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ラストマイルを観て、サービスデザインの責任について考えた

少し時間ができたので、2年ぶりにくらいに映画館へ。
会社の同僚が「ラストマイルを観てDXについて考えさせられた」と言っていたので、詳しいことはよく知らなかったけど即決。

感想とは関係ないけど、イオンシネマはネットでチケットを購入したら発券不要でQRで入場できるようになったんですね。メールの中には発券方法も書かれていたから本当に発券しないでいけるのかちょっと不安になりました。便利なんだけど、惜しい。


以下、映画自体の概要などはすっ飛ばして印象に残ったことと考えたこと。
若干のネタバレがあるので注意。


全体を通して印象に残ったのはホワイトカラーとブルーカラーの対比

  • 初っ端から入館パスの色がホワイトとブルー。

  • 価値観の違い。ホワイト側は利益優先、ブルー側は仕事への誇りに価値を置いているように見える。

  • でも、それに対する対価には大きな差が。。

  • 最後はどちらも現場回帰?これに関しては、ホワイト側の行動はあまり読み取れなかったけど。

企業のポリシーの役に立たなさ

  • 倉庫では某ア○ゾンのようなバリューが掲げられている。例えば以下のようなもの。

    • すべてはお客様のために

    • リスクは取れ

    • 大胆に

  • ホワイトカラー勢の行動はこのバリューを意識して実行される。

  • 初めのうちはこのバリューにより迅速な行動ができており機能しているように見えたが、徐々にそれは自分たちの都合(利益)を優先するように歪められていく。

  • 弊社も似たようなものだよなあと思ったり。ミッション/ビジョン/バリュー/パーパスが流行ってはいるが、結局現場で判断する人間の解釈によって骨抜きにされてしまう。現実をちゃんと描いている、良い皮肉だと感じた。

テクノロジー自体はそんなに悪く描かれていない

  • これは観る人によって意見が分かれるかもだけど。

  • 物語の中心となる爆弾自体はイスラエルのポケベルのような遠隔式ではなく、アナログなスイッチ式のもの。

  • 混乱の最中で(おそらく仕様がガチガチに固められた)システムは役に立たずFAXに置き換えられるなど、柔軟性の欠陥は際立つ

  • だけど、社員情報を削除するという不正をログから暴いたり、顧客情報や購入情報から爆弾が入っている危険のある商品や犯人を割り出していく様子はシステムがあってのもの。

  • なので、世の中のテクノロジー化自体は否定されておらず、使い方や社会構造に問題があるというところにフォーカスされているように見えた。

  • 一方で、古い家電が役に立ったり、手作業での検査、現場に回帰していく様子からはアナログも捨てたもんじゃないよね、という方向性は見えたのでテクノロジー化を問題視する映画である、と見えなくはないのだろうなと思う。

サービスデザインは末端の関係者の生活まで考慮できているか?

  • サービスデザインはユーザーに提供するプロダクトとそのプロダクトの裏側を支える企業側のオペレーションまで含んだサービスの仕組み全体をデザインするもの。

  • サービスデザインのプロジェクトでは、ステークホルダーマップやサービスブループリントというツールによって、プロダクトに関わるすべての関係者の洗い出しを行う。

  • その時、果たしてそこに登場するすべての人物の末端の生活まで想像できているだろうか?なんとなく、コマのよう扱っていないだろうか?というところが気になった。

  • もちろん、主要な人物、特にプロダクトを直接使うユーザーや、そこに近いところにいるオペレーターに対しては深いリサーチを行った上で全体図を描く。

  • しかし、どうしてもMiro上で付箋やアイコンで示す「配達員」や「倉庫スタッフ」に対してそのサービスがどのような影響を及ぼすか?までは考えられていないよなあと。

  • さらに言えば、採算を取るために金額換算されることが多い領域でもある。それで良いのだろうか。サービスの提供者は社会的責任を果たしていると言えるのだろうか。

じゃあ、どう対処しようか

  • どんどん複雑化していくサービスのデザインは、その複雑性に対処するために最近ではシステム思考と一緒に扱われるようにもなってきている(システミックデザイン)。だけどやっぱり、言い方悪いけど「コマ扱い」は変わらないかもなあと思ったりする。

  • 大事なのは、月並みだけど想像力だろうか。そこに人がいて、どんな生活をしているのかを想像すること。

  • しかし、社会構造まで踏み込もうとすると、そこでは企業の論理と消費者の論理の両方が壁になる。

  • 企業はどうしたって自社の利益を優先することになるし、消費者は自分たちが便利になればそれでいい、というのが率直な感覚だろう。映画に出てきたように正常性バイアスもかかっている。

  • 「エシカル消費」などと言われてもいるが、それだけに期待できるものなのか?

  • そこには「想像力」のような担当者レベルの意識や啓蒙活動のようなものではどうにもならない壁があるように感じる。

  • もしかしたら、行政による介入が必要な部分なのかもしれない。今の構造ではどうにもならないんだもの。根本から動かさないと。

  • と言っても、そう簡単にはいかないから、自分が関わるサービスだけでも想像力を働かせていくしかないんだろうな。


全体を通して、伏線の回収が見事だし、何度も予想が裏切られるような展開で非常に面白い映画でした。もう一回観たいと思えた。

そういえば、前知識はあまりなかったけど、事前にマーケティングの文脈?で以下のような記事を見かけていました。

「アンナチュラル」も「MIU404」も見ていなかったので、これに関しては正直、「よくわからない、いらないシーンが多いなあ」という印象でした。他の世界線のシーンがどうしても茶化しパートに見えてしまった。大物が多くて豪華ではあるんだけど、キャラが悪目立ちしているように感じた。
わかる人にとっては嬉しいシーンだったんだろうけどね。
だけど、逆に言えば他の作品を見ていなくても十分楽しめる内容でした。


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