「小説・エッセイ」リスは木の実と次世代へ
今年も大勢の人間が、我々リスをジッと見つめ観察している。家を建て、自分達の幸せを掴むために多くの森の木を切りにやってきた彼ら。きっと、木の実を一生懸命に埋めている我々を嘲笑っているのだろう。その実を埋め掘り出さない事を面白おかしく思っているのだろう。しかし、我々リスはそんな彼らを気にも留めずせっせと木の実を地面に埋め続ける。
人間はこう考えるのだろう。『リスは、お馬鹿だから自分の埋めた木の実の事を忘れてしまうのだよ。でも、そこが可愛いよね。』と。
しかし、それはとんでもない思い違いだ。我々は『木の実を埋めているのではない。植えているのだ。』
植えた木の実は数十年の時を経て、やがて大木へと育ち、それはもう数えきれない程に多くの実をみのらせる事だろう。それを我々の子孫が喜び食べ、大地に感謝し、再び木の実を植え、次世代へと希望を託していく。こうして我々は、森と共に歩んできたのだ。
目先の利益に囚われない事だ人間。簡単に手の届く幸福の為に木を切るお前たちとは違うのだ。
自分を基準に、万能感に浸らない事だ人間。我々は、体こそ小さいが誇り高い生き物なのだ。他の種が、自分達より劣った存在だと錯覚するな人間。
笑われてもいい。可愛いなどと下等に見られてもいい。我々は、次世代の未来のために木の実を植え続けていくのだから。
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