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不変なる魅力

「木版画の良さ・魅力とは?」
そう問われる事は無きにしも非ずです。

僕の場合、単純に作品を創り上げた瞬間の「楽しさ」を木版画の魅力に感じて、ここまで続けることが出来ています。

しかしそれは、人によって差異のある、あくまで感情の観点での魅力に過ぎません。

故に、上記の問いに対する答えとしては、その様なものではなく、木版画にしか出せない不変的な「魅力」を提示しなければなりません。

僕が考えているのは「一つの作品を手摺りで大量生産が出来る事」です。

木版画と同じ平面作品の芸術として、例えば絵画の場合、キャンバスに作者自ら絵筆を振るい、表現を描き出した真作はこの世に一点しか生み出されません。
勿論、自らの手で創出された一点物だからこそ、稀少価値やそのアーティストの魂の表現を感じられるのが、絵画にしか出せない良さで、唯一無二な表現技法です。

一方の木版画は、江戸時代に隆盛を極めた「浮世絵」の文化が発展するより遥か前に、印刷技法として用いられていたのが源流でした。

勿論、現代では、文明の利器である機械を使えば数秒で、カラー印刷が出来上がりますので、需要という点で木版印刷はかなり衰退しかけているのが事実です。

ただ、如何に時代が変遷したとしても、木版画の制作技法が変わるわけではありません。
僕も同じ技法を用いて作品を創っているので当然、作品の大量生産が可能です。

では、これが一体何を意味しているのか?

それは、木版画は同じ作品を何枚摺ろうと、全て機械ではなく、人の手による摺りですので「一枚一枚が創造物」という事です。

仮に芸術作品のレプリカの場合、手作業と雖も、作者自身が創出した物ではありません。
ただ、木版画では、複数枚存在する同一作品の全てが「真作」なので、作者が自らの手で表現を込めた物を、数多の方々の手に渡り、楽しんで頂けます。

そして、全てが本物であっても、一枚毎に僅かな絵具の濃度の違いや、かすれ等が存在するのも、手摺りにしか出せない「味」となるのです。

以上の事から、僕が思う不変的な木版画の魅力とは「レプリカではなく、一枚一枚が創造物となる事で、様々な方に自らの表現を感じて頂け、更に各々が微かに違った味を出す」というものです。

しかし、そもそも最初の質問を受けるのは、やはり「木版画」がこの現代に於いて、芸術分野の中ではある種マイナーな位置に属し、人々がそこまで身近に感じる事が出来ず疑問点が多い、という理由があるのではないかと思います。

一括りに「芸術」と言えば、やはり真っ先に思い浮かんで来るのは絵画や立体作品ではないでしょうか?
勿論、多様で範疇の広いのが芸術ですが、その中で、より多くの方々に木版画に対して興味と親近感を抱いて頂く為には、上記の古来より存在する魅力を生かし、そしてそれを現代社会に融合させて行く事が、重要なのではないか、と考えております。

前回の【表現と再現】同様に、言うは易く行うは難しですが、木版画の文化を廃れず承継させて行く為、この理想を叶えられるように邁進して参ります!

最後までご拝読頂き、有難うございました。


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