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なまえのない感情たち

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今までの小品たちを集めました。 ひっそりと読んでください
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2019年3月の記事一覧

散ってゆくけれど

「もうすぐサクラもお終いだねぇ。きっと、今夜の雨で全部散ってしまう。」おばあちゃんは、縁…

moon
5年前
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知らない。

だから心の扉だけは固く戸締りしていたのに。 ひとり、しんとした部屋で夜を迎えるのが少し…

moon
5年前
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午後15時の紅茶

基本のステップなんて、アン・ドゥ・トロワ 先生のカウントが無くても簡単に踏めてしまう。 口…

moon
5年前
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さめてゆくの

目を瞑ると時計がカチカチ針を進める音が聞こえる。この音が刻み込まれるたび、残された温もり…

moon
5年前
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かくれんぼ

暗闇は怖い。 知らない世界で迷子になってるようで。 まだ私は幼くて、田舎のちょっとした商…

moon
5年前
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かなしみのいろ

僕の持つ真っ白なパレットには世界が広がっている 赤、黄、青、黒、白、そして混ざり合って出…

moon
5年前
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煙草

灰色のビルの屋上で、流されるように飛んでいる鳥を見上げて、あぁ、いいなと思った。 このまま飛べば、今なら、あの色のない空に溶け込めるだろうか。 手すりに足をかけて重力に身を任せてしまえば、すべて終わる。 あぁ、心配をしたふりをして、でも非日常の光景への好奇心が隠しきれない黒光りの視線がどこからともなくわたしをとらえる。 面白いものを見せてあげようか。 とんでもないトリックをこれから披露するマジシャンの楽しそうな笑顔が少しだけ分かった気がした。 マジックを見た者の脳裏から一生絶

破片

「ねぇ、永遠なんて信じる?」きれいな薄ピンクのネイルが施された指先で自分の腕をなぞりなが…

moon
5年前
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アイスキャンディ

見慣れたはずの道の先がぼやけて何も見えない。 まるで異世界へ繋がる入り口に向かっているよ…

moon
5年前
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