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福島県への風評加害・情報災害問題

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情報災害としての福島県への風評被害問題および自主避難者問題について
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母子自主避難から考える 災害の政治利用

母子自主避難から考える 災害の政治利用

加藤文宏

災害の政治利用 能登半島地震が発生したのち、活動家や政治家が被災地に入り、救援や復旧の全体像をあきらかにしないまま、悲惨な状況だけを伝えた。その目的は、政府や自治体を批判するためだった。こうして拡散された情報が実態とかけ離れた虚像を生み、政府や自治体への不信感を国内に漂わせた。
 災害の政治利用だ。
 次なる大災害はもとより、発生が危惧される台湾有事でも同じ仕組みで政治的に策動する面々

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鴨下案件の背景と処理水放出以降の冷遇

鴨下案件の背景と処理水放出以降の冷遇

忘れられていた鴨下家を、処理水放出反対運動が表舞台に引っ張り出した。彼らの語りからある老人の逸話が消え、レジ袋で鼻血を受けて歩く子の逸話へ収斂していったのは、悲劇の原発避難民に求められたものの変化を象徴している。
悲劇の原発避難民であるのを強調し正当化しなければならなかった、鴨下家の事情と背景。悲劇の原発避難民を必要とした、反原発運動と報道。これらを整理しよう。

加藤文宏

処理水放出の以前と以

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フクシマ型PTSD命名の悪質性を問う ──辻内琢也・鴨下全生・早稲田大学・カトリック・三和書籍

フクシマ型PTSD命名の悪質性を問う ──辻内琢也・鴨下全生・早稲田大学・カトリック・三和書籍

加藤文宏

スティグマ化を狙った命名 早稲田大学人間科学部教授の辻内琢也氏が、「日本で起きている原発事故の問題が、決して福島県に留まった問題ではなく、日本全体の問題であり、さらには国際社会の問題」であるとして、ある種の精神的苦痛に『フクシマ型PTSD』なる命名をした。
 さらに『[意見書]フクシマ型PTSD “今やらねばならぬこと”』と題した書籍を2024年8月16日に三和書籍から刊行している。

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社会をけしかけた責任 早稲田大学とカトリック

社会をけしかけた責任 早稲田大学とカトリック

加藤文宏

「辻内琢也やカトリック中央協議会。こんなの許せるわけないだろ」という話を丁寧にしてみようと思う。彼らの居場所は、聖域ではない。

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 鴨下全生と辻内ゼミとカトリックに端を発する問題は、未だに解決の糸口さえ見えない。この三者は、あり得ない原発事故の被害を語るか、被害を誇大に吹聴したり社会に影響を与えたことで、福島県民と同地に関わる人々の暮らしを踏みつけ、当事者の悲鳴と批

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ナラティブで脅す人々を許してはいけない ──レジ袋鼻血から

ナラティブで脅す人々を許してはいけない ──レジ袋鼻血から

加藤文宏

はじめに鴨下全生氏の投稿が波紋を呼び、福島県民から批判の声があがった。出来事の詳細と課題は林智裕氏による記事に詳しく書かれているので、ぜひ読んでいただきたい。なお記事では、筆者の『鴨下家は福島を代表するのか 鼻血は何だったのか』が資料として紹介されている。

今回は、レジ袋に鼻血を受けて歩いたという逸話が生んだ「ナラティブ」について考える。ナラティブとは自らの体験を語ることや、こうして

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放射線デマの現在

放射線デマの現在

放射線を可視化するデマがなければ成り立たなかった反原発運動と、流言飛語の現在について。

加藤文宏

放射線デマとは何か この記事で扱う放射線デマは、福島第一原発事故にまつわる事実に反する扇動的で謀略的な宣伝だ。謀略的な宣伝と書くと組織が行うもののように思われるかもしれないが、個人がいいかげんな噂話を生み出したり拡散させる行為もあった。
 下掲のスクリーンショットは、Yahoo!知恵袋へ2011年

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鴨下家は福島を代表するのか 鼻血は何だったのか

鴨下家は福島を代表するのか 鼻血は何だったのか

・2024.9.2 21:50 赤坂プリンスホテル避難所の様子を伝える報道、広報等のスクリーンショットを追加。

加藤文宏

1 はじめに 鴨下全生氏がX/Twitterのアカウントから「レジ袋で鼻血を受けながら歩く子供 避難所でよくある光景」とポストしたのは記憶に新しい。ポストで示されたリンク先では、

と福島第一原発事故が発生した直後の避難所で経験したことを語っている。
 鼻から出血するほど被

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水耕栽培の成功を喜んでいた鴨下祐也氏が原発事故の被害者に転向した理由と騒動の発端

水耕栽培の成功を喜んでいた鴨下祐也氏が原発事故の被害者に転向した理由と騒動の発端

『当事者が語り部化してアンタッチャブルな存在になる』で鴨下家の自宅がALPS処理汚染水差止訴訟原告団事務局として使用されていたことについて書いた。
これら鴨下家にまつわる事情を会員限定記事で論考し明らかにする。

鴨下祐也氏は2012年2月に、いわき市で行っていた水耕栽培を土壌汚染の心配がないものと評価し、野菜の甘さに顔をほころばせる学生を見て「あの時、続けると言ってくれたことに感謝したい」と言っ

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当事者が語り部化してアンタッチャブルな存在になる

当事者が語り部化してアンタッチャブルな存在になる

加藤文宏

はじめに 学生で活動家の鴨下全生氏によって、有害なデマとして名高い原発事故にまつわる被曝と鼻血との関係が蒸し返された。しかも、レジ袋や洗面器に鼻血を受けざるを得ないほど出血した子供が、いつ、どこにいたのか問われても頑なに説明を拒み続けている。彼は他の話題でも、私は事実しか話していないと言いながら出来事を証拠立てる具体的な情報をまったく語らない。
 馬鹿げた話で、誰も真に受けないなら放置

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鼻血デマと公務員宿舎明け渡し裁判をまとめる

鼻血デマと公務員宿舎明け渡し裁判をまとめる

加藤文宏

当記事の内容

 原発事故にまつわる被曝で鼻血を流す人の噂は、2011年3月14日に『Yahoo!知恵袋』へ投稿されたものが初出と言ってよいだろう。この噂話は広がることなく消え、のちにツイッター上などでインフルエンサーが鼻血を話題にしたものの否定されて消えた。その後、5月19日発売の週刊文春5/26号の『肥田舜太郎 内部被曝患者6000人を診た医師が警告する』と題する記事が注目され、6

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放射線デマから外苑再開発デマへ この日本で何が行われたのか

放射線デマから外苑再開発デマへ この日本で何が行われたのか

加藤文宏

原発事故が発生した直後から、被災地は二度と人が暮らせない土地、鼻血、奇形児出産、がん発症と次から次へ嘘が事実のように語られ、デマが当事者を苦しめただけでなく、原発の全停止から再稼働を拒む心理的な要因になるなど日本中を混乱の渦に陥れた。

事故から10余年経過した2023年、日本イコモス国内委員会は神宮外苑に『17 世紀から続く東京における「庭園都市 パークシステム」の中核』と事実と異な

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精神勝利法、配信世代、みんなすごいキレイだよ!があきらかにしたバズり幻想について

精神勝利法、配信世代、みんなすごいキレイだよ!があきらかにしたバズり幻想について

私は原発事故後に首都圏から自主避難した母子の困窮問題に関わり、その後旧統一教会追及問題でも教団や信者、信仰を継承しなかった子弟から直接事情を聞いてきた。直近では、神宮外苑再開発反対運動のデマ体質を問うた。これらの活動から「扇動の循環構造」や、「虚像」を生み出す「メディア世論」の弊害を明らかにしてきたが、ある種の人たちが情報操作でいとも簡単に騙されて扇動の渦に飲み込まれるのが不思議でならなかった。

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モラル・パニック現象を操る人々

モラル・パニック現象を操る人々

ゲーム脳や携帯電話を巡る騒ぎを思い出そう。「モラル・パニック」によって世の中が流され、できごとの本質が忘れ去られただけでなく、新たな敵がつくられて社会が分断された。

加藤文宏

モラル・パニックとは何か