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『Sing in Sigh』創作ノート③ 他者と関わること、自分のなかの恥ずかしい自分と付き合うこと
本日いよいよ初日を迎える舞台「Sing in Sign」、おかげさまで初日の回は売り止めとのこと。明日の千秋楽を観劇&アフタートークする私も楽しみにしています。
本作では、耳の聞こえない方やLGBTの方など、一般にマイノリティとされる属性の人物を家族にもつ主人公を書いたのが、思えば私にとっては新鮮なことでした。
今までストレートプレイでは、わりとマイノリティ当事者の目線から作品を書くことが多かっ
『Sing in Sigh』創作ノート② 手話は言葉、日本語のためのツールじゃない。
『Sing in Sign』は、劇団campさんからの依頼で手話を使うことが劇中のストーリーに組み込まれているのですが、今回脚本を書いたことで、初めて知ったこと、気づかなかったけれど教えてもらったことが多々あります。
なかでも印象深かったのは「手話は福祉のツールではなく、言語である」ということです。日本語、英語、中国語、スペイン語その他もろもろ。世界には国や習俗が異なる色んな人々が生きていて、それ
『Sing in Sigh』創作ノート① 様々な人が自分らしい一歩を
2月15日(土)から16日(日)に、大阪の天王寺オーバルシアターにて上演される『Sing in Sigh』。
本作は、ドラァグクイーン、歌手、脚本家としてマルチに活躍中のエスムラルダさんと共作で脚本を書いた舞台なのですが、モスクワカヌ個人の振り返りを創作ノートとして書いてみたいと思います。
まず、『Sing in Sigh』のざっくりとしたあらすじは以下のとおり。
耳の聞こえない母が再婚
『鎌倉のマリ』創作ノート③ 死者の国を訪ねる言葉
本日初日を迎える『鎌倉のマリ』。
今生きている私が、死んだ人を思って書く文章は、死者へどのように伝わるのだろう、ということをふと思った。死んでいるのだから読めないし、伝わらない、というのがまあまっとうな考え方なんだろうけれど、私はいわゆる「まっとう」から外れた辺境の地の人間な気がするので、もうちょっと違う考え方を探ってみたい。
作家の小川洋子さんは「文章を書くということは、名前も顔もわからなく
鎌倉のマリ 創作ノート② どんな道のりであれ、自分1人の道
『鎌倉のマリ』の執筆のために、米原万里さんの著作をあらためて読み直した。米原万里さん自身のエッセイも小説も素晴らしいのだが、米原さんの妹さんによる著作「わが姉、米原万里」や、米原万里さんのホームページに載っている友人知人による米原万里エピソードの数々も、生前のエネルギッシュで血の通った彼女を偲ばせて、「偉くて頭のいい作家さん、通訳さん」という位置から、米原万里さんをぐっと私の身近に引き寄せてくれた
もっとみる「鎌倉のマリ」創作ノート① 偉くない「私」が一番自由
今週末に、私の書いた新作『鎌倉のマリ』が上演される。
この作品は、上演団体である鎌倉アクターズワークショップさんの企画している、鎌倉の場所、人、もの、歴史や物語にちなんだお話をベースにお芝居を創り上演していく「鎌倉歳時記 夢十夜」というシリーズの第一作目だ。
鎌倉という土地は日本の歴史の舞台として、それこそ有名どころな場所や文化遺産がゴロゴロしているし、鎌倉ゆかりの有名人にもことかかない。誰を、
創作ノート⑤誰かが見ているということ。「今すぐ現金、そんな時(中略)、テアトルエス!」
先日無事に千秋楽を迎えた「今すぐ現金、そんな時(中略)テアトルエス!」の創作ノートも今回がラストである。
せっかくなので、千秋楽を迎えた後でないと書きにくいことを書こうと思う。
この創作ノート②で、私は今回の脚本を構成する大きな要素として「オレオレ詐欺」を選んだきっかけについて紹介した。それは『人間の条件』という公演での、ある女性のフィールドワーク発表だったのだが、その発表をした人に創作ノートを
創作ノート④新境地は別世界ではなく。「今すぐ現金、そんな時(中略)、テアトルエス!」
執筆に行き詰まり召喚した黒川陽子ちゃんをカフェでの打ち合わせの後に自宅へ強制召喚し、チーズとめっちゃ辛いスナックをコーラで流し込みながら、今ある構想の問題だと思っている点を聞いてもらう。こうして人に「何に行き詰っているか」をはなすだけで、少しだけ鼻づまりもとい執筆行き詰まりが楽になって息がしやすくなる。
一人だけで着想から執筆、脱稿まで出来たらそりゃあカッコいいし、そうやって書き上げたた脚本も多く
創作ノート③召喚、黒川陽子。「今すぐ現金、そんな時(中略)テアトルエス!」
人物同士の知的な応酬が続くディスカッション劇、緻密なプロットで構成されたウェルメイドな脚本。そんな作家としての新境地を目指しながら、私は執筆に行き詰っていた。おおまかなプロットは出来たものの「今のままでは駄目だ」ということがはっきりしている。オチが弱い。が、何が正解なのか、ここからどうやって発展させればいいのか見当がつかない。いっそ今あるものを全て捨てて一から書き直そうかとも思ったが、締め切り的に
もっとみる創作ノート② オレオレ詐欺、「しない」と「してはいけない」の間の気まずい間について。「今すぐ現金、そんな時、(中略)テアトルエス!」
新作「今すぐ現金、そんな時、(中略)テアトルエス!」で書かれるのは、「オレオレ詐欺」という犯罪と、その中心、もしくは周辺にいる人物達だ。詐欺をしている人、詐欺師を捕まえようとする人、詐欺に手を染めようとする人。多かれ少なかれ全ての登場人物が「オレオレ詐欺」という犯罪に振り回されているので、そういう意味では本作のテーマは「オレオレ詐欺」という犯罪なのかもしれない。
ただ、実は一番最初に企画書を提出
創作ノート① 作家のチャレンジ「今すぐ現金、そんな時、(中略)テアトルエス!」
去年の夏頃から取り組んでいた新作「今すぐ現金、そんな時、(中略)テアトルエス!」が、1月23日に下北沢の「劇」小劇場で初日を迎えます。
単独作品では初めての下北沢デビューで、書き終わってから気が付いたのですが、モスクワカヌ劇作史上初の「歌も踊りもない長編」となった作品。書いている間に気が付かなかったんかい、という話ですが、全然気が付きませんでした。自分はそういう人間です、はい。
今年で劇作家