
【書籍紹介】「ドリルを売るには穴を売れ」佐藤義典 著
動画版は、こちら。
この数週間、マーケティング初学者向けのお勧め本について、色々とリサーチをしています。その中で、複数の方が「ドリルを売るには穴を売れ」を勧めていたので、早速、読んでみました。
まえがきにて、本書を執筆するに至った背景が以下の通り語られています。
「マーケティングの基礎をわかりやすく説明している、良い本はありませんか?」
これは経営コンサルタントの筆者が、お客さまから非常によく聞かれる質問だ。部下に読ませたい営業部長さん、全社内にマーケティングを浸透させたい経営者の方など、このようなニーズは非常に強いと感じる。
それに対して、これまでは「読みやすさではこの本、事例ではこの本、理論ではこの本」と別々にご紹介してきた。すると次の質問は「1冊選ぶとしたらどれですか?」となる。そこで答えに詰まってしまうのだ。
それならば、自分で書こうと本書が生まれたとのこと。
確かに、厳選されたマーケティング理論やフレームワークが、基礎的な説明とセットで小説風に仕立てたケーススタディの形で紹介されており、初学者でも理解しやすい。かつ、最低限必要なマーケティング知識が得られる有益な本であるとの感想を持ちました。
ケーススタディは、マーケティング初心者の主人公の女性が、熟練の上司と、敏腕コンサルタントに助けられながら、不振のイタリアンレストランを再生させるというストーリー。
必要なタイミングで上司やコンサルタントからアドバイスをもらいながらも、主人公が自らの頭で考え抜き、行動を重ねていった結果、成功を手にするという構成。
苦労して作り上げた事業再生の企画書が、最後、見事に社長に承認され、敵対して来た現シェフからも認められ協力が得られたシーンでは、思わずめがしらが熱くなりました。
厳選の上、紹介されたマーケティング理論及びフレームワークは以下の通り。
マーケティング脳を鍛える
あなたは何を売っているのか?<ベネフィット>
誰があなたの商品を買ってくれるのか?<セグメンテーションとターゲット>
あなたの商品でなければならない理由をつくる<差別化>
どのようにして価値を届けるか?<4P>
1.マーケティング脳を鍛える
マーケティングとは、机上で行う崇高な学問ではなく、日々の生活者としての様々な意思決定の裏側には必ずマーケティングが存在している。「買い手の反対側には必ず売り手がいる」。
従って、自身が日常の中で何か商品を購入したり、サービス提供を受けた際に、「なぜ、自分はこのプロダクトを選んだのか?」「その裏側には、どんなマーケティングが仕掛けられているのか?」。これを考え続けることで「マーケティング脳」が鍛えられる。
2.あなたは何を売っているのか?<ベネフィット>
ベネフィットこそ、マーケティングにとって最も重要であり、すべての起点となる。
ベネフィットとは、「顧客にとっての価値」だ。あなたが工具のドリルを売っているとする。あなたにとっての売り物はドリルだが、顧客にとっては、ドリル自体ではなくドリルが開ける穴に価値があるのだ。この穴がベネフィットということになる。
顧客に価値を提供してお金を頂くことがマーケティング。わかりやすく説明すると、以下の3点。
顧客にとっての価値を高める
顧客が買うための手間、時間、エネルギーを減らす
値下げをするための努力をする
価値の源は以下の人間の三大欲求。これの、いずれか、あるいは複数にミートさせる。
自己欲求:他人とは無関係に、自分の中で完結する。成長や承認に対する欲求。
社会欲求:他人との関係においてよく思われたい。他人に自慢したい、ちやほやされたい、もてたい等。
生存欲求:生き続けたい、肉体的な快楽。睡眠欲、食欲、性欲、金銭欲等。
これらの欲求を満たすために、ベネフィットは以下の2つに大別される。
機能的ベネフィット
感情的ベネフィット
3.誰があなたの商品を買ってくれるのか?<セグメンテーションとターゲット>
万人が等しく価値を感じるベネフィットは存在しない。属性や価値軸で市場を分類し(セグメンテーション)、自分たちが価値提供を行う相手(ターゲット)を定めることが重要。
ターゲットは、主に下記3点を考慮して選定する。
市場は十分に大きいか?
競合に対し、自社の強みは活きるのか?
切実にその商品やサービスを必要としているか?
4.あなたの商品でなければならない理由をつくる<差別化>
競合にはない高い価値を提供し、自社の商品やサービスを選んでもらうことが差別化。
差別化軸は以下の3点。
手軽軸:一定レベルの品質のものを安く、便利に提供する。
商品軸:商品やサービスの質に徹底的にこだわる。
密着軸:顧客に寄り添って、徹底的に顧客のニーズに応える。
5.どのようにして価値を届けるか?<4P>
顧客に価値を提供し対価をいただく為のフレームワーク:4P。
Product(商品・サービス)
Promotion(広告・販促)
Place(流通チャンネル)
Price(価格)
広告・販促で価値を伝え、流通チャンネルで価値を届け、商品・サービスが価値を実現し、価格で対価を得る。
提供する価値、ターゲット顧客、差別化戦略、4Pをすべて整合させて、一貫性を持たせることが重要であり、マーケターの腕の見せどころ。
以上の理論及びフレームワークが簡潔に説明され、各章ごとにイタリアンレストラン再生物語に落とし込まれる形で、理論が腹落ちしやすい工夫がなされています。
これであれば、初学者でも挫折せずに最後まで読み切れるのではないでしょうか?
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