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はじまりの言葉(再)



コカ•コーラ瓶のことを思った

脚を悪くしていた彼女は棺の底に手を付き

上半身を持ち上げた

斧で脚を切断されたのかと思う声をあげたが

空が頭の上に落ちてきたようだった

遠くで古い歌を口ずさむ声も聞こえた

光がぬかるみと喚いたのだ



天使が訪ねてくる夢を見ていた

左脚が麻痺するころ

逃げ出したい夜もあっただろう?

と聞かれた。

外で青白い光がすごくすごく閃いた

わたしはわたしをわすれてから夢の中へ

偽アカシアの木にきつく巻きついている大蛇

ねじれた夜を這いながらここまで来た


からからに乾いたしにぞこないの青い彼女に

天使がコカ•コーラを流し込む

よく見れば薄くぼろぼろの頼りない天使だ

なぜ天使なのかは頭で判断できた



無闇に接触するから痛い

傷の位置を知りしっかり抱きしめてあげないと

互いに見えない傷がたくさんついてる



天使の割にいちいち語るものだ



2本めのコカ•コーラが流し込まれ

悲惨な時代を懐かしむ感情と神があらわれ

棺の外側へ両足を置いた彼女、わたし



すべてが透明で明快に見え喚く光で

天使やら神やらがテーブルを囲み

お喋りを楽しんでいた



棺へ手招きをしたしにぞこないの青





ばたん!
ごうごうぼろぼろ。
ばたばたばた。




テーブルの上、
3本目のコカ•コーラを飲みながら
棺から聞こえる祭り囃子みたいな赤い音頭を
楽しみながら脚にキスをして再び歩き出すわたし。




「ところであんたら、どこの惑星から来たの?」









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