読書メモ(1)『君のクイズ』著∶小川哲
『第76回 日本推理作家協会賞』受賞作
『このミステリーがすごい! 2024年版』第7位
『2023年本屋大賞』第6位
『ミステリが読みたい! 2024年版』第2位
人並みにクイズは好きで、前々から気になっていた小説でした。僕が持っている豆知識のほとんどはクイズ番組由来のもので(競技クイズをしたことはありませんが)、そういう意味では、僕の人生を構成するほとんどがクイズといっても過言ではありません(いや、さすがに過言)。
この小説はクイズを題材にしているので、この小説自体、クイズという形式に当てはめて紹介することができます。本書から引用します。
はい! この小説を知らなかったという人でも、あらすじは、これでだいたい理解できたと思います。あらすじは簡潔ですが、そこにどんな謎が隠されているのか、ワクワクする仕組みになっています。
僕が真っ先に想像したのは、いままで出題されたものには共通点があり、それに気づいた、というオチ。QuizKnockでもよく使われる定番の企画ですね。
さて、その一文字も読まれずに早押しされた最終問題というのが……
秋田県出身なので、聞き馴染み見馴染みのある店舗なのですが、山形県の近隣にしかなかったことにまず驚きました。
本書では何度も『ママ. クリーニング小野寺よ』という文字面が出てくるので、これを一冊読むだけで、県外の人にも馴染みがでてくることでしょう。
本書のなかで「魔法」という言葉が幾度となく出てきます。QuizKnockをよく観る僕にとっては、あるいはクイズに触れる機会の多い人にとっては、クイズ王の思考回路が、そこまで常軌を逸した、魔法じみたもののようには感じられず、むしろ本書のなかで描かれていた「世間の声」のようなもののほうに違和感を覚えたのですが、本当に知らない人たちからすれば、あんなふうに映るものなのでしょうか。
それはおいといて、『君のクイズ』、面白く読みました。タイトルの意味も最後まで読めば腑に落ちますし、賛否両論あるようですが、結末もわかりやすくて、僕は納得できました。なにしろページ数はそこまで厚くなく、サクッと読めてしまうのがよい。
ミステリーということで読み始めましたが、あまりミステリーという感じはしません。あらかじめ、ネタバレではないので話しておくと、Q - 1グランプリで出題されたクイズを一問ずつ振り返りながら、主人公が仮説を組み立てていくというストーリーで、派手な展開や、奇想天外なトリックが出てくるようなタイプの小説ではありません。
そこにガッカリしてしまうと、読破するのも難しいかと思います。
トルストイの『アンナ・カレーニナ』のタイトルから想像して、主人公が中学生のときにつくったという「あんなカレーに……な」を、そんなに膨らませて書く必要があったのかは疑問で、正直冗長には思いましたが。
しかし、いままで振り返ってきた問題が、うまい具合に噛み合ってきてからの展開は、構成の妙を感じました。
最後に、個人的に好きだった文章を紹介して終わろうと思います。