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家にスマホを忘れた夜

しまった。


明日の朝ごはんを買いに出た夜、私としたことがスマホを家に置いてきたと気づいた時には、既にコンビニ近くまで来ていた。


今日は推しのライブが当選したから支払いをしたかったのに。

それよりも、スマホを忘れるなんて。

実に数年ぶり。


現金を持っているからひとまず、明日の朝ごはんだけを買うことにする。


スマホを持っていないと言うだけで、ふわふわとした感覚になる。心許ないというか、不安感がずっと私を取り巻いている。

いつもは腕に付けている時計も今日はない。たった数分程度の外出のためにわざわざ付けることもないので、時間も分からない。

時間の分からない夜。
その非日常的な感覚のせいで少しだけこのふわっとした自分の状況を味わっていたくて遠回りをする。

昼過ぎから夕方に訪れる八百屋さんが立ち並ぶ商店街は既に闇に包まれていた。まだそんなに遅い時間じゃ無いはず。でも真夜中のような空気から、私の鼓動も早くさせる。不安の波が押し寄せてくるみたい。



コンビニに入ると、途端にいつもの夜の風景に戻る。
朝ごはんを買わなきゃ。

そこで久しぶりに時間を確認した。


あ、もう22時半を過ぎているんだ。


時計を見たとき思った。
時計があるから、私たちは時間に囚われていんだ。

目覚ましのアラーム
学校のチャイム
一斉に取る休憩
学校や会社のお昼ご飯
定時の時間

そういった区切りがあるから私たちは“その時間”を意識せざるを得ない。

さらには常に気にする時計の存在から“時間”そのものを意識しなければならなくなってしまう。


時間を守ること

これはいつの時代も大切にされていた。
人と人との関係に大きな影響を与えるものだ。

厳守することはあたりまえ
3分前、5分前行動を心がけよう
そんな小さな積み重ねで信頼関係をつくる
逆にたった一度でも破れば信頼は大きく失われる


だからやっぱり時間は大切。
でも、”常に”大事にしすぎると苦しくなってしまうと思う。

たまには私みたいに時間を忘れて歩き回ってもいいだろう。時間を気にしなくていいことは不安になると同時に、いつもは無い非日常世界へ連れていってくれる。

そんな非日常世界で日々の生活を見直したり、ゆっくり時間を忘れてくつろいだり、そんなことをしてもいいじゃないか。

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葵月みず
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