旅芝居・スターがスターであるということ 大川良太郎
今のキムタクを観ていると切なくなる。
今の新日本プロレスの棚橋弘至を観ていると切なくなる。
先日、ひさしぶりに今の大川良太郎を観た。
「王子」「皇子」「りょんりょん」
旅芝居界でずっと「スター」と言われてきて今も言われている大川良太郎を観た。
その日は休演日まえの昼の部1回だけ公演。
のはずが、急遽「追加ショー」が開催されると決まった日。
その追加ショーとやらに駆け込んだ。
昼の部から続けて観ている劇団ファンの熱に圧倒される。
開始してちょっとしてから入ったのだけれど、
まだスターの登場前なのに座員たちの出番からもうきゃーきゃーわーわー。
友人と目を見合わせ、口から出たのは同じ言葉。
「フェス?」「なんのフェス?」
選曲のせいもあったかもしれない。
モー娘。TUBE(だっけ?)。千本桜。ゲスト出演した座長以外演歌演歌してない曲ばかり。
いやゲスト出演の座長も演歌だけど演歌じゃなかった。
大衆演劇舞踊でスタンダードナンバーとなったノリのいいコール&レスポンス曲。
〝ちょっといい女、ちょっといい男〟
かかる掛け声、胸を叩いてどや顔でコールを求め耳に手をあてる彼。ああ、いかにも。
わたしたちは今か今かとスターの登場を待った。
なんかスターと同じ化粧した、でもスターじゃない誰だかわからない男の子たち(女の子もおるけど)の出番が続く。
出番が終わった座員たちが桟敷や客席に降りてきて客と一緒になって掛け声をかけフーヒュー盛り上がってるのもフェス感半端ない。なにこれ。通天閣の真下で平日夕方15時過ぎのフェス。
そこにやっと最後の前に登場したスター。
どきりとした。
金髪ウィッグにきらきらしいラメの着物に、厚塗りの化粧。
今思うと時間がなく上塗りしてたのかなあとも思う。
本ショーを観れていないからわからないけれど。とにかく厚く見えた。びっくり、どきりとした。
客席を煽るように煽るようにして踊る。
〝どうにもとまらない〟
全方向、すべてのお客さんに目を配る。煽る。
途中から入って来た誰なんだかわかんないわたしたちにもばっちり視線をくれる。
くれた視線、その濃い化粧が脳裏にこびりついて離れない。うん、しばらく離れなかった。
〝とまらない とまらない どうにもどうにもとまらない〟
断言してもいい、
彼は平成の旅芝居をつくってきた、ひっぱってきた座長、いや、王子で皇子でスター。みんなの〝りょんりょん〟、旅芝居界の、キムタク。
あ、これはわたしが勝手に言っているのではなく、某会長役者が以前はっきりと言っていたこと。
スターは、今日も、舞台に居る。スターとして、ここに居る。
皆がその出番を輝きを求め、求めるから、走って、走り続けてきて、
走り続けるをえないうちに、とまらなくなって、とまれなくて、
とまっては文字通り生きてはいけない世界で、王子、いや、皇子として立ってきて、皇位は譲らなくて譲れなくて、毎日、毎日、舞台に、今日も、立つ。
ついSNSに弱音やぶっちゃけを書きがちでもある。
それに情をよせる熱心な応援さんも居る。
でも、「じゃないひと」からは誤解もされたりもする。
うん、〝ほんとうの〟ことを見ようとも知ろうともせずの思い込みから誤解をされたり。こんなに出しているのに、でも出しすぎるから、好き勝手言われたりもして。
わたしもよく口さがない言葉たちを耳にしてきた。それも「自称・芝居通」だとかそのようなひとのそれをね。
しかし出し過ぎる、ほんとうに、出し過ぎるのは、ほんと。
この日も。
ゲストの座長「いやー、この劇団のお客さんってほんまノリがいいですね。
こんなに客席全員踊ってる劇団ってなかなかないですよ」
彼「いやー家で相当嫌なことがあるんでしょうね(笑)」
客席はどっと笑う。
終演後の挨拶にて。
「びっくりしました。こんなに残ってくれると思ってなかった。
よく「明日来るわ」っていうひと居るけど「明日来るわ」っていう人絶対に来ませんからね(笑)」
きっと本音。でもだから、だからでも、客席はまたどっと笑う。
いつぞや(3年前)、他の座長と3人で他劇団に出演したのを観た。
並ぶとわかる、厚くても、濃くても、派手でも、軽いだのなんだの勝手に言われようとも、際立つ存在感が。
終演後の挨拶の際、ずらっと並んだその日の出演者全員の中、
マイクを渡された彼は控えめに後ろに立つゲスト座長のひとりに声をかけた。
「そんな後ろにおらんと前に出てください! ほら、こっちこっち。前へ。ほら」
やさしいねん、きっと。
ひとりで走り続けたり抱え込みすぎたりしてきただろうからこそ。
イケメンの末路は? 皇子の「これから」は?
イケメンはね、きっと心がイケメンだからイケメンやねん、スターやねん。
スターはな、スターやからこそスターって呼ばれるねん。
とまらない。とまれない。どうにもどうにもとまらない。
あの盛り上がり。あの〝フェス〟。
(劇団九州男 2023.4・17@大阪・新世界・朝日劇場)
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3年前、件のゲスト時
2年前、NHKの朝ドラに出演した時
そして、そんな彼が尊敬する座長(今やレジェンド?のひとりですが今も現役座長である役者)を観た時にもこんなことを書きました。
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ここのところ続けて旅芝居を観る機会があり、記事ももうひとつ、続くかも(かも、です)しれません。
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以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。
大阪の物書き、中村桃子と申します。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。
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現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。
と、あたらしい連載「Home」。
皆の大事な場所についての話。
以下は、過去のものから、お気に入りを2つ。
旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中
(貴重映像ばかりです。私は今回のアップにはかかわってないけど)
あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。
皆、無理せず、どうぞどうぞ、元気でね。