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【食品図鑑】宝船桂帆柱(5)十遍舎一九×歌川広重
手製諸食品類
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醴 甘酒
手造の方 大抵、米一升飯に焚、その冷ざるうちに麹一升めしと和合せ、桶に入、その桶を蒲団くるみ冷ざるところに一夜置用ゆるとき、能ほど水を入温めるなり。
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醝の造法
白酒うすにてひく
糯の精米七斗を饎となして、能冷し ● めて、一斗の酒の中へ漬、かたく封じて、春夏は三日、秋冬は五日にして口を開き、箸をもつてその飯粒を解わけ、嘗てこゝろみ、甘みの生じたるを度として ● をつらね、これを磨く。いたつて甘味なり。餘はいかほどにても、此割合也。
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豆腐 於加倍
造る法。大豆二升を水にひたし、一宿おき、■ [口+豈] て糊のごとくにし、水六升を入て煮沸し、沫を起すとき、あぶらの■ [泭+工] 一二滴
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杖のさきに粘て、釜の中をかき、沫をきやし、ふたゝび煮沸をまちて、火をひく。しからざれば焦つく也。これを酌て、布の袋に入、又、水一升五合をもつて釜の中を洒ぎ、ともにしぼりて汁を桶にうつる。其 滓を雪花菜といふ。其 汁いまだ凝ざる時、塩の
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鹵汁四分一を和て、静ゝかき合すれば頓て凝なり。是を箱に盛石をなしとす。暫くして水出し、次水に入てよし。但、鹵汁多ければ 豆腐かたし。箱には底へ布をしくべし。
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饅頭
甘酒をもつて、麦粉を ● て餡を包、焙篭に入、あたゝむれば、肥脹る。ふたゝびこれを蒸てなるその甘酒は、糯一升飯に焚、別に麹二合を水一升五合をもつて洗ひ、米を去、花汁を用ひて桶に盛飯をせい中へ入、一宿してなる。糟を去、汁にて麦粉をこねる。
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蒟蒻
蒟蒻 は 七八月に根をとり、軒の下にかけ、晒し乾し、外の皮すこし皺むとき、水すみし入、煮ること蒸がごとくし、竹の針にさしてよくとをるを度とし、取出し竹刀を
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もつて皮をむき、つきたゞらかし、壺に入、水を ●● してよくこね廻し、● 泔のごとくなるとき、澄たる水をながし捨、しずみ ● たるをとりて、ふたゝび舂ば、粘て糊のごとくなる。別に、真の石灰を水にとき、指の爪の染るばかりにして、蒟糊五升に石灰一合をまぜて餅とし、
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幅三寸ばかりの浅き溝ある木の樋に盛、おしのべて、板の片をもつて切て、ひらたき 方形 ちにつくり、煮湯一升の中へ石灰一合を入、ともにこれをよく煮て、浮たるとよしとす。およそ春夏は廿日、秋冬は十日をへてぬめりを生じて腐る。毎に石灰を糁しおけば、敗ず食するとき、よく湯煮をし灰気をさり用ゆべし。
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膠飴 餳
造法は、生糯一斗を精白とし、強飯にむし、
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麦の糵その芽稃をさり、末として、五合と拌ぜ 湯につけてふたをし、二時斗にして布のふくろに入、糟をしぼり去。汁を取用ひてこれを煉。その軟かなるを ● 飴とす。煉すごして膏薬のごとく むらさきいろなるものを膠飴といふ。俗にいふ、ぢようせんなり。地黄煎とかく。その硬く凝ものは 鑿をもつて、穿切痰切飴なり。
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粔籹
造法は、糯米を ■[食+強] にむし、晒し、乾し、少し炒て、地黄煎と米の粉とまぜ ● て、杻てまろめるなり。岩おこしといふは、つくねたる侭也。
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白雪糕
大米一升、糯米一升、山薬少し炒、連肉は心を去。芡実 細末にし、おの/\四両づゝ白砂糖一斤半これを拌ぜ、蒸熟してなる。
※ 「連肉」は、蓮の実のこと。
※ 「芡実」は、オニバスの成熟した種子のこと。
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環餅 捻頭 ■ [食+散] 落雁
落雁は 糯米、強飯にむし、干てくだき、粉にし、さらし乾し、少し炒、砂糖汁にて●て、その模範に入れ、これを按。かたち模にまはす也。
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環餅、捻頭は、麦粉を少し腐かして造る。綿実の灰汁をもつて煎じ、膏とし、少しばかり麦の粉の中へまぜる。しからざれば、熬ども脹大ならず。これを油蒸にしたるをいふなり。およそ、● 餅ぼうる、落雁は一類にして、異品ある物也。
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加須底羅 人参糖 浮石糖
カステイラは、● ● 一升、白さとう二斤に、割卵八つの肉汁をもつて、● 和、あかゞね鍋に入、炭火にて熬て、黄色になりたるとき、竹針にて孔をつきあけ、火気をよく中へ透らしめ取出し、切用ゆるなり。
※ 「あかゞね鍋」は、銅鍋のこと。
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浮石粉は、氷さとう一斤、あかゞね鍋にて、水四合入れ、煎じ、割卵ひとつ黄味をさり、白汁を入れ、さとうの塵うきたるを掬ひさりて、砂糖蜜とし、冷し、しづむるときは凝て 飴のごとくなるを、両人相向ひてこれをひく。潔白にして飴のごとく筋出る。これを切用ゆ。
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人参糖は、かるめいらの いまだならざる飴の如くなるとき、紅花の黄汁をまぜて冷し、定● 長さ二三寸にす。
煎餅
糖蜜 をもつて、麦の粉をこねて、柔ならず
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かたからずして、甑に入、むして摶め、竹の管にてのし、うすく平たく径四寸ばかりにし、晒し、乾し、一まいごとに 鉄の模をもつて両面よりこれを焙り、すこしかわくとき、取いだし、端をまくを巻煎餅といふ。又、生糯米と生豆粉とを、膠飴に ● て製するもあり。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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