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CSのデータ活用を実現する5つのステップ

こんにちは。株式会社FaciloのCS Opsをやっております、諸岡(もろおか)と申します。現在、Gainsightの構築に奮闘中です。

今回は、CSのデータ活用とは何かを紐解きながら、活用を実現する5つのステップをまとめました。CS活動においてデータは非常に大切でありながら、活用までにどのようなことをすべきか、そもそもCSのデータ活用とは何かについて試行錯誤している方が多いと感じています。私もその一人です。

年末年始に時間があったので、考えたことをnoteに残しておこうと思い筆を執りました。CS Opsとしてデータ活用に挑戦する仲間が1人でも増えると嬉しいです。

前半はCS Opsを対象としたデータ活用をするための基盤構築に関するお話なので、"CSにおけるデータ活用とは何か"だけを知りたい方は、ステップ5.データを活用するをお読みください!


私が考えるCS Opsのミッションは、「木こりの斧を研ぐ」こと🌳🪓

『木こりのジレンマ』
旅人が森の中を歩いていると、汗を流しながら斧で木を切る木こりに出会います。夕方、同じ道を通るとまだ木こりは木を切っていました。よく見ると使っている斧がボロボロだったのです。旅人は「一旦手を止めて斧を研いだらどうですか?」と伝えます。すると木こりは「わかっちゃいるんだけど、木を切るのに忙しくてそれどころではないんだよ…」と返すのでした。

イソップ童話が出典らしい。

研ぎ師(CS Ops)が斧を研ぐことで、木こり(CS)が1日に切れる木の本数を多くする。
データ活用は、斧を研ぐ重要なミッションです!

データの活用までにすべきこと

"CSにおけるデータ活用とは何か"を考える前に、データを活用するまでのプロセスについて考える必要があります。その道のりは、おおまかに次の5つのステップで構成されています。

ステップ1. 全体設計を行う
ステップ2. データを蓄積する
ステップ3. データを統合する
ステップ4. データを可視化する
ステップ5. データを活用する

それぞれのステップについて掘り下げていきましょう。

(※ 本来は各ステップでnote1つ書けるくらいの多くの情報があるのですが、今回は分かりやすく説明するために簡潔な内容となっております。その点につきまして、ご理解いただければ幸いです。)

ステップ1. 全体設計を行う

全体設計とは、どのシステムにどのようなデータを蓄積していくのかをデザインすることです。では、CS活動で生まれるデータはどのようなものがあるでしょうか。イメージをあげてみます。

このように、フェーズごとにCSの顧客接点で生まれるデータは多く存在します。しかし、全てのデータが1つのシステムに蓄積されるわけではありません。次の画像のように、それぞれ異なるシステムにデータが蓄積されます。

SalesforceやHubSpotなどのCRM/SFAを利用した場合と、Gainsight・MagicSuccess・SuccessHubのようなカスタマーサクセスツールを利用した場合とで異なりますが、大まかに以下のようなイメージです。

これらのデータを可視化・活用していくとなると、次の画像のようにデータを統合する設計が必要になります。データ管理基盤を利用した場合と、カスタマーサクセスツールに直接連携した場合の2パターンを表してみました。

ざっくりとした説明になってしまいますが、このように、統合したデータを最終的にはカスタマーサクセスツールで活用するのか、カスタマーサクセスツールがなければBIやスプレッドシートに可視化するのか…目的に応じてグランドデザインを描きます。

どのようなデータをどこに蓄積すべきか、どのように統合して何で可視化・活用していくかをイメージさせておくと後の作業がスムーズになります。

ステップ2. データを蓄積する

全体設計がイメージできたら、可視化・活用したいデータをそれぞれのシステムに蓄積していきます。ここで2つ重要なポイントがあります。

1 - セールスと共通するデータは重複しないようにする
セールス活動で使用するデータ(例:契約情報・コンタクト情報・商談で得た顧客情報など)は、セールスと共通の定義で引き継ぐことが重要です。
再度CSで同じようなデータを作ってしまうと、データの矛盾や不整合が発生してしまうので、重複データは作らないように注意します。

Greenの部分は重複しやすい領域なので注意

2 - 手入力が必要なデータはOps主導で正しく蓄積できるようにする
CSMが入力しなければ蓄積できないデータ(例:フェーズやキーパーソンの情報、議事録など)は、Opsが主導して正しく管理・蓄積できるようにチームに働きかけます。一方で、自動計算や加工で取得できるデータについては、CSMに手入力させることを避け、可能な限り負担を軽減することが重要です。

データは目的を持って蓄積しないと、後々ノイズとなる不要なデータが増えてしまうため、CSMのアクションにどう繋がるかを考えた上で蓄積することが大切です。必要のないデータがシステムに溜まると、システムの運用やデータ活用に悪影響を及ぼすため、データを蓄積する際には、必要なデータかを慎重に判断することで将来的な負債を極力回避できます。

ステップ3. データを統合する

システムに蓄積されたデータを可視化するとき、それぞれのシステムデータをバラバラに出力しても意味がありません。データを統合した上で可視化することで価値がでます。例として、CRM/SFAとプロダクトデータを統合するための方法を簡単にご紹介します。

統合に必要なのは、統合するデータ同士に共通するキーを作ることです。
たとえば、以下のような状況では、CRM/SFAデータとプロダクトデータを紐づける共通のキーがないため、株式会社XXXXの利用状況がどのプロダクトデータに該当するのか分かりません。

そこで、CRM/SFA(ここではHubSpot)のRecord IDにあたる「HubSpot ID」をプロダクト側に入力しておくことで、株式会社XXXXは12345というIDを基に、両データが結びつけられるようになります。

今回の例はCRM/SFAのIDをプロダクトに入れる設計で説明しましたが、プロダクトのIDをCRM/SFAに入れるという逆の方法でも問題ありません。
どちらを取るかは、各会社の状況に合わせて設計すれば良いかと思います。

CS活動で生まれるデータは、前述でお伝えした通りCRM/SFAデータとプロダクトデータだけではありません。問合せやセミナー参加情報、CSAT/NPS、機能要望なども顧客を成功に導く重要なピースです。それらを一元的に統合することが、データ活用への挑戦になると感じています。

システム同士のデータをつなぐ結合キーは、統合をする上で非常に重要なキーとなります。CS Opsにとって生命線👼のような存在です。

ただし、結合キーを作ったからといって、すぐに統合ができるわけではありません。CRM/SFAのデータがプロダクトデータと問題なく結合できる状態に整備されていない場合が多いからです。CRM/SFAはセールスが利用するシステムなので、CSにとって必要なデータのあり方でないケースが多いのです。その場合は、CRM/SFAのデータ整備をする必要があります。

整備をする際は、CS Opsが単独で進めるのではなく、SalesOps(またはBiz Ops)と連携し、全チームにとって信頼性が高く、正確なデータ作りを目指すことが重要です。
データ設計やクレンジングは時間も労力もかかりますが、これをしっかり行うことで、将来的に大きな成果を生む基盤が整います。

ステップ4. データを可視化する

いよいよ基盤が整ったら、CSが顧客支援で必要なデータを可視化します。何を可視化する必要があるのかという点は、チームのマネージャーや現場に立つCSMとコミュニケーションをすることで明確にしていきます。
例えば、以下のような指標が考えられます。

  • ARR/MRRの推移、NRR

  • アップセル/クロスセルの予実

  • CSMごとの担当顧客数や売上

  • オンボーディング状況や機能活用状況

  • Churnリスクのある顧客

  • ステークホルダーとの接点状況

この他にも、あげてみるときりが無いほど可視化には多くの切り口があります。可視化するにも労力や工数がかかるので、そのデータを見た後でCSMのアクションにどう繋がるか、そのアクションが顧客体験や売上にどのくらいのインパクトを与えるのかを意識することを心がけたいものです。

データを可視化するには、さまざまなアプローチがあります。他社のCS Opsの方との会話でよく挙がるのは、以下の3つの方法です。

① プロダクトデータをSalesforceに連携し、Salesforceで可視化

② BigQueryからLooker Studioやスプレッドシートに可視化

③ カスタマーサクセスツールに可視化

可視化の方法は、会社のデータ基盤や利用しているシステム、フェーズによって異なるので、ここではどのような方法が最適かについては述べません。

データを可視化することで、次のような価値が得られます。

・顧客の成功している要因/ボトルネックとなっている要因がわかる
・適切なリソース配分ができる
・効率的かつ効果的な支援が行える   など。

先程もお伝えしたように、可視化するデータも、すべての部門が同じデータを共有し、同じ基準で評価できる状態であることが重要です。
CS独自のロジックで可視化を行うのではなく、セールスから引き継いだデータについては、SalesOpsやBiz Opsと連携して共通のロジックで正確に可視化を進めることが大切です。


ステップ5. データを活用する

最後に、データを活用するステップです。
私はこれまで、データの可視化を行い「活用できている」と感じていましたが、最近では可視化の先にあるCSにおけるデータ活用とは何か?を考えるようになりました。

具体的な方法論は一旦置いておき、ここからは私が実現したいCSのデータ活用の理想をいくつか挙げてみたいと思います。これには、統合されたデータを基にAIを活用して実現できたら嬉しいことも含めています。

例1) リスクの管理

顧客のヘルススコア低下やチャーンリスク、オンボーディングの停滞などをデータを活用して自動的に検出する。CSMはリスクのある顧客をすぐに把握できる状態となり、標準化されたプレイブックに基づいて先回りした対応ができる。アクション後の顧客の状態をデータ追跡し、その結果に基づいてAIにプレイブックを改善してもらう。
さらに、満足度低下やオンボーディングができていない兆候がある顧客に自動で支援コンテンツを配信する仕組みを導入することで、学びたいという体験を設計した上でCSMの負担を減らすことも可能。
優先的にフォローすべき顧客や、フォローが不十分な顧客の一覧を確認できるため、CSMは効率よく重要な顧客に集中し、属人化しない質の高い支援を提供できる。

例2) 解約理由の分析

解約した顧客について、CSMが記録した解約理由だけでなく、アクションの結果、議事録、メールのやり取り、プロダクト活用状況、問い合わせデータなど、あらゆる情報をもとにAIを活用して統合的に分析する。この分析結果をもとに、解約率を改善できるだけでなく、セールスチームに共有することで、解約リスクが高い顧客セグメントへのアプローチ方法も見直すことができる。

例3)ビジネスレビューのレポート化

AIを活用して、以下の内容を基にビジネスレビューのレポートを自動生成する。
・顧客が期待する目標/成果に対しての現在の状況
・抱えている課題、それに対する解決策
・顧客のビジネス目標に基づく、今後の活動計画
・アップセル/クロスセルの追加提案戦略思案

レポートを活用することで、CSMはレビューの時間を「状況確認やリリース紹介」だけで終わらせず、顧客の期待に応じた具体的な価値を提供できる。また、経営層向けのレポートも自動で作成でき、対象に応じた高品質なレビューを効率的に実施できる。これにより、1人のCSMでも顧客への提供価値を最大化し、ビジネスを前進させることができる。

例4)効果的なプロダクトフィードバックループ

顧客からの機能要望を、要望内容だけでなく、企業セグメント、利用状況、ヘルススコア、売上などの情報と一緒に管理する。これにより、CSは単なる要望報告ではなく、利用頻度が高い顧客、Churnリスクのある顧客、クロスセルが期待できる顧客といった具体的な背景情報をもとに、勝ち筋となるフィードバックをプロダクトチームに提供できる。

さらに、新機能リリース時には、要望をあげた顧客に自動で通知が届く仕組みを導入することで、顧客とプロダクト間のフィードバックループを効率的に回せる。

例5)チャンピオンの創出

これまでCSMが感覚的に把握していたチャンピオンを、プロダクトの利用状況や売上に加え、ヘルプページやオンボーディングコンテンツへのアクセス状況、コミュニティでの活動などのデータを用いて総合的に判断できる。
さらに、どのような要因がチャンピオン化につながるのかをデータから明らかにし、新たなチャンピオンの創出と、価値を明確にした上でビジネスレビューを行うことができる。

例6)アップセル/クロスセルの創出

アップセルやクロスセルの可能性のある顧客を検知し、データをもとに具体的なアプローチ方法や戦略プランを示唆してもらう。
また、なぜ成果につながらないのかをAIが分析することで、足りていない部分を特定し、そこを補う活動に集中できる。
示唆に基づいて行動した結果のデータをもとに、より精度の高い戦略を立てられるようになり、アップセルやクロスセルの成功率を向上させることができる。

⋯もっと妄想や理想はあるのですが、ここまでにしておきます。
続きは飲み会で。

このように理想を考えると、データの可視化の先にはまだまだ多くの活用が待っていると感じますし、AIを活用することで人間が行うべき業務により注力ができるようになると感じます。
統合されたデータの活用は、顧客満足度の向上やビジネス成果を更に加速させるでしょう。

これまで試したデータ活用の仕組みと課題

AIの活用とまではいかなくとも、既存のツール(Salesforce、HubSpot、Zapier、スプレッドシート、GAS、Slack、Notionなど)で実現しようと試みる方も少なくないと思います。私もそのうちの一人です。

しかし、これまで私が試みた実装は、理想形に2歩も3歩も届かず、いくつかのリスクを伴うものでした。以下に、試した方法とその課題を共有します。

例1)リスクの管理
ヘルススコアの低下やリスクのある顧客を可視化したうえで、GASを活用して担当CSMにSlack通知を送信。さらに、API連携が可能なタスク管理ツールを使い、担当CSMにタスクを自動生成する仕組みを構築。
近いものが実現できる一方で、開発には多くの時間を費やす上に動作が不安定でエラー対応が発生し、メンテナンスの負荷が高い。マルチプロダクトの場合は更に複雑な開発が必要となる。

例2)解約理由の分析
Salesforceに入力した解約理由を確認し、解約した顧客のプロダクト活用状況やCS活動記録をブレイクダウンして調査する。
傾向を把握することができるが、とにかく時間がかかるので少ない頻度でしか調査が行えない上に、限定的なデータの分析しか行えない。AIを使えば一瞬なのに。

例3)ビジネスレビューのレポート化
企業名で絞り込むと、顧客ごとの利用状況がグラフや表などで表示されるダッシュボードをLookerStudioで作り、Salesforceの各会社ページからもアクセスができるようにする。ビジネスレビュー時はそのダッシュボードを見せながら進行できるが、結局のところ利用状況の可視化にとどまる。課題に対する解決策や追加提案の戦略、今後の活動計画などはCSMが0から立てる必要があり、スキルや経験に依存する。

例4)効果的なプロダクトフィードバックループ
プロダクトの利用状況データをSalesforceに連携し、フィードバック管理ツールとSalesforceを統合することで、要望チケットに企業データを紐づけた分析が可能な仕組みを作る。
一定分析が可能になるものの、Salesforceに連携するプロダクトデータはSalesforceの性質上限定的になり、フィードバック管理ツールに依存した分析しかできず結果として活用されない。CSMのPdMに対するアピール力で開発が進む。

例5)チャンピオンの創出
CRM/SFAデータ、プロダクトの利用状況、問合せ、セミナー参加状況、機能フィードバックなどを結合して可視化し、全ての数字が高ければ高いほど熱心な顧客であると判断する。傾向を把握するのには役立つものの、なぜチャンピオンが創出できたのかという根本的な理由の特定には至らない。

例6)アップセル/クロスセルの創出
アップセル/クロスセルの可能性がある顧客に対して、何かしらのフラグを立てることで顧客リストを作成する。優先的にアプローチすべき顧客からフォローしていき、アクションから得た結果をもとに、他顧客へのアプローチに活かすサイクルを回す。
一定アプローチは可能になるものの、CSMが自発的に担当顧客の状況を把握してフラグ立てをする必要があり、CSMの担当顧客数が多い場合はアプローチ漏れが発生する。


これ以外にも、現場のCSMから寄せられるアイディアをもとに既存のツールで様々なことに試行錯誤してきましたが、実現しきれないもしくは一部のみの実装であったり、実装やメンテナンス工数がかかるなど非常に多くの課題が残りました。

私は長らくCS Opsとして「可視化」から「活用」のステップに進めずにいましたが、この度カスタマーサクセスツールを導入したことで、実現したいデータ活用に近づくと実感しています。

記事が長くなりすぎてしまったため、カスタマーサクセスツールでどのようなことが実現できるのかというお話は次回に持ち越そうと思います。興味がある方は、GainsightMagicSuccessSuccessHubなどのカスタマーサクセスツールをぜひ見てみてください!

もちろん、カスタマーサクセスツールを導入すれば魔法のようなことができるわけではなく、これまでご説明したような活用するための基盤構築や設計が重要となります。

今回あげたデータ活用の例は私の理想も含まれていますが、カスタマーサクセスツールを活用することで、実現可能な領域が格段に広がると確信しており、今後のデータ活用はカスタマーサクセスツールによって大きく進化していくとワクワクしています。

さいごに

今回は、CSのデータ活用とは何かに焦点をあて、活用を実現するためのステップを書いてみました。マーケティングのデータ活用はMarketo、Account Engagement、HubSpotを中心に、セールスのデータ活用はSalesforceやHubSpotを中心に進んでいますが、CSのデータ活用はまだまだ挑戦できることが多くある分野だと感じています。
このnoteを読んで、“自分の会社はできている!”と自信を持った方や、“もっと挑戦できる部分がある!”と感じた方もいらっしゃると思います。私はいつもCSに携わる多くの方と情報交換をさせていただけているおかげで学ぶことができているので、このnoteも皆様にとってよいインサイトになれば幸いです。

長い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回のnoteを作成するにあたり、CS支援事業をされているInstaller代表取締役のかじさんに多くのご協力をいただきました。ありがとうございます!!!

2024年12月には、一般社団法人日本カスタマーサクセス協会も設立されたことですし、今後のカスタマーサクセスやデータ活用事例を多くのCSの方たちと共有できることを楽しみにしています。

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