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元CSMのカスタマーサポートが実行した、CSMの機能理解向上のための4つの施策とその成果
こんにちは。記事に興味を持っていただきありがとうございます!
株式会社Asobicaでカスタマーサポートのリーダーをしております、森本と申します。
Asobicaは、ロイヤル顧客の育成・蓄積・分析を行う「coorum(コーラム)」をメインプロダクトに、「企業の顧客中心の経営」の実現を目指している会社です。
本記事では、私がカスタマーサポートになった半年間で実行した、CSMの機能理解向上に向けた取り組みとその反応・効果についてお伝えします。
ぜひ読んでくださる皆様には失敗談を含め楽しんで読んでいただき、何か1つでも参考になることがあれば嬉しいです。
はじめに
実は、私はカスタマーサポートになってからまだ半年と少ししか経っていません。
つい1月末にはカスタマーサクセス(CSM)としてnote記事を出させていただきましたが、2月からカスタマーサポートに異動しており、9月からは半年間の取り組みや姿勢を評価いただきリーダーを務めさせていただいております。
初めてのリーダーなので勉強すること・至らないことも多いのですが、頼りになるマネジャー・リーダー陣や、誠実さと凄まじいキャッチアップ力で「私も頑張らないと!」といい意味で焦らせてくれるチームメンバーに恵まれ、とてもやりがいのある日々を過ごすことができています。
これから書くことも彼らの助け無くしては絶対に実現できなかったことで、彼らには感謝してもし切れませんし、心の底から尊敬しています。
弊社カスタマーサポートグループでは、大きく分けると下記のような業務を行っています。
社内外からのチャット問い合わせ対応
ヘルプページの運営:マニュアル記事などの拡充
QA(保証)の実施:リリースを控えた機能の挙動テスト
“唯一のCSM出身サポートメンバー”として、(ご紹介する取り組みに限らず)強く意識していることがあります。
それは、CSMとカスタマーサポートの連携をなめらかに繋げるという使命です。
これはサポートグループに異動する際に上長からも期待される動きとして伝えられていましたし、自分自身もミッションとして感じております。
その想いのもとで、ヘルプページを運営するかたわら「CSMはもっとこんなことをサポートがやったら喜んでくれるかも!」というアイデアを純粋に、そしてがむしゃらに実践してみたのがこの半年間でした。
実行してみて、効果が感じられたもの・CSMからとても賞賛されたものもあれば、(特に面白いのが)効果は出ているけれどCSMからネガティブFBがあったものなどもあり、自分としても大変学びが多かったと思います。
ここからは、課題感の詳細と各施策の内容・効果について、順に紹介していきます。
「元CSMのカスタマーサポート」がCSMに対して持っていた課題感
カスタマーサポートの役割や仕事が分かってきたころ、CSMの実経験+カスタマーサポート視点から下記のような課題感がありました。
プロダクトの機能数がとにかく多い!
弊社は機能リリースが毎週あるのでCSMは頻繁にキャッチアップする必要があり、少しでも気を緩めるとついていけなくなってしまいます。
その結果、社内オンボーディングの「プロダクトを一通り触ってみる」といったタスクに2週間かかるぐらいには機能数も用途も多岐に渡ります。
CSMがとにかく忙しい!
そして、CSMも定例ミーティング、顧客連絡、次回打ち合わせの準備、提案資料作成...とハイタッチなサポートを行っているため多忙です。
そのため、新機能や機能の仕様変更のリリースをテキストメッセージで受け身的に確認するだけではどうしてもすべてを記憶することが難しく、抜け漏れしやすいです。
サポートはサポートで自分たちしかできない裏技を知っていたりする!
一方サポートグループも、 「CSM自身でプロダクトを使いこなせるようになって欲しい」という思いはもちろんありつつ、エンジニア経歴のあるメンバーだからこそ対応できる高度な操作はサポート側で対応し、万が一操作を間違えた際のリスクなども踏まえてCSMに方法を説明しないこともあります。
このようなお互いの事情が絡み合う中で、サポートグループという組織が正式にできてからはCSM側に下記のような風潮が徐々に広がっているような感覚があります。
「できなさそうな操作だけどサポートグループならできるのでは?」
「サイト操作はサポートグループにそのまま投げてしまおう!」
「機能系の要望はサポートグループに投げればいいから、機能理解は最低限やっておけば大丈夫かな」
このような風潮については、程度の違いこそあれどきっと多くの企業が同じような悩みをお持ちではないでしょうか。
しかし私は自分自身がCSMをやっていた分、プロダクトを高いレベルで使いこなせるからこそできる施策提案であったり、お客様の「こんなことやりたいんだけど」にYESで回答できるお互いの気持ちよさがあること、反対にお客様の「こんなことやりたいんだけど」に「できません」で回答せねばならない苦しさも知っているつもりなので、CSMにもぜひ機能理解に取り組んでほしいと思っています。
そして、機能理解が忙しくて億劫になる気持ちもまた理解できるので
どうやったら明るい気持ちであったり、ゲーム感覚で楽しんで機能理解に取り組んでもらえるか?
もしくは、CSMの心理的・工数的負担を減らすことができるか?
という想いのもと、半年間で4つの施策を展開しました。
CSMの機能理解を底上げするために行った施策4選
ここからは4つの施策の目的・運用の流れ・ポイントについて詳しく紹介していきます。
1. 新機能トレーニングの実践
目的
新機能トレーニングの目的はCSMの機能理解向上になります。
機能リリースに合わせて、きちんと期日を決めながら重要な機能を実際に操作してもらい、操作時の注意点なども含めてCSMが使いこなせるようにします。
運用の流れ
CSMに案内する
トレーニングごとに専用のSlackチャンネルを作成してCSM向けに案内します。
リマインドをかける
どうしても後回しになりやすいので、Slackでのリマインドスレッドは多めに立てた方が良いです。
私は、下記のタイミングと意味合いで計5回のリマインドをかけています。
案内した週の金曜日 → 週末を迎える前にできたらやってしまいましょう!
案内した翌週の月曜日 → 今週締め切りの機能トレーニングがありますよ!
案内した翌週の火曜日 → 締め切り3日前ですよ!
案内した翌週の水曜日 → 締め切り2日前ですよ!
案内した翌週の木曜日 → 本日締め切りですよ!
締め切り後はバイネームでリマインドをかける
▼実際の案内Slackメッセージ
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トレーニング案内があってから締め切りまでは1週間程度あるイメージです。
効果・CSMの反応
新機能トレーニングは、CSMに満足度アンケートをとった際も満足度92%と高い数値だったので、機能理解向上に貢献できているのかなと思います。
ついつい後回しにしてしまうが大切な機能理解に対してお尻を叩いて進行してくれるというのはポジティブに受け取ってくださっているメンバーが多いです。
ただし(特にこれまで機能リリースを細かくチェックしていなかったメンバーにとっては)タスクと工数が増える分、他の施策に比べると「嬉しい!ありがとう!」とはなりにくいです。
なのでCSMの反応はいい意味であまり気にせず、「これは大事なことなんだ!」という強い気持ちで突き進むのが大切だと私は思っております。
(私の場合は、同じサポートグループ内の問い合わせチームのメンバーが「この施策のおかげで新機能リリースがあった時に急増する問い合わせが減ったよ!ありがとう!」と細かく褒めてくれるのでとても前向きに取り組むことができています。チームメンバーに感謝です。)
2. 機能一覧表(検収シート)の作成
目的
機能一覧表の目的はCS工数削減・インシデントリスクの低減になります。
弊社プロダクトはとにかく機能数が多いので、CSM一人一人が
「この項目は何ができる機能なのか?」
「この機能は標準装備していいのか有料オプションなのか?その価格は?」
を網羅的に暗記することがかなり難しくなってきています。
そのままにしてしまうと、情報を確認するためにNotionであったりSlackを探し回る工数がCSMに発生したり、最悪のケースとして「未リリースの機能や有償オプション機能を提供してしまっていた」というリスクを懸念していました。
そこで、機能リリースに合わせて常最新の情報に正しくアップデートされている機能一覧を作成・運用することで、CSMが「これなんだっけ?」となった場合に一目でわかるようにし、CSの工数削減とインシデントリスク低減を目指しました。
運用の流れ
管理画面上の項目と各情報をスプレッドシートにまとめる
管理画面上の項目名・何をしたい場合に使用する機能なのか・提供形態・提供価格・使用上の注意点・関連ヘルプページなどをスプレッドシートにまとめます。
機能リリースに合わせて情報を最新のものに更新し続ける
次回リリース項目のすり合わせの際に「検収シートの更新は必要か?」という確認項目を入れています。
▼スプレッドシートのイメージ
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1列目に「何をしたい場合に使用する機能なのか」を質問形式でまとめ、
「YES」の場合は機能がONになっているのが正解、という方式にしています
効果・CSMの反応
機能一覧表の作成についてはCSMからかなり喜ばれました。
取り扱っている内容が
情報量が莫大かつ変動もする
なのに覚え間違いがあるとインシデントにつながりかねない
というものなので、1つの箇所に、間違いのない状態でまとまっているというのは、CSMの工数削減と心理的安全性の担保みたいなものに効果があったと感じました。
ただし、設定を行う際にいちいちスプレッドシートを参照しなければならないというのはベストではないと考えており、各設定画面上にツールチップなどを設定してその場で確認できる形にアップデートを検討中です。
また、CSMがコミュニティサイトの設定を行う時以外にも、セールスが営業資料をアップデートしたり、PMが機能提供状況を確認する際も
「この機能ってもうリリースされてるんだっけ?」
「有償機能一覧が欲しい」
となることが頻繁にあるため、数ある資料の中でもかなり多様な場面で活用いただいている働き者な資料になっています。
3. ローンチ前最終設定チェックの実施
目的
ローンチ前最終設定チェックの目的はインシデントリスクの低減です。
オンボーディング期間を経てコミュニティサイトをローンチするにあたり、「ここは必ず設定しておかなければならない」「顧客の要望を満たすために、ここはこんな設定になっていなければならない」という設定項目が多数存在するのですが、こちらもかなり多く・細かくなってきているのでCSMによる設定作業に抜け漏れが発生する可能性があります。
そこで、オンボーディング期の終わりが近づいたころに、(機能理解度が高いサポートグループの代表として)私と30分間のミーティングを行い、必要性の高い管理画面上の設定をすべて確認するという施策を行っています。
運用の流れ
CSMが「検収シート」を使って設定に誤りや不安のある箇所を確認する
CSMが私との30分間のミーティングをセット+専用のSlackワークフローを送信する
CSMと私で、管理画面上の設定項目を一通り確認していく
画面共有をして一緒に「検収シート」と管理画面の設定状況を確認していくのですが、必要に応じて私からも「こういった性質のコミュニティであればこの設定はこうなっているのがよいのでは?」という提案も行います。
効果・CSMの反応
こちらはCSMから最も喜ばれた施策となりました。
機能数が莫大で「どの設定がどうなっていればいいのか」を抜け漏れなく把握できているか心配
なのに、これまでWチェックのフローがなかった
という状況だったので、特にオープン直後に設定ミスでインシデントになってしまうかもしれないと考えた際に担当CSMにかなりの心理的負担がかかっていました。
そこを機能理解度の高いメンバーが一緒に確認してくれるということで、こちらもインシデントリスク低減とCSMの心理的安全性の担保にかなり効果があったと感じております。
CSMに満足度アンケートをとった際も満足度98%と非常に高い数値になり
自身のチェックでも見落としていたり「こういうことありますが大丈夫です?」という質問を受けて、お客様に確認することで事前に最低限確認すべきことをもれなくカバーできた
自分だけだと不安なのでサポートのプロ目線で最後見てもらえるのは絶対あって欲しいレベルで感謝してます
森もんに感謝感謝。申し訳ないですが森もんなしではオープンできません(※森もんは私のあだ名です)
という嬉しいお声もたくさんもらいました。(嬉しすぎて少し泣いてしまいました...)
また、本施策が始まってから、きちんとサイト最終チェックを通したうえでオープンしたコミュニティではインシデントは一切発生しておらず、実態としても効果が感じられました。
4. 機能理解クイズの配信
目的
機能理解クイズの目的はCSMの機能理解向上です。
重要かつ設定時にポイントがある機能をピックアップして、クイズ形式でCSMに機能理解を深めてもらうという施策です。
CSMが機能を網羅的に知るタイミングとして、社内オンボーディングに含まれている「基本機能・操作の約140項目を実際に操作して覚える」というものがあるのですが、かなり基本機能の基本操作に絞っているので、実際にCSMとして様々なお客様の要望に沿った環境設定を行うとなると「あれ?うまくいかない」「初めて触る機能だ...」となることも多々あります。
そういった場合に備えて少しでも楽しんで機能理解を高めてもらいたいという想いで始めたのが機能クイズでした。
個人的には遊び心を盛り込むことができるこの施策がやっていて一番楽しいです(笑)
運用の流れ
Google Formで機能クイズを作る
YES / NOで答えられる質問と、「正しいものを全て選びなさい」で答える質問を組み合わせて作ります。
なるべく引っかかりそうなリアルな選択肢を作ることに命をかけています。
CSM向けにSlackで案内して回答してもらう
回答したCSMが「難しかった〜」「⚪︎点だった...」とコメントを寄せてくれるので、回答してくれた感謝の気持ちを必ず返信するようにしています。
期末などのタイミングで集計して表彰する
▼実際の機能クイズ作成画面
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▼回答してくれたCSMがコメント欄で盛り上がっている様子
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効果・CSMの反応
こちらもCSMの満足度アンケートで満足度92%と非常に高い数値になりました。
直接的にインシデントリスクの低減につながったというよりは、活用頻度の高い機能知識を得ることができた+お楽しみ企画として楽しめたという意味合いが強いと考えています。
毎回「また次回も楽しみにしてます!」というコメントが寄せられて本当に嬉しい限りです。
施策のまとめと今後の展望
ここまで、CSMの機能理解向上のために実施した4つの施策について説明してきました。
やはり心理的であっても工数であってもCSMが楽になる施策は満足度が高く、CS工数が発生しているものについては比較的満足度が低くなりました。
「CSMの時間をとってまでこの施策をやるべきなのか?」
「CSMフレンドリーになるあまり余計機能理解を深めることに対する優先度が下がってしまうのではないか?」
と思うこともありましたが、最近は下記の整理で軸を持って業務に向き合うことができています。
今必要とされている、緊急性・重要性の高いサポートについては積極的に貢献する
長期的にはCSMご自身がプロダクトを使いこなせるよう、(多少CSMの工数をもらっても)必要な教育は行う
また、8月からの1年間では特に「CSMの工数削減」を最優先としてかかげており、またここではご紹介していない様々な施策に取り組んでいます。
本記事でご紹介した施策に絡めると、「3. ローンチ公開前最終設定チェック」の自己チェックにCSMの工数が多くかかってしまっているので、自動化ツール『テックタッチ』を活用してCSMやお客様がボタン1つでご自身で設定に抜け漏れがないかチェックできるガイドの展開を検討しています。
さいごに
最後に、私がカスタマーサポートという職種の好きなところを少し書いてみたいと思います。
私が考えるカスタマーサポートのいいところは、ヘルプページでも問い合わせでも機能クイズでも、すべての業務が「お客様やCSMへの思いやり」から成り立ち、それをまっすぐに突き詰めることがきちんと成果につながるところです。
CSMをやっていたころ、お客様が多忙でなかなか弊社プロダクトに手がつけられないとついついあれもこれもサポートしてしまいたくなるのですが、どうしても「MRRに見合わない」「私がサポート領域を広げてしまうと他のCSMもしなくてはいけなくなる」といった観点があり(それは正しいことです)、できないことが多くもどかしく思っていました。
しかし、特に私が所属しているカスタマーサポートグループ ヘルプチームはすべてのCSM・すべてのお客様に向けたテックタッチを拡充していくことが使命なので、「これはあった方が良い。あれば絶対に喜ぶ人がいる」ということが分かれば実行に移すことができます。
そして、施策を展開することで、カスタマーサポートグループとしての成果・目標達成に大きく貢献できているということが良いところだと思います。
また、「テックタッチをきちんとやればこんなこともできるんだ!」という驚きや、「このフローがあって本当に助かってます!」という喜びを間近に見ることができて、自分の存在意義を確かに感じることができます。
この成功体験の積み重ねが、自分自身の成長に大きくつながったと確信しています。
(直接的に関わっていないお客様の喜びの声を知ることができているのは、「お客さんこんなに喜んでたよ!」と連絡をくださるCSMのおかげです。本当に感謝しかありません。)
長くなりましたが、最後まで読んでいただき誠にありがとうございました!
また別記事にて現在進行中の取り組みなどについてもご紹介させていただければと思いますので、よろしければそちらも読んでみていただけますと幸いです。
また、Asobicaではカスタマーサポートに限らず、あらゆる職種でメンバーを募集しております!
本記事で少しでもお伝えできていれば嬉しいのですが、一人一人が会社のビジョン・ミッション実現に全力で取り組んでいて、人として尊敬できるメンバーが集まっている会社です。
ご興味がありましたらぜひリクルートページも覗いてみてください!