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【女大学宝箱・貝原益軒】(1)米作り

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『女大学宝箱

それいにしへより今にいたるまで、人をやしなふもの百姓ひやくせう農作のうさくにはじまる。五こくなかいねを第一とする。

ゆへに、春 もみをまき苗代なはしろつくるより田地でんちすきかへし、五月さつきになれば、なはしろにおいいづなへをとりわけて、わが/\になひゆく。

籾蒔 これをなわしろといふ
田を耕(すく)てい

※ 「てい」は、てい。様子のこと。
田うへの餉(めし)持ゆくてい
なへをわけるてい
苗(なへ)をにない行てい

五月女さをとめはこれをうけとりて、うたおもしろくうたひつれ、
 千町ちまちもいつる うへわたす
 女のわざ いとまなき
 打ふし梅雨つゆの はれまなく
 かさたもとも うちぬるゝ
みどりいろをそへて、たみのにぎはひ見えわたる。

田うへ さうとめのてい

※ 「千町ちまち」は、広い田んぼのこと。千町田ちまちだ


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『女大学宝箱

是より水な月にいたればなへやゝだち、田中に葉おひましり。いねのしげみもふさくゆへ、みな立出てかしらを日にてらされて、こしまでどろにひたりつゝ、草ひくことぞくるしけれ。是を一番草、二番草、三番までもとりつくす。

※ 「ふさくゆへ」は、誤読しているかもしれません。

田草(くさ)とるてい

あるひは、日でりうちつゞけば、ためいけの水のひきつれて、なげつるべにてくみいるゝ。はや八月の早稲わせと云、いづるはつほのめづらしくかりとりて、きみにさげ神にたてまつる。

婦夫(めをと)田は なげけつるべにて水かくるてい

※ 「なげつるべ」は、釣瓶つるべ釣瓶つるべの両端につけた縄を二人で持ち、水中に投げ入れて水を汲み上げる道具。

是より身稲なかて晩稲をくてもかり取て、いなをこきつ、からさほのをとめき/\しく、をひる風にちるもみのよきをあつめて、とううすにひきつれ/\しら●となし、おさむる御代みよのたなつものつきぬためしも、民草の夫婦ふうふ男女のはじめより、家をおさむる道とても、これより初り申也。

※ 「たなつもの」は、たなつもの。田からとれる物という意。稲の種子、穀物のこと。
※ 「民草の」は、民衆を草に喩えた言葉。たみくさ。

田をかるてい
うすひくてい みをひるてい
うらさほ いねうつてい
稲をこくてい

是、たみ辛苦しんくする事、たねひたすより、うえそだて、かりこなすまで、いふばかりなし。

田がへさずして食する人、かならず是をとふべし。



新米おにぎり
Photo by mominaina



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