【Whiskey Lovers】ザ・マッカラン シェリーオーク12年(The MACALLAN SHERRY OAK 12 YEARS OLD)編
世の中には、一言で終われない事だって存在する。丁寧な無駄にこそ遊び心を込めたい。
小瓶に詰められたウイスキーを渡された僕は、それが何かを聞くまでもなくマスター・オブ・ウイスキーを目指す店主のちひろにこう言われた。
「マッカランは始まりから終わりまで上品な印象です。家で時間と共に味わってみると良いと思います」
「マッカランと夜の梅」
思わず口をついて出たが、それをちひろが知る由もなく、当然知らなくても良いことだった。ただ僕にとってはとても重要で、その一端に触れるのが楽しみでしかなかった。
大事な人やモノがそれぞれに違うように存在するのは、それを理解する過程においてお互いに信頼関係を築いていくからだ。一瞬で関係など人間は築けない。時間をかけていこう。焦る必要はない。
ああ、始まりから終わりまで楽しめそうだと僕は、何も告げずに素直に帰ることにした。
このマッカランをとらやの羊羮「夜の梅」と合わせて紹介したのが、作家の開高健(1930─1989)だ。
スコットランドでマッカランに出会った開高健は、すくなくとも、酒と女でちびた私の丸い鼻にはピタッときた。私は興奮したナ。と書籍に残している。
僕は、開高健が残してきた言葉が好きだ。最初は、心に引っ掛かるその言葉達が好きだったのだが、純文学に対する姿勢や、それを追い求める行動力。生きるに必要なものを描写する表現力。そのどれもが、まだ熱を帯びたままで残っている。
僕は、文学から開高健を知ったが、開高健の始まりは、サントリーの前身でもある壽屋の宣伝部にてのコピーライターからである。僕は、今年初めに茅ヶ崎での文学イベントに参加し、そこで、純文学を描けずにいたスランプの時に、ノンフィクションとなるルポタージュを書き始めたことを知る。
大きな挫折や苦悩の中にいても、純文学を求めることを諦めなかった開高健は、ベトナム戦争へ新聞社の臨時特派員として同行し「輝ける闇」という、純文学を書き下ろす。
純文学を書けなかった時代、東京オリンピックを目前とした、生の都会を映す「ずばり東京」というルポルタージュを書いていた。これがとても面白いのだ。僕は、スランプという時期にそれを覆い隠すように軽妙にそして、ユーモラスに描くその文体に、作家のその苦悩の背景を微塵も出さない二面性に物凄く惹かれたのだ。
残してくれているその言葉達にも、その二面性が隠されている気がして僕を離さない。
「悠々として急げ」
「漂えど沈まず」
小説のタイトルでは、
「輝ける闇」
「片隅の迷路」
「歩く影たち」
これらは、逆説を言いながら本質を掴まえる表裏一体が存在していることを伝えてくれていると思っている。やはり、誰でも悩んで良いんだと、言われている気がしてならない。
生き方や、お酒、女性、数えきれない言葉を残している。お酒でいうならば今後いつか書きたいトリスウイスキーのその名コピーだ。
ウイスキーそのものについても、言葉を残している。
ウィスキーは人を沈思させ
コニャックは人を華やがせ
ぶどう酒は人をおしゃべりにさせる
こういうことに思いを馳せて飲むマッカランは、僕にとって沈思させるには充分で、自分の中にある攻撃性を消してくれ、調和の空気になる。飲み終わりにくる暖かさが、時間という距離を近付けてくれてなんだか照れ臭く感じた。まとめは、開高健におまかせする。
しかしマッカランは明らかに法灯を守って、シェリ-酒の樽でウィスキ-のつくり方を徹底的に
まじめに守って寝かせている---と、わたしは見た。
世の中にはまだ、あっぱれな奴がいる---と、わたしは感心したもんだ。
同じ時代に生きてはいなかったが、マッカランが運んできた思考は、良い時間だった。意図せず始めた1人で飲むウイスキーは、始めから終わりまで上品であったかは、わからない。
だけど、開高健が残した本質は自分が追うべきテーマだと認識した夜だった。この言葉達が本当の意味で開高健が作り出したのかは知らない。だけど、開高健が穿った言葉だとして僕は、受け取った。本当の意味は、人によって変化するのが当然だ。
ここまで書いて本当の意味で言いたいことがある。
開高健(カイコウ タケシ)
開高健(カイコウ ケン)
読み方は、どちらも正しいのだ。本人も両方使用しているのだから。
こんな風に歴史に名前を残すやり方ありますか?カッコよすぎだろう。
名前なんてどうでもいい。
「ただ書き続けろ」と言ってるよ絶対。
なんのはなしですか
ウイスキーは、自己対話も出来ると知った夜。
ちひろがくれたマッカランは、僕にとって重要なお酒となり想いは時を超えて対話出来ると感じた。
いつか、「マッカランと夜の梅」ならぬ、「マッカランと夜の蝶そして僕」みたいなのを書きたいわ。
「人間」ていいナ で結びますか。
この街が楽しくなるのにやらない理由がない。
ぜひ、ご一緒しませんか。
著 コニシ 木の子
監修 ちひろ
神奈川県伊勢原市沼目3-1-45
C'est la vie.(セラヴィ)
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私と開高健は、こちら
自分に何が書けるか、何を求めているか、探している途中ですが、サポートいただいたお気持ちは、忘れずに活かしたいと思っています。