我が征くは星の大海(銀河英雄伝説外伝1巻)(著:田中芳樹)【読書紹介よ。お前は詳しい。だが姉上と俺にだけ詳しく説明してくれればいいんだ。他の奴らに丁寧に解説してやる必要はないんだぞ】
銀河英雄伝説は言わずと知れた日本のスペースオペラ。
しかもSFの歴史を扱ったもので、雰囲気は三国志や中国史の世界。
これはコペルニクス的転回でした。
むしろSF要素を徹底的に薄めて、歴史要素に振り切った作品というコロンブスの卵です。
架空の歴史を元にしたSFは多々あれど、ここまで歴史に振り切った作品は前代未聞。
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言わずもがなだけど、簡単な設定。
500年続いたゴールデンバウム朝銀河帝国と、
250年続いた民主主義の国、自由惑星同盟との、
半永久的な銀河戦争が描かれるという宇宙戦争モノである。
ゴールデンバウム王朝は、作者は否定しているけど、
やはりどうしてもヒトラーが勝った架空世界的なものをイメージしてしまう。
しかも銀河。
ただ500年の歴史の果てに、腐敗しつくしている。
当初のエリート主義はかけらも残っていない。
返す刀で、欧米だったら正義の味方として描かれるであろう民主主義陣営も、腐敗堕落の果てに、ポピュリズム衆愚政治とファシズム国粋主義が流行る始末。
どちらもどうしようもない。
絶対的な善や悪をまずは持ち出さない、というのは実に日本らしい作り方だ。
(まあ宗教団体だけは例外的な存在として扱われちゃうけど)
そして、時代はふたりの戦争の天才を産み出した。
彼らの対決が歴史を変える!というコンセプトの未来歴史大河。
私の記憶とタイトルが違うんだよなー。
こんなタイトルだっけ?
我が征くは・・・は映画版のタイトルだったのかな。
変だなあ。記憶違いかなあ。
今回は変則的に私の記憶違いにもとづいて紹介しちゃいます。
ごめんちゃい。
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しかし本編は10巻という長大なもの。
他の大河に比べれば10巻で確実に終わってはくれるものの、
ちょっと覚悟が要る。
そこでお試し版としてオススメしたいのが本書。
外伝第1巻である。
このお話は本編の前日譚であり、
ほぼほぼ一巻で完結するような感じで終わっている。
というか、なぜこれが本編第1巻ではないのだろうか?
普通はこの辺りから物語を始めた方が良いと思うんだけど。
(旧作アニメ版はここから始まっている)
アニメ版では本編に含まれていた、ベーネミュンデ事件はこちらに含まれている。などなど細部に違いがあるけど。
なので、ここだけ読んでフェイドアウトしても良し。
気に入りすぎて本編に突入しても良し。
と、どちらにも行ける作品なのだ。
他の外伝シリーズはというと、
3巻がやはり似たような作りになっている。
同じように帝国側の主人公ラインハルトが、若き大望を燃やしつつ、親友キルヒアイスと共に、目の前の試練を乗り越えていくという話。
青春成長譚にもなっている。
こういう主人公は書きやすい。
対して2巻は、本編の1巻と2巻の間くらいなので、これだけ読んでもピンと来ない。
4巻はちょっと地味だ。
同盟側の主人公、ヤンは本編になってから彗星デビューする人なので、その前日譚はパッとしない。過去の歴史回想シーンが出てくるのが救いだが、構成が複雑になる。
なので、このサーガ全体を、
短くコンパクトにパイロットフィルム的にしたのが、外伝1巻だと思う。
アニメ化されたのもここが最初で、やはり誰もがそう考えるんだろう。
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この「我が征くは」が気に入ったら、外伝3巻を読んで、
そこから本編という感じで私は読みました。
なので、
あのロングランすぎる名作。
これ一作だけ見れば、全体が分かる的な作品として、
こいつはアリなんじゃないかとお試しオススメしておきます。
↑ リメイク版もあります。
SF未来史は需要ありそうなので、作品を作る売る方向としてありだと思います。
同じ作品をリメイクしてるくらいだし。
供給が足りないんだなと思った。
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