その物語には、裏がある。この道を名付ける義務が私に在る。
私は、先日とても良い出会いをした。それは言うなれば文学中年男子が望む出会い方としては、とても物語的な出会いだったと思う。
だがしかし、私という者の本質はいったいどこにあるのかを、問わねばならないのだ。
実録~40男の不惑編~
そう、実は私は約束の5時間前に横浜に着いていた。なぜ5時間前か。それは5という素数が好きだから。という好きな素数を伝え合う、どこかの素敵な記事のやり取りに嫉妬したワケではない。
横浜の港の見える丘公園には、神奈川近代文学館が在るべくして存在しているのだ。私は、気分を盛り上げるため、また落ち着かせるための相反する気持ちを同居させながらそこを目指した。
が、自分の意志とは裏腹になぜか一駅飛び越し関内で降りる。無意識だ。私は、降り立った関内で横浜スタジアムを背中にし、まず伊勢佐木町方面に歩いた。無意識だ。
なぜ私は、そちらへ歩いているのか。
私は、過去の自分へそれを問い質す。
そう、伊勢佐木町は知る人ぞ知る。KANRAKUGAI(歓楽街)なのだ。私がここでいうKANRAKUGAIは正式には、伊勢佐木町の隣に存在する曙町、黄金町エリアの事を指す。
上記の名前を一度検索してから、今後の私の心境に寄り添いください。
私は、なぜ一目散にソコを目指しているのかは、全く説明出来ない。だが、世の中には自分の行動を説明出来ない事など山ほど存在するのだ。それが積み重なっての物語のはずだ。
私は、自分を落ち着かせるために考えた。
「私が通っていた頃と、現在の街の変遷を知るのは今後の糧になる」
尤もらしい正論が浮かび、私は、気分を盛り上げるため、また落ち着かせるための相反する気持ちを同居させながらそこを目指した。
まだ時間はある。やはり早めの行動は大事だと深く納得しながら私は、KANRAKUGAIを目指した。
金銭的に今日は無理だと納得しながらも私は、かつて私の仲間達と共に労働の対価を注ぎ込んだKANRAKUGAIを目指した。ソコはお昼にも関わらず、いまだに生きていた。
私は、私の興味をそそるお店の名前を何軒かメモし、いつかの為にと恋慕しながら歩いた。KANRAKUGAIは、お昼になるとお客が入れ替わる時間になる。ちょうど激戦を終えた勇者達が、少し寂しげな背中を見せながら歩く時間なのだ。
私は、何人かの勇者と目を合わせ、見知らぬアイコンタクトを交わし、精一杯讃えた。ふと一軒のビルに目がいく。私達の青春のビルだ。
そのビル全てが芳しい色気で充たされているビルだ。私は1人の友人の言葉を思い出した。
「なぁ、このビル俺達が建てたと言っても過言じゃないよな」
私は、この台詞に勝てる名言を未だに発していない。彼は給料のほとんどをこのビルに注いでいた。
現在家庭を持ち、夢の一軒家を建築中の彼の家族にお伝えしたい。
「本当ならビル建築出来ましたよ」と。
1つの思い出に触れ、また新たな思い出が出来るように、私はようやくKANRAKUGAIに背を向け、港の見える丘公園を目指す事にした。
12時に到着した筈なのに、なぜだか関内駅へ戻って来たのが13時30分を経過していた。私は、私の90分をどこに置いてきたのか探す事をやめた。
伊勢佐木町とは、全く真反対の目的地へ向かうにはお洒落な町を通らなければならない。そう。MOTOMACHI (元町)だ。私は、気分を盛り上げるため、また落ち着かせるための相反する気持ちを同居させながらそこを目指した。
私は、なぜだかKANRAKUGAIからMOTOMACHI へ訪れ闊歩している自分を見せびらかしたくなり歩幅を少し大きく歩いた。
人間とは環境に左右される生き物だ。
さっきまでの半歩の歩幅が、こんなに大きくなるなんて。と感じながらMOTOMACHIを通り抜けた。
通り抜けた先にあるのが、港の見える丘公園である。
私は、港の見える丘公園を散策し、神奈川近代文学館にて整えるまでの間、少し景色を見ていた。
この日はとても寒かったのだが公園では、コスプレしたキレイな女性の撮影会が行われていたり、カップルがデートしていたりした。
「キレイだねぇ」
女性が上目遣いで男性に話しているが、心の中では「寒いのにこんな風強いところ連れてくるなよ」と思っていて欲しいし、
「楽しいねぇ」
と、応じている男性が心の中では、「KANRAKUGAIの方が楽しいよ。こっから近いしさ」と思っていて欲しいなぁと感じながら、2人の幸せを願った。
そして文学館(BUNGAKUKAN)で、私は夢を見て文豪達に想いを馳せた。手書きの原稿など、それはそれは痺れた。
帰り道、私はソコに地図を見た。
17時の待ち合わせまで、また歩くとしよう。
私は、気分を盛り上げるため、また落ち着かせるための相反する気持ちを同居させながらそこを目指した。
私は、BUNGAKUKANからMOTOMACHI そしてKANRAKUGAI。KANRAKUGAI からMOTOMACHI そしてBUNGAKUKANへのサイクルを振り返り、こう記そうと思うのです。
それは、気分を盛り上げるため、また落ち着かせるための相反する気持ちを同居させながらそこを目指しながら進むべき道
なんのはなしですか
娯楽の道しるべと。
連載コラム「木ノ子のこの子」vol.23
著コニシ 木ノ子(この道進む)