約束は半分だけ
私は生まれつき小指が短い。
産声をあげた瞬間、自分の手を見て「あ、小指短い」と確認したわけではないけど多分生まれつきだと思う。
小指が短いからといって、特に不便はない。
あるとしたら指切りをする時だ。
相手の小指と自分の小指を絡める時、相手は私の小指を包めるのに、私は包む事ができない。相手の小指が太ければ、半分ほどしか包めない。
指切りは約束を守る為の誓いの儀式。半分しか包めない私は、約束は半分までしか守れないかもしれない。
子供の頃、約束する時にやった「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った」には、恐ろしい意味があった。
「小指を切って約束をしよう。もし守らなかったら、こぶしで一万回殴り、針を千本飲ませます。はい、約束」
軽い気持ちでやってはいけない。
指切りの由来は、江戸時代に遊郭で働いていた遊女が、意中の男性客へ愛を表す心中立として、第一関節から切り落とし、小指を贈ったとされる。
軽い気持ちでやってはいけない。
小指の短い私の前世は、遊女だったのかもしれない。
二人の男性に贈ったのだろう。
愛は伝わったのか。
そんな私と指切りしませんか?