【語源】日本釈名 (13) 水火土石金玉
水
「出」なり。「い」と「み」と通ず。水は地中よりいづればなり。
火
「火」は天の「日」とおなじきゆへに名づく。天地ひらけしとき、日はすでにあり。火はのちに生ず。故に、日の名をとりて、火の名とせり。
炎
「火むら」なり。「ほ」は「ひ」と通ず。
焔
「火の尾」也。火のもえあがる事すえほそくして尾のごとし。
煻
炭のおきたる也。「おき」は「おこる」也。又、「あつき」也。「あ」と「お」と通ず。「つ」を略せり。
炭
「すみ」は「そみ」なり。色くろくして、ものにそむ故也。「そ」と「す」と通ず。
土
「地」を「つち」と云。「地」は「土」也。故、地の訓をかりて、「ち」とも「つち」と訓ず。『直指抄』に見えたり。
塵
「散」也。かろくして、ちりやすし。
埃
「ほ」は「火」也。「こり」は「残り」也。火のきえて、灰の残りたる也。一説、火きえて灰のこりかたまりたる也。
泥
「ひち」は水に「ひたる」也。古哥に「袖ひちて」と云がごとし。「り」はうつほ字、「こ」は「粉」也。細也。細土の意。粉と同。水にひある細土也。又、「とろ」と云。「とろくる」也。かたまりたる土のとろけたる也。
※ 「泥」の読み「ヒチリコ」は、ひじりこ(泥)。参考:『新撰仮字づかひ教科書(ひぢりこ)』
※ 「うつほ字」は、空字。参考:『英華字典(Expletive 空字)』『伊呂波音訓伝:日本密要 五』
砂 マサゴ
「いさぎよくこまかなる」也。「まさご」とは白砂のみにて、土のまじらざる正真のすなごなり。又、すなごとは、「する」は「小」也。「すこしきなる」也。「こ」は「粉」也。細也。
白粉
「お」は「う」也。通音也。「う」は「うつくしき」なり。「しろい」は「白き」也。「うつくしく白き」なり。
瓦
「かはる」也。土をやき、かたくなりて、かはりたる也。「ら」と「る」と通ず。又、かたくして、われやすきゆへ「かはら」と云。
石
仙覚が曰、「い」は發語の詞、「し」は「しづむ」也。篤信謂、「いやし」と云意なるべし。石は金玉よりいやしきゆへ也。中を略せり。
※ 「仙覚」は、鎌倉時代の万葉学者。
玉
「たからまるき」也。下を略せり。
細石
「さゞ」は「小」也。漪などの類也。「れ」は、やすめ字なり。細石を「ざれ」と云も、此ことばよりいづ。
金
「かたくねる」也。石中にあるかねのまぶをくだきて、かたくねる也。「こがね」は「きがね」也。「き」と「こ」と通ず。印子は、金のよきを云よし『沈存中筆談』にかけり。和語にあらず。
※ 参考:『広文庫 第5冊(かね)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
錫
「すゞ」は「うすゞみ色」なり。上下を略す。
鈆
「なまがね」也。「かね」を略す。なましきものは、やはらか也。此かねやはらかなるゆえにいへり。「り」は助字也。
※「鈆」は、なまり。鉛。
煙
「け」は「気」なり。「ふり」は「のぼり」也。「けのぼり」なり。上を略す。「ほ」と「ふ」と通ず。一説、「け」は「きえ」也。大き●て気のぼる也。
煤
「ふすぼり」のつもりたる也。上の「す」は「すぼり」也。下の「す」は「つもり」也。「つ」と「す」と通ず。一説、下の「す」は「炭」也。
※ 「ふすぼり」は、燻ぼり。
石灰
唐音也。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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