
読書感想文 『炎環(えんかん)』 永井路子著
今、話題の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
そこに登場する人物を描いた歴史小説です。
この本によると
本書は1978年に刊行された文庫の新装版です。
と書かれてあります。
つまり、少なくとも44年前の作品ということになります。
さっそく、感想を書き始めたいと思います。
まず、
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を観ている人。
それを面白いと思ってる人。
鎌倉時代に興味がある人。
は、ぜひとも読んでいただきたい!作品です。
めちゃくちゃ面白い。そして、読みやすいです。
ほぼほぼ一気読みしちゃいました。
逆に、大河ドラマを観ていない人。
鎌倉時代、そもそも歴史に興味のない人にはおすすめできません。
正直、おすすめしても、たぶん
なんのこっちゃ?誰?それ?と
まぁ、これをただの物語として読む方法というか、そういう入り方もアリと言えばアリなんだろうけど、おもしろさは保証できません。
この本は4つの章からなり、ひとつひとつ視点が違いますが、出来事は繋がっています。
第一章は、大河ドラマでいうと
新納慎也さん演じる「阿野全成」が主人公です。
第一章から、サブキャラもサブキャラですからね。(苦笑)
私も大河ドラマを観ているからこそ、入っていけました。
まぁ、あまりネタバレしない方がいいとわかってますが、
この章と次の第二章にある、中村獅童さん演じる「梶原景時」の章は切なかったですねぇ。
特に、梶原景時の章を読んで思ったことが
真実が真実とは限らない。
っていうことを強く感じた章でした。
きっと、起こった出来事は本当なのでしょう。
でも、そこにあるその人の心情というものは、私たちが感じた通りかもしれないし、違うかもしれないということです。
そして、この小説のもつ意味とは、
これは、私の独自の感想ですが、
表舞台で有名になってる
源頼朝、義経、木曽義仲、源頼家、実朝
ではなく、
あえて、阿野全成、梶原景時、北条義時、そして、全体を通して、実は、宮澤エマさん演じる阿波局が、主役になってるところが本当にすごい!
これを44年も前に出しているのですから。
そして、
武士の時代の血生臭さ。
鎌倉時代の複雑さ。
私は、歴史を学んだ時から、なぜか、源頼朝が好きじゃなかったんですが、この本を読んで、やっぱり源頼朝が嫌いでした^^;
逆に、北条が好きになりましたね。
歴史では、私の中では、北条政子しかなくて、北条時政は名前だけ知ってたんですけど、ほんと、ここ。ややこしいんですよね^^;
特に名前が似てるので、それどっちやねん!みたいな。。(私だけ?)
小栗旬さん演じる北条義時も、この本では
最後の第四章に出てくるんですが、
まぁ、これから小栗旬さんが、どう演じていくのか?楽しみでもありますが、
この小説で描かれる義時は、人間らしくないようで、人間らしいという、不思議な人物に私は感じました。
この時代だからこその人物だと思います。
そして、義時と宮澤エマさん演じる阿波局は、まぁ兄妹なので、不思議ではないんですが、よく似てるなぁと思いました。
ぶっちゃけ、今の時代だったら、この2人はサイコパス扱いされてると思います^^;
ちなみに、大河ドラマでは義時が阿波局の兄という設定になってますが、この小説では、義時が阿波局の弟になっています。
それと、北条政子の人物像も、この本を読んで私は変わりました。
尼将軍と呼ばれたので、もっとこう、どっしり、しっかり、
そして、実は北条政子こそが、実権も権力も手に入れた人だったのではないか?
と思ってたんですが、
夫に先立たれ、我が子に先立たれ、実朝にいたっては、自分の孫に殺される。
そんな中で、実権を握ったとて、権力をもったとて、
政子にとって、それがなんだったというのだろう?
政子だけじゃない。
この時代に生きた人は、権力を、主導権争いの中で生きてたと思うけど、それを手に入れた義時が、自分の人生に満足したとは私は思えない。
ただ、そうするしかなかった。
みんながみんな、そうやって生きていくしかなかった。
私はそう感じました。
ただ、やっぱり源頼朝だけは好きになれません。私は。(苦笑)