コメディのエスプリ #書もつ
毎週木曜日には読書の記録を書いています。
僕が好きな作家さんの、ちょっと意外な作品。
架空の舞台と、実在する現場をつなぐような、一つの展覧会のために書かれたような、ただ読み手を笑わせるために書かれたような、そんな不思議な作品を。
ロマンシエ
原田マハ
タイトルの意味がわからないまま読み始めてみたら、知らぬ間にフランスにいました。
主人公の描写の緻密さはこの作家の真髄という感じだし、物語の起伏は小説の醍醐味を感じました。
さらっと書きましたが、良い作品でした。
がんばれ!なんて気軽に言えないですが、主人公にはとても励まされるし、考えさせられました。
生きていること、自分であること、この頃復活した小説読みたい熱は、この薬を求めていたんだ!という感じで、どんどん読んでしまいました。
この作家さんの作品で、いつも思うのは、登場人物に会いたい!ということ。
ありがとう。
恋愛コメディって、こんな感じの物語なのかなと思いながら、ぐんぐん引っ張られて読み進めました。主人公は平成生まれだけれど、飛び出すギャグたちは昭和のノリ。書いてるのは作家さんだから、仕方ない(笑)
美術の世界、それは僕にとっては完成形しか分からない世界だなと思いました。制作の現場という場でこそ、人間らしいやり取りや、作り手の苦しみを目の当たりにするわけで。
恋愛の部分では、ずっとずっと心の中で葛藤を繰り返してきて、個人の気持ちと、外見との折り合いと、「性別性」みたいなところがテーマとなる部分は、物語が軽薄にならない作家さんならではの問いかけのようで、とても読み応えがありました。
小説家のモデルは作家さん自身なのかも知れないけれど、それにしてもクセが強い描き方をしていました。ファン目線もなるほど面白い。
人って外から見た姿と、実際の自覚する姿ってちがうし、そうであることが物語になるんだよねと思いました。笑いながら読んでいたら、最後に人ってなんだろうね、なんて考えてしまうような深い作品でした。
心を打つ作品が生まれる現場、そこには人間の繊細な交流があるのかも知れない、と楽しくなる作品。絵や画家のことを書くのではなく、人のことを書くのも作者の真骨頂だなぁと思いました。
普段から虚実織り混ざった作品が魅力の作家さんですが、この作品は恋愛コメディという作風だったり、ある展覧会のプロモーションのための物語だったりして、さらに楽しく読むことができました。
ぜひ読んでほしい作品です。
タイトルに悩みました。エスプリって何か分からないけれど、コメディとパリが上手いこと組み合わさっていたから、そんな気持ちで。
サムネイルは、物語の内面を引き出してくださいました。顔の見えない男性の背中、深いなぁ。infocus📷さんありがとうございます。