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エッセイ

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#詩

ぽえむの言い分

ぽえむの言い分

先日、ふらりと国立近代美術館でやっている、
MOMATコレクション、小特集 ぽえむの言い分に
行ってきたー。
夕方って事もあり、ひとがそれほどいない展示会で、会場で借りた鉛筆の音が、さらさらと響く。
美術については詳しくないし、
当然、いまここでも、何かを論じれるほど、
知識があるわけではない。

詩はもちろん大好きだから、
初めて知った作家の名前を持参のノートに書いていく。
それが、ぽえむの言い

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誰もが特別を持ってる、誰もが特別を待ってる。

ある晩、ある女性を頼ってきた子がいた。ある女性の仕事が落ち着いて彼女のはなしを聞けるようになるまで、僕は彼女のことばに耳を傾けていた。ようやく暗い顔の彼女が少しだけ笑った。いまの僕の役割はそれなんだな、そしてずっとそうだったんだな、と思う。「Gさんなんかに相談して大丈夫なの?」声の大きな男が嗤う。僕はそれを無視しながら、僕がある種ジョーカーめいた存在なんだなと自覚する。だって!女の子って、どんだけ

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DJが知る音楽の持つ魔法

DJを生業にはしていないけれど、いちばん長くつづいていることが誰にあてるでもなく書き連ねる文章だとしたら、その次にはDJをつづけてきた。
いまから書こうとしているのはそのはなしではない。

コロナ渦の前、我が街の毎晩のように過ごしてきた、メキシカンバーで、もはや契約の切れた、wifiがないと繋がらないこのiPhoneを、アンプに繋げてスピーカーから流すDJのことを書こうと思う。

時にはY

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僕を見つけてくれたのは。

あれがいつの頃かも、もう忘れてしまった。
朝帰り、家へと向かう路上で、マッチを擦って煙草に火をつけた瞬間に、凛の匂いを冷気とともに吸い込んだことを覚えてるから、冬のある日だったのかもしれない。
天気雨に降られて、電車の通り過ぎるゴーっという音だけが鳴り響く高架下で、時間をやり過ごすために、返信したのを覚えているから、6月の夕方だったのかもしれない。
その子は、パリに住んでいた。
別れが裏切りにも似

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