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場所と人々と彼女と、「ごちそうさま」 『今日もレストランの灯りに』

これまで知らなかった場所(世界)に
ひょんなことから入り関わる事で見えてきた人間模様の泣き笑いを
著者自身の目と筆で書いたあったかくて人情味のあるエッセイ。
そんな読みものはたくさんありすぎるかもしれないこの世の中に。
でもそれらが読まれ、わたしもどれも読みたいと思うのは、
「実際に」「その場へ」そのひとが「中で」「関わる事で」ということと
「他でもないそのひとの「目」」だからだと思う。
 
尊敬するライターさんがSNSで紹介していたことで手に取った本作は、
読売新聞医療サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」の編集長を経て、
バズフィールドジャパンの医療記事を書かれ、
医療やケアにまつわる著書を何冊も出されてきた著者(現在はフリー)の体験記。
 
近所のイタリアンレストランの前の立て看板のメニュー表をみていたら
店の中から出てきた男性に「おう、一緒に呑もうぜ」と声をかけられ、
ほんとに一緒に呑み、常連さんと共に愚痴を聞き、
その後なんとアルバイトとしてこの店で働くことになった!
 
ワイングラスを手に「呑もうぜ」と言ったその人は店のオーナーシェフ!
 
なんだかもうこの時点でテレビドラマみたい、またはテレビドラマになりそう。

でも、リアルの話。

そうして彼女は登場からしてもうクセと個性を感じさせるこのシェフと奥様、スタッフ、常連さん、お客さん、さまざまな人と出会い、
笑ったり、悩んだり、揉まれたり、キレたり、
コロナ禍のイタリアンレストランにおける泣き笑いの人間模様を中で感じてゆく。
 
なんなん。こんなの。泣いてまう。
 
ちゃう。
 
読みながら、一緒に、心配したり、悩んだり、笑ったり、うれしくなる。
 
書かれた著者と共にいろんなひとびとのさまに、そして、著者に対して。
 
若者ではない、という言い方は失礼にあたるかもしれないが、
社会に出たてだったり出る前の若者の目によるものではなく、
記者という仕事を25年続けてきた著者が、
あたらしい世界へひょんなことすぎるきっかけから飛び込む。
 
そこでみえるもの、みたもの、接し方、接され方。
悩むこと、嬉し泣きすること、考えること、知ること、心配すること。
 
医療記者をされてきたからこその、もある。
でも記者として長年やってこられても、
ここでは1新人、1人間、だから泣くこと笑うこと、笑うこと泣くこともある。
 
軽いタッチで軽快に書かれているからこそ、伝わってくることがいっぱいのように思えて。
 
お店にこられるお客さんの想い、スタッフの想い、シェフ(と奥様)の想い、皆の人生が、そしてなにより著者自身の彼ら彼女らへの気持ちが、伝わってくるようで。
 
それこそ、おいしい一品を口にしたときのように、沁み、余韻がありました。
 
このお店を愛する人、愛されるお店の人、
皆、皆がどこか、完璧じゃなく、人間臭い。
皆を、ただ褒めてただきれいに書いておられるのではなく、
同時に、今も関わり続ける御自身のことも、決して全く(?)いい人やきれいに書いてはいない。

だから、わたしには、沁みてきたというか、ああいいな素敵やなあ、となりました。
 
あなたにもある、わたしにもある、〝その場所〟。私の場所、私たちの場所。 

シンプルで、シンプルだけれど、あったかいタイトルに、
なんだかもう、いろんな気持ちが滲んでいるような気もしてなりませんでした。
 
本の中には著者やシェフ、皆の、いい顔した写真もたくさん。
著者はまだお店で働いているそうです。
なんだか、そのことも、ふふふ、いいな、な、1冊でした。
「ごちそうさま」を言いたい、
読んで言いたくなったし、いつか実際にも言いたい、そんな気持ちです。


昨日のつぶやきも貼っておきます。


レストランが舞台の群像劇、ということで、
オノ・ナツメの『リストランテ・パラディーゾ』と『GENTE〜リストランテの人々〜』をふと思い出したりもしました。
これはローマが舞台の漫画(フィクション)だし、
全然関係ないけれど、とても好きだったのです。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。
よろしければお付き合い下さい。

構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

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momo|桃花舞台
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