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「労働組合に捧ぐ」~元人事部長からのエール~ (2)

こんにちは。
モチベーションLAB所長の吉川和利です。

早速「労働組合に捧ぐ」の第2話を始めたいと思います。
組合に偏見を抱いていた私ですが、ひょんなことから組合の役員になることになりました。


しかし組合役員になる

入社から2年が経過した時、同郷(東大阪市)・同窓(関西大学)の先輩であるOさんから組合役員への誘いを受けました。

当時、Oさんは組合の専従役員で、書記次長を務めておられたと思います。

前記の通り、組合に対するイメージは最悪でしたから、最初は丁重にお断りしたのですが、何度も熱心に誘って下さるので最後はその熱意に負けてお受けすることとしました。

私の役職は「中央委員会委員(中央委員)」で、立候補の結果、無事に信任されその年の秋に就任しました。

当時の労働組合の組織とは、中央執行委員会>エリア委員会>支部>分会という組織構成だったと記憶しています。

そして、中央執行委員会のメンバーと、エリア委員会の役員とが中央委員会を構成し、ここで様々な情報共有や意見交換を行います。

私が就任した中央委員会委員とは、執行部にもエリア委員会にも属しない立場で、つまりエリアや支部の組合員を代表することなく、自分の価値観で自由に意見を言える立場でした。

この役職は、ある意味で気軽だったし、中央執行部に対して直接意見が言えるのでとてもやりがいがありました。


UI戦略

私が役員になってから少し時間が経ち、Oさんが副委員長になられた時、組合は様々なUI戦略(Union Identity ・・・CI=corporate identityをもじった造語です)を展開していくこととなります。

組合も、組合員から見た組織に対するイメージは、決してポジティブなものではないというのを分かっていたようです。
また、若い役員や女性役員なども増やしていきたいと考えていたのでしょう。

まず、組織の名称を「近畿コカ・コーラグループユニオン」と変更しました。
グループ会社にも労働組合があり、それを束ねる役割を踏まえてのことでした。

ちなみに、東京ディズニーリゾートを運営する「株式会社オリエンタルランド」には、OFS(オフス)という名称の企業内労働組合があります。
Oriental-Land Friendship Societyの頭文字を取った名称ですが「さすがオリエンタルランドさん!」と感じ入ったものです。

ここまでのフランクな名称ではありませんが、世間によくある「~労働組合連合会」とするより、はるかにフレンドリーな名称だったと思います。

そして、そのキャッチフレーズを「おもろいユニオン」と名付けました。
これはイメージを明るく朗らかで楽しいものに変えていくために、そして関西に本拠を置く会社の労働組合として、これ以上ないピッタリの名称だったと思います。

さらに「こぶし」という名の機関紙もその名前がいかにも暴力的だということで、「WAHAHA(ワハハ)」と変えたり、機関紙ではなく情報誌としてみたり、書記長という職名も古めかしいということで事務局長に変更してみたり…

「名は体を表す」という格言がありますが、まさしく名前を変えることで体質を変え、イメージも変え、組合役員の意識も変えることに成功した事例だと思います。

そして、先般のUI戦略が功を奏したのか、この頃から組合役員の若返りが進展したり、女性役員が増加したり、中央委員会の雰囲気もかなり変わってきました。


組合役員として学んだこと

私の組合役員としての任期は最終的に5年間となりましたが、この期間に本当にたくさんのことを学ばせて頂きました。
それは私の今の仕事をするにあたって、この時の経験が大きく生きていることは間違いありません。

まず、労働協約によって会社の経営情報は常に開示されるので、会社全体の動きがよく分かりました。

人事制度改定の際には「労使対等の原則」に従い必ず事前に会社から相談があり、これは中央委員会でしっかり確認する機会が与えられます。異議があれば会社に修正を要求することもあります。
このような機会で、制度というものが何を目的にどういうプロセスで構築されていくかをしっかり学ぶことが出来ました。

春闘や賞与交渉の際には、会社の損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の中身を説明してもらえるので、これらの財務諸表の見方や分析の仕方も学びました。

中央委員会のメンバーによるオフ会(つまり飲み会)もよく開催されましたし、私は役員の中では最年少グループに属していたこともあり、年配の役員さんには色々と可愛がっていただきました。これらを通じて、社内に多くの人脈を築くこともできました。

そして、労働組合は、業種や業態の垣根を超えて労働組合同士での交流が盛んです。Oさんに連れられて、その労組同士の会合や勉強会などにも参加させて頂いたものでした。

こういった経緯で、とにかく月に一度開催される中央委員会が楽しみでした。


印象深い議論

ここで、中央委員会での印象深い議論を2つ紹介しようと思います。

|評価結果が思わぬ動機づけに

中央委員会では会社の制度に関しての喧々諤々の議論がありました。
特に評価制度の議論は盛り上がったと思います。

  • 評価が公平公正に行われているとは思えない!

  • 評価の際の面談などしてもらったことがない

  • 評価の項目や基準が分からない!

  • 結果のフィードバックもない!

など、評価制度の運用における具体的な不満が相次いで述べられ、この制度の不備が浮かび上がってきます。
確かに営業所に勤務した2年間では、評価に関する説明やフィードバックなど皆無でした。

そして、評価の話となると、営業部門出身のTさんは人一倍張り切って議論をリードしていました。

このTさんは、
「昨年よりも営業成績を上げたのに評価が下がった。上司にその説明を求めても納得できる明快な説明はなく、人事に聞いてくれの一点張りだった」
「これは上司のスキルも問題だが、こんな上司でもうまく運用できる仕組みになっていない制度の問題でもある」
「ならば組合の役員として評価制度改定を会社に働きかけたい
という動機で組合役員に立候補した人です。

評価が下がるとモチベーションが下がるという一般的な考察がありますが、このTさんを見ていると、評価が下がったことが別の動機となることを証明していますね(笑)


|大激論が勉強会のきっかけに

ある発言が大激論に発展したこともありました。
賞与交渉の議論の時、執行部から「今期の利益予想」について説明があった時、製造部門出身の役員から「なぜ営業は儲かる商品を売らないのか。限界利益の薄い商品ばかり売るから会社の利益が下がるのではないか」との質問が出ました。

大雑把な言い方になりますが、炭酸系は限界利益が高く、お茶・コーヒー系の限界利益は低いのです。

ここで激昂したのが営業部門出身の役員でした。

「売りたい」と「売れる」とは全く異なる。
消費者が欲する商品のトレンドと製品別限界利益の高さとは反比例しているのが現状だ。
これは営業だけではどうしようもない。
マーケットで捌けない(消費者に買って頂けない)商品をお店に販売しても、お店で滞留するだけだ。それがCSと言えるか

と大声で反論したのです。

もちろん、その製造の方は返す言葉がありません。
「安易なことを言って申し訳ない」と謝罪されたのですが、この質問は1つの問題提起となりました。

市場の消費動向がしっかり共有されていないから、そういった発言に繋がるのだということで、市場全体のトレンドや競合の状況、営業部門がどのような戦略を立てているのかを中央委員会で説明する機会が生まれました。

この事例から、健全な意見交換や議論は誤解を解き、前向きな議論を生むということを学びました。
こういった「活きた議論の場」に籍を置けた事は、本当に良かったと思っています。

(つづく)

今回も最後までありがとうございました。
次回(エピソード3)もよろしくお願いいたします。


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