2021年マイベスト文芸発表〜!!(日本文学、海外文学、ノンフィクション)
おはようございます こんにちは こんばんは〜
最近すっかり更新頻度が落ちていますが、みなさま師走の12月いかがお過ごしでしょうか。
わたしは毎日てんやわんやのバッタバタで、疲れがたまるとニンゲン背中が硬くなるらしいのですが、整骨院の先生にも軽くひきながらカチカチだと言われたところです。
さてさてそんなこと言うても、今年ももう終わってしまいます。
振り返ってみると今年はここ数年では精力的に新刊を読んだ年で、たくさんのいい本と出会えたなと思います。
ということで、毎年恒例(になるかな?)今年読んだ本のマイベストランキングやっていきたいと思います〜!
すでにTwitterでは店のフェア紹介とともに写真でお伝えしましたが、noteではおすすめコメントもPOPの写真とともに紹介しながらやっていきたいと思います。
今年は日本文学ベスト5、海外文学ベスト5、ノンフィクションベスト3になっています。
それではまずは日本文学からいってみよ!
第5位 『同志少女よ、敵を撃て』 逢坂冬馬 早川書房
ガツンと濃厚な物語を求めている方にはダントツでこれ!!!
独ソ戦の女性狙撃手たちの命をかけた戦いとシスターフッドの物語。
しっかりエンタメである上で戦争の中で見えてくる実際的な視点がすごい。敵と味方に分かれているようで結局は一人一人なんだと思わされた。
これが著者デビュー作とは!驚愕!
直木賞候補にも入って、本屋大賞ノミネートにもまず入るだろうと予想してます。発表が楽しみですね。
第4位 『レオノーラの卵日高トモキチ小説集』 日高トモキチ 光文社
物語はこうも自由だったのか
どこまでもどこまでもペテンと幻想の世界が繰り広げられていて最高に楽しい短編集。
”レオノーラというのは工場長の甥の叔父が工場長を務めていた工場で働く若い娘である”
こんな人を食った文章があちらこちらにちりばめられて煙に巻く、巻かれながらニヤニヤ笑って読むのがまた楽しいのだ。
第3位 『姉の島』 村田喜代子 朝日新聞出版
あたしら、このたび170歳になったぞ。
海女として生きていきたミツル婆は85歳になった時、島での慣しで倍暦というものをさずけられ、一気に170歳というとんでもない歳になってしまう。
海の中では自由な体が水から上がるときにはずしりと重くなるように倍暦も婆の背に重くのしかかる。
それでも島の海女たちはなんて強いんだろう。この世とあの世を自由に行き来するように海にもぐってゆく。
第49回泉鏡花文学賞受賞。
第2位 『泡』 松家仁之 集英社
青春小説苦手な人におすすめしたい青春小説
キラキラした汗を流し、みんなで団結して……といった青春小説は直視できない人(わたしですが)にきっとなじむ小説じゃないかと思う。
青春って実際もっと鬱屈しているし、孤独だし、そういう感情と折り合えない自分との戦い……というかすり合わせだ。
ここにあるのはそのリアルな青春と瞬間の美しさ。
第1位 『残月記』 織田雅久仁 双葉社
唯一無二の創造性で描かれる今まで読んだことのない類稀なる短編集
これを1位にしていいものかかなり悩みました。めちゃくちゃ面白いけれど好き嫌いは分かれそう。でもわたしは好きだ。こんなにすごい短編集は他にない。どの作品も独特の後味を残し、読み終えてもかなり長い間本の世界から抜け出せなかった。予備知識なしでぜひ読んでほしい1冊。
続いて海外文学部門どんどんいこう!
第5位 『エルサレム』 ゴンサロ・M・タヴァレス 木下眞穂訳 河出書房新社
ことばの中に闇を照らす光を感じる素晴らしい文章
その光の中にも棘を感じて読んでいる間肌がピリピリするような感覚があった。救いのない物語なのだけど、人物に暗さを感じないどころか、脈打って生きている感じがして、読むのに辛さはなかった。わたしたちが普段目を背けている真実をえぐり出しているようだった。読み終えた後も深く沈んでいくように思考がさまよっていた作品。
第4位 『三体 Ⅲ 死神永世』 劉慈欣 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ、泊功訳 早川書房
今世紀最大のスーパーエンタメSF!!
いや冷静に考えるとこれが4位っておかしいのよ。本当はぶっちぎりで1位でもおかしくないくらいものすごい小説だった。
シリーズどれをとってもハズレないし、どのパートもどのパートも度肝を抜かれるほど面白い。
本当にみんな絶対読んだ方がいい。ものすごい世界が本の中に広がっています。今から初めて読む人が羨ましくてたまらない。
誰も彼もこの作品は評価しているし、自分がゴリ押ししなくても……という理由で今回この順位です。
第3位 『骨を引き上げろ』ジェスミン・ウォード 石川由美子訳 作品社
こんなにことばが熱を持った作品を他に知らない
2005年にアメリカ南部を襲ったハリケーン、カトリーナ。
その史上最悪の天災を描いた作品だが、これはほとんどある家族の物語だ。
アメリカ南部で普通に生きている黒人家族の一部がそのまま切り取られている。
生きることはなんてしんどいんだろうと苦しくなるようだけど、不思議と暗さはなく、物語のエネルギーを常に感じる作品。
第2位 『丸い地球のどこかの曲がり角で』 ローレン・グロフ 光野多恵子訳 河出書房出版
読んでいて自分も死んでいくような気持ちになった、とても幸せに
フロリダの自然とさまざまな人種や生き物が混在して生きる世界。その混沌とした世界をミクロにもマクロにも切り取って描いている短編集。ネイチャーとシティの融合が全く新しく、その上で愛に溢れた視点ですべてを包み込むかのように優しく描く。これも全く素晴らしい短編集だった。
第1位 『消失の惑星』 ジュリア・フィリップス 井上里訳 早川書房
今年1番すごい読書だった!
結局今年最初の方にこれを読んでから、全く変わらずに絶対的な1位だった。
カムチャッカ半島で起こる幼い姉妹の誘拐事件、それを解決していくミステリーかと思うとそれだけじゃなく、カムチャッカという陸の孤島に生きる人々の確執や女性蔑視などもリアルに浮かび上がらせる。母親の視点で読めばまた大切なものを永久に失う怖さや、それを見る周りの人たちの好奇の視点などもうまく取り込まれていてめちゃくちゃ怖かったし、感動もした。
これも絶対読んでほしい1冊。
そして最後はノンフィクション部門!
ノンフィクションはたくさんは読めておらずベスト3となっていることをご了承ください。
第3位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』 ブレイディみかこ 新潮社
全人類の必読書にしてほしいシリーズ
ブレイディみかこさんのすごさは、その視点のバランス感覚。ミクロであり、マクロでもあるところで上手にバランスをとる。公であり私であるところでと言ってもいい。どちらに振りすぎてもうまくいかないことをわかっていること、簡単なようですごく難しい。そしてそれを子供でもわかる文章でまとめることのすごさよ。
第2位 『エデュケーションー大学は私の人生を変えた』 タラ・ウェストーバー 村井理子訳 早川書房
なんという人生、なんという家族、、、、
読んでいる間ページをめくる手が重く、なかなか読み進められなかった。読み終えた後も喉が渇いたように張り付いてなかなかことばが出ない。
モルモン教の一家で育った女の子が信仰を振り払い、自分の力で勉強し、世界を知るということを文字通り体験していく。
何度でも読み直したい素晴らしいノンフィクション
第1位 『海を上げる』 上間陽子 筑摩書房
この絶望をぜひ受け取って下さい
「海を上げる」軽い質量で表されているこのことばにどれだけの重さがつまっているのだろう。
沖縄の青い海。沖縄で生きる女性たち。
美しいイメージに包まれた日本屈指の観光地。
そこで暮らす人たちがどんな想いをしながら生きているのか、わたしたちはちゃんと知っていただろうか。青い海は青いまま、未来もちゃんと存在しているのだろうか。みんなで考えていくべき大切なことがここにあります。
一気に紹介してきましたが、ランキングは本当に便宜上つけたようなもので、どの本も本当に面白くて自信持っておすすめできるものたちばかりです。
こうして見ると今年は本当に早川書房さんの本がものすごく印象に残ったなと思います。読みたいと思った本も多かったし、実際面白いものが多かった。後は結構満遍なく偏らずに読んだなぁという感じですね。
大きい出版社ではKADOKAWAと講談社と中公が入らなかったけど、KADOKAWAはルイーズ・グリュック『野生のアイリス』が素晴らしかった。こちらは詩集なので入れませんでした。
同じくKADOKAWA 佐藤究『テスカトリポカ』もよかった。これもランキング入りしててもよかったなと思う作品です(講談社と書いてしまっていましたが、KADOKAWAでした。訂正いたします)
中公は、単行本よりも文庫をよく買っていました。中公の文庫はぐっと来るものが多いのよね。
そんなこんなでよく買い、よく読んだ1年でした。
来年はいよいよ道志村へ移住、それからもくめ書店開業準備に入っていきます。まずは年明け、今の仕事を2月末で退職する予定です。それから3月は引っ越しと子供たちの入学、転園準備。それで終わりそうです。
4月は新しい生活への慣れ、そしてもくめ書店開業のためのクラウドファンディングもやってみようと今考えております。
5月には内装工事、6月に仕入れや棚入れ最終準備をして、7月には開店と順調に向かいたいです。
そんな感じで怒涛の2022年がやって来そうですが、その前に今年のお正月はゆーっくり過ごしたいと思います。
みなさまも暖かくして、ゆっくりおすごし下さいね。
たくさん本読んで満喫しましょうね〜。
それではまた、良いお年を!