時間を短時間に変更することで、現行の味わいよりメリハリの効いた後切れの良いコーヒーすることができる。

グラフ記入:現行の焙煎時間より、短時間の温度プロファイルを記載する。

注釈:焙煎時間が短いとメリハリのある酸味の出やすい味わい、長いとマイルドで後口に余韻のある味わいになりやすい。焙煎機は熱風式焙煎機のほうが、短時間で焙煎が完了するため、よりメリハリの効いた抽出効率の高い焙煎ができる、半熱風焙煎機では熱風式にくらべると時間がかかるが、マイルドな味わいに仕上げやすいというのが事前の講習でも説明されています。

終わりに

1問解説するだけで結構時間を要したので、他の例題を解説するのはヤめておきますが、このレベルの問題がガンガンでてきます。記載した例題は製造面での問題でしたが、公正取引競争規約に則った表示問題や、食品表示法に関する問題もでてくるので、はばひろ~くコーヒーに興味を持てる方でないと合格は難しいです。私は7回も受験しているのでその間に得た知識と経験、過去と似たような問題がでたことによるラッキーで合格しましたが、本当に難しい試験でした。興味ある方は是非!(といっても1級合格が大前提ですが・・・。)

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