【漬物レシピ】四季漬物鹽嘉言(2) ぬか漬け 奈良漬けなど

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言』

菜漬なづけ
つけ菜なをよく洗あらひ、かぶを切きりすて、包丁目はうちやうめをいれて漬つけるなり。桶おけの大小、菜なの多少たせうによりて、塩しほ加減かげん見斗みはからふべし。菜なは余あまりり壓おしがつよすぎれば、葉はの色いろ赤あかくなる物ものなり。

※ 「つけ菜な」は、アブラナ科の結球しない菜っ葉類の総称。漬つけ菜な。
※ 「壓おし」は、おす、おさえる力という意味。

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言』

京糸菜きやういとな漬づけ
関東くわんとう には 少すくなけれど、近頃ちかごろ京の水菜みづなの種たねを植うへて所ゝにあり。一株ひとかぶにて 百茎ひやくくき 余あまりあり。かぶの根ねを切きり、包丁目はうしやうめを多おほくいれて、土つちを洗あらひ、甘塩あましほにてつけるがよし。水あがりてもあくといふもの少すこしもなし。上品じやうひんなる物ものなり。奈良なら漬づけ、味噌みそ漬づけの香かうの物ものに附合つけあわす。

※ 「京糸菜きやういとな」は、水菜のこと。
※ 「甘塩あましほ」は、塩気が薄いこと。

糠ぬか味噌みそ漬づけ　又　酴醸どぶ漬づけともいふ
萬家ばんかぬかみそ漬づけのあらざる所ところもなけれど、世俗せぞくには取とり遣やりせぬ物のやうにいひならはせしかど、とるにも足たらぬ亊共なり。又、新あらたに急きうに出来できがたき物のやうに思おもふやからもあれば、心得こゝろえの為ために爰こゝにしるす。

糠ぬか一斗、塩しほ五升、右 糠ぬかの小米ここめをよくふるひ取とりて、塩しほ五升に、水みづ五升を 鍋なべにて煮にかへし（寒かんの水なればひとしほよし）、一夜やさまし置おき、糠ぬかにまぜて桶おけへつけるなり（せうゆ樽ならば、此 分量ぶんりやうにて見はからひあるべし）。

あらたに 拵こしらへ たる当座とうざには、毎日まいにちたび／＼手を入れて掻かき廻まわすべし。故ふるき 沢庵たくあん大根を 四五本 糠ぬかのまゝいれ、生なま大根、又、茎くきでも時ときの有合ありあいもの、茄子なすび、瓜うりのたぐひ 何なににかぎらず漬つけるたびごとに、塩しほをすこしづゝ入てかきまわすこと肝要かんようなり。かくして十余日を経へれば、糠ぬかよくなれて 故ふるき糠ぬか味噌みそに異ことなることなし。又、なれたる糠みそを少すこしにても種たねにいるれば、尤もつとも はやく新しん糠ぬかの匂にほひうせるもの也。ことさら新あたらしきうちは、かんさましした酒ざけ、醤油せうゆのおりなどあらば、いれてかきまわすべし。味噌みそ漬づけのみそ、又、粕漬かすづけのかすなどむだと捨すてずして、万事ばんじ心がけて 捨すたらぬやうに ぬかづけの中へいれべし。三十日ならずして、年とし久ひさしくたしなみたるぬかみそにかわる事なし。時ゝとき／＼の物をつけて其そのあぢわひをこゝろむべし。

※ 「萬家ばんか」は、とても多くの家、または、すべての家。万家。
※ 「取とり遣やり」は、ここでは受け取ったり与えたり（贈答）という意味と思われます。
※ 「せうゆ樽」は、醤油樽。
※ 「有合ありあい」は、ありあわせること、たまたまその場にあるもの。

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言』

大根味噌みそ漬づけ
甘塩あましほにして漬つけたる沢庵たくあん大根を能よく洗あらひ、水気みづけを布巾ふきんにて拭ぬぐひとり、二時ふたとき斗ばかり陰かげ干ぼしにして、たまりがちなる味噌みそにつけるなり。一年いちねん立たちて、又、洗あらひ別べつのみそに漬つけおけば、何年なんねん立たちても其その味あぢわひかわることなし。常ゝつね／＼遣つかふ小出こだしの味噌みそ桶おけの底そこに入いれ置おくもよし。

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言』

奈良なら漬づけ瓜うり
夏なつ土用どようの中うちの 極上ごくじやう物ものの白瓜しろうりを吟味ぎんみして二ツに割わりて、中実なかごを深ふかくとり、瓜うりの肉にくにきずのつかぬやうに取とり扱あつかひ、中なかへ塩しほを詰つめて、天日てんぴにほすこと二時ふたとき斗ばかり、塩水しほみづをこぼしとくとさまして、上粕かすに喰くひ加減かげんの塩しほをあはせ置おき、粕かす一匁に、大瓜おほうり二ツをあをのけにして、桶おけの底そこには 糠かすに塩しほ少ゝせう／＼まぜて、桶おけの大小に従したがひて厚あつさ三寸位ぐらゐにしき、中底なかぞこの板いたに穴あなをあけ、水気みづけの下したへ落おちるやうにして、瓜うりをならべては、粕かすをつめ、瓜うりとうりと当あたりあはぬやうにして、ほどよく壓おしをかくれば、中底なかぞこの糠ぬかに水気みづけを吸すひとりて、瓜うりのつきやう大にはやし。

又、茄子なすびは甘塩あまじほに塩押おしして、能よく 壓おしのきゝたる時ときに 一日天日てんぴに干ほしさまして後のち、右の塩しほかげんの粕かすに漬つけ置おき、かるく押おしをかけて一年立たちて、又、粕かすをとりかへ、元もとの如ごとくに漬つけ直なほすこと、瓜うり、茄子なすび共に三年を経へて程ほどとす。

※ 「中実なかご」は、中央、中心のこと。中子なかご。

生姜しやうが味噌みそ漬づけ
秋あきの季すえ、実入みいりよき生姜せうがの葉はを切きり、茎くきを少すこしつけて置おき、土つちを洗あらひ、生姜一貫目に 塩しほ五合斗り、塩しほ押おしにして、水十分にあがりたる時、天気てんきよき日を待まちて、一日いちにち 天日てんぴにほして、味噌みそに粕かすを一割いちわりまぜて、右の生姜しやうがを漬つけるなり。百日にしてつくものなり。かるき押おしをおくべし。

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言』

種抜たねぬき 蕃椒とうがらし 日光につくわう 漬づけ
赤あかとうがらしと、縮緬ちりめん紫蘇しその葉、共に塩しほ押おしにして、一日ほして、蕃椒とうがらし を立たてにわり、種たねをぬき、細ほそく切きりて、紫蘇しその葉はをのばして巻まき、少すこばかり塩しほをふりて、押おしをかけ、廿日ばかり漬つけて後のち、水みづをしぼり、天日てんぴにかわかして壺つぼに蓄たくわふ。

『四季漬物鹽嘉言』📝
(1) 沢庵漬など　(2) ぬか漬け 奈良漬けなど　(3) 梅干しなど　(4) 塩漬け他

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