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『料理綱目調味抄』(14) 雜の部(油揚・飛龍子・味噌・醤油・納豆など)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [3]

油揚あぶらあげ

油は、ごま、くるみ、かや、よし。今、種油をいりかへして、ごまの油と云て売は悪し。たまの油、大毒あり。

※ 「かや」は、かや。かやの実油。
※ 「たまの油」は、誤読しているかもしれません。

 油□

麩を、漿、酒にて味付、先一度なまあげにして、用とき、油に酒當分に入てあぐれば、麩いつ迄もふくらかなり。丸山の揚麩は、生■きろう [■は月+鼡] にてあぐればこわくしてあしゝ。いり酒、生酒に塩、白酢、蓼酢、わさび、せうが。

※ 「漿」は、醤油のこと。
※ 「生■きろう [■は月+鼡] 」は、生蝋きろうでしょうか。ハゼノキの果皮から圧搾によって得る油脂のこと。木蝋もくろう
※ 「こわくしてあしゝ」は、こわくてしし。

飛龍子ひりやうず 仝

うどんの粉に、豆腐か、をろし山のいもをすり合、平めて、針牛蒡、木茸を包て、くるみの大さにして、油に揚る。いり酒、山葵、白酢、田楽にして、すみそ、からしみそ。清汁、つま加ふ。笋羹しゆんかんに取合。

※ 「平めて」は、ひらめて。平たくして。

巻纖けんせん 仝

巻うばに、牛蒡の線、木茸きくらげせんせりを巻つゝみて、油あげ、平めて、木口に細く切重て、生姜酢、いり酒。

※ 「巻纖けんせん」は、『豆腐集説』にいう「けんちんまき」のことと思われます。「巻纖ケンツエン」も掲載されています。参考:『豆腐集説』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「うば」は、湯葉ゆばのこと。

豆腐 仝

世に知る事なれば略 之。夏はたで酢用てよし。

昆布 仝

油をいり、度々に火をしりぞけてあぐれば、しめらず。焼器やきうつはの蓋有ものか、壷に入置べし。

菊葉 仝

うどんの粉、霜とし、又、濃味噌にひたしてあぐるもよし。

※ 「菊葉」は、『日本料理法大成』にいう「菊葉油揚きくのはあぶらあげ」のことと思われます。「菊葉きくえふ」も掲載されています。参考:『日本料理法大成』(国立国会図書館デジタルコレクション)

牛蒡 仝

くわへ、はす、山のいも、何首烏かしゆう、何も、茹て、こき皷を衣としてあぐる。

※ 「くわへ」は、慈姑くわい
※ 「何首烏かしゆう」は、タデ科の植物ツルドクダミのこと。
※ 「皷」は、味噌のこと。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [3]

蒟蒻こにやく 仝

生漿にて煮しめて後、つまみ切て、あぐる。皷の汁、線ろふに入。清汁はとりづま。

※ 「線ろふ」は、誤読しているかもしれません。

魚類 仝

鯛、阿蘭陀おらんだ煮に、油に揚る。葱も揚る。鮒焼とき、口より油させば、今躰如 わた

味噌■し 仝 [■は扌+貟]

皷桶の中、四方に枝のふとみに、した迄穴を明け、ごまの油をさし、上に糀を一へんふりて、十日斗になをる。

白味噌

糀多く入て、あたらしきを云。仕様品々あり。略也。大豆、近江最上也。汁をさまさず。

赤味噌

豆を赤くなるまでよく、ねさせ、麹にして、豆一斗に塩四桝、桶につき入置。一年過用は、色如 紅。

玉味噌

豆を能煮、つきて、茶椀の大さにかため、縄につらぬき、田舎のいゝ軒につり置、半年してくだき、四合塩水入、又、つく

※ 「いゝ軒」は、誤読しているかもしれません。

たれ味噌

白皷を布の袋に入、水を入、したゞる水を用。赤みそもよし。

糂汰ぢんた

五斗皷は、豆二斗、糠二斗、塩一斗、搗合せ、年を経て用。當用には餅、米ぬかを、漿、酒にてこねる。

漿の方

大麥五斗炒、大豆五斗煮、水一石、塩五舛。

大麥漿

豆一斗煮、大麥一斗二舛炒、碾研水二斗一舛、塩八舛、八石。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [3]

あめ醤油  [■は米+台]

至液あめ一石、塩四斗、二味煎て、桶に入、冷し、糀六斗、七日めに拌也。此後は如常。

ひしほの方

麥一舛、豆一舛、各炒ヒキワル。二味きくにして、水一升、塩二合半、煎、冷、各桶に入。毎日ニ三度逈す。又、糀二舛、水六合、塩一合半、加入しは、甚旨し。

納豆方

豆一斗煮、大麥一斗、共に 為 ● 末 つく豆 ヲ 為 麹 ト 日 ニ 干 ス 。
水八舛、塩二舛五合煎め、和麹、入桶、加蓋、歴百日、諸味加入。山椒皮、しそ、生姜、茄子。其後、数日して用。

早納豆はやなとう

大麥一斗炒挽割、豆一斗煮、二味拌つき、 きくと(はやねにする)。後、半日冷し、水八舛二合、塩三舛煎、冷、くはし きくに 桶 ニ、石臼の上斗を押に置、七日して液上る時、糀一斗加入、拌合。若かたくば、又、塩水、糀、右の分量以加也。其時、しそ、辛皮、加之。生姜は半月の後加之。糀入て後は、石臼の上下ともに押に置、一月してじゆくす。

※ 「辛皮」は、山椒の若木の皮を刻んで塩漬けにしたもの。参考:『漬物塩加減(辛皮からかは)』

から納豆

夏土用製。豆一斗煮、小麥一斗炒碾剉 とも 豆 ト つく 之日 ニ 干 シ、細末ス。塩三升、水七升、煎、冷、上 和 末□ 毎月次 至。十一月上旬、山椒二斤百廿目。為末加之拌合。常楅寺納豆と云。山城の薪納豆、此製にして□き末也。番椒加也。

※ 「番椒」は、唐辛子のこと。ばんしょう。
※ 参考:『和漢三才図会 下之巻(納豆)』

徑山寺きんざんじ納豆

豆五舛 炒挽割、大麥五舛 舂、一夜浸水、二味むし、為 かげ干。四五日して茄子七百目、白瓜一貫二百目、山椒五合(一夜水漬、苦み去)、生姜百目、紫蘇葉三合、右拌合せ、塩二舛六百目也。押石三貫目、毎七日拌、七次遇て可 用。

※ 参考:『広文庫 第6冊(徑山寺納豆)』



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