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『三人の女たちの抗えない欲望』埋めようのない溝を恋と呼ぶのなら

本日はリサ・タッデオさんの『三人の女たちの抗えない欲望』をご紹介します。

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本屋さんに並んでいた新刊本で、帯とタイトルに惹かれてジャケ買いしました。

なんと『ダブル・ファンタジー』の村山由佳さんと、『食べて、祈って、恋をして』のエリザベス・ギルバートさんが紹介文を書かれているんです。

お2人とも女性の心情を描かせたらピカイチな作家さんたちです。

たしかに彼女たちが絶賛するだけありました。

猛烈に女性の感性やエロスが立ちのぼってきて、鼻血ブーしそうでした。

どこを読んでも、脳内お花畑状態。
とにかく、描写がとんでもなくエロかったのであります!

いつもはホンネを書き綴りますが、禁断の描写がダダ漏れすぎて書けません。

狡い男たち。
わかっていながらズルズルと快楽の渦に溺れる女たち。

三人の女たちのめくるめく禁断の愛が、交互に描かれていきます。

こんな感じ。

高校時代に恋愛関係にあった教師を、性的虐待で告発する大学生マギーの法廷シーンから始まります。

そして、レストラン・オーナーとして成功しつつも、夫に従い、第三者を交えた乱交生活を愉しむスローン。

性暴力のトラウマに苦しむ一方、夫との積年のセックスレスに不満を感じ、SNSを通じて再会した初恋の相手とのダブル不倫に陥る、二児の母リナ。

この本は小説ではなくて、綿密に取材を重ねられたノンフィクションというから驚きでした!

登場人物たちがどのような時代背景、家庭、社会で育ち、その後の結婚生活を送ってきたのか。
そして、現在の人格を形成していったのかが、徐々に解明されていく様子が興味深かったです。

登場人物が読んでいる本によって彼女たちの個性や嗜好が理解できるような部分もありました。

「なるほどなー、好きそう!」と納得。

例えば、高校時代のマギーは『トワイライト』に傾倒し、スローンは『フィフティ・シェイズ』シリーズが愛読書でした。

彼女たちは確かに危うい恋愛を渡り歩いていくのですが、相手を本気で愛してるんだなってことが伝わってきます。

一方の男性は、瞬間の欲望には忠実ではありながら、執着はしない。
ある意味女性にとってはどんな愛の形であろうと純愛なのだけど、男性にとっては必ずしも愛ではない。

その辺りの女性の心の機微も読み込んで頂ければと思います。

男性たち、そもそも女性とは求めるものが違うんですよね。
「こりゃあ男心と女心が永遠に交わることはないわ!」と読みながら絶望すら通り越して、苦笑いしてしまいました。

女性は永遠に愛されたい。
男性は瞬間を愛したい。

女性にとっての溝は、埋めようのない溝なんです。
やっと埋まったと安堵のため息をついたとしても、淡々と日常が過ぎていけば、気づくと溝ができている。

かきむしられるように湧き出る欲望から抗えなくなる。
この飢餓感を埋めなければ!

だからずっと、女性はその溝を埋め続けるために男性を求め続ける。

結果、男性は逃げたくもなるでしょう。

女性の埋めようのない溝を恋と呼ぶのなら。
果たして男性の心は?

わかったところで本質的には理解できない気がします。

本著は年間ベストブックの賞を総ナメにしているそうですよ!

なんだか、ラブサスペンスを読んでいるようで、めちゃくちゃ先の展開が気になりました。

外で読む場合は、人の目も気になります。
ブックカバーをご準備くださいませ!

濃厚ですが、男女の心理戦の織り成す妙味を感じてほしい作品です。



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森本木林(きりん)@読書研究家
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